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一歩引いて考えると年金って繰り下げ受給が吉なのかもと思った

年金の本質は、長く生きすぎることのリスクヘッジですね。であれば、その本質に沿った使い方をするのが一番いいんではないでしょうか、というお話。


ここでの主張はシンプルで、「繰り下げ受給が良いのじゃないか」ということです。以下はただその理由をクドクド書いているだけ。。。

繰り下げについてよく言われるメリット:月次受給額が結構増える

公的年金を65歳から70歳に繰り下げ受給すると、1.4倍近くに増えます。75歳まで繰り下げれば1.8倍です。10年繰り下げるだけでその後の生涯の収入がずっと2倍近くまで豊かになるなら最高では?と思うのです。

1.8倍になるということは、仮に年金の受給額がデフォルト月額10万円だとすると、75歳まで繰り下げるなら月額18万円になるということです。この差は大きい。だって、毎月10万円で暮らすのは結構窮屈かもしれませんが、18万円で暮らせるならうまくやればそれこそ「一生お金に困らない」状態になれるかもしれないから。

繰り下げの本質的メリット:75歳以降、一切のお金の悩みから開放される

こちらのメリットのほうが、金額そのものよりも本質的であるように思います。収入と支出のバランスに気をつけていきさえすれば、むしろ普通に生活していてもお金が溜まっていく状態になれるかもしれません。これって、Financial Independenceそのものではありませんか。まあRetire Earlyではないかもしれませんが、、、、いや、もしかしたら将来においては75歳のFI達成は十分にEarlyになるのかもしれません。というのはその後の人生まだかなーり長い可能性があるからです。

繰り下げのデメリットは損するリスク??

もちろん繰り下げ受給するということは、その間にもらえるはずだった受給額を丸々諦めることになります。なので、単純な損得勘定で言うならば、残りの人生何年生きればその分が上乗せによって取り戻せるのか、という計算が可能ですね。つまり、早く亡くなることによって、もらえる年金の額が少なくなってしまったら損ではないか、という話です。

その損益分岐点は、75歳まで繰り下げるなら87歳と言われています。70歳までの繰り下げなら82歳。

しかし、私はあまりその点は重要ではないと思ったのです。だって、年金は「長生きするリスク」をヘッジするために作られた保険なので、長生きしなかったのであれば、そのリスクが顕在化しなかっただけの話だからです。がん保険に入っても、がんにならずに済んだならそのほうがいいじゃない、というのと同じことです。その分ある意味「掛け捨て」になるわけなのですが、まあそれで仕方ないじゃないか、と。だって亡くなってしまったらお金は使えないのだし。そもそも保険ってそういうものですしね。みんなで許容可能な範囲でのお金を出し合うことで、だれかの身に生じる「一人では許容しきれないリスク」をカバーし合う。だから、年金は得をするために運用されている制度ではないということを前提に考えれば良いのだと思いまして。

多少減るのはいいとしても、そもそも繰り下げている間に亡くなってしまったら、ちょっと損するどころか一銭も貰えないことになってしまうではないか、と?はい、そうかも知れません。でも、私はそれでいいと思います。私が支払ったお金分が、他の誰かのリスクヘッジに貢献出来たのであれば、それはそれで尊いことじゃないかと。(ちなみに、実は繰り下げ期間中になくなった場合、65歳からなくなるまでの期間の通常分の年金が一括で支払われるみたいなので実は損はないのですが)

え、遺産が減ってしまうではないか、と?もしそういう心配が必要なくらいに遺産がお有りになるのなら、そもそも年金のもらい方云々を気にする必要自体が無いかもしれません。。。または、残すべき遺産と個人の生活とは切り離して考えてみるのはどうでしょう。どうせたくさん長生きするのならその分お金はかかるわけですから、自分がどれくらい生きるかというのと関係なく遺産を定義すればよいということで。

繰り下げのハードルは余り無さそう

実はこれ、コミットする必要ないのというのもいいところです。つまり、例えば「75歳まで繰り下げます」と一度言ってしまったらもう取り返しがつかない、なんていうことが一切ない、と言うことで。万が一状況が変わって、70歳まで自力だけでは厳しい、ということであれば、その時点から受給し始めればいいだけ。なんのペナルティもありません。そして繰り下げたら繰り下げた分だけ受給額は増えていきます。結構割のいい資産運用と考えれば、我慢し甲斐あるように思えます。

繰り下げをベースに考えれば、老後に必要な貯蓄額はシンプルかもしれない

繰り下げによって必要十分な生活費をカバーできる(以降一切お金の心配はいらない!)のであれば、「老後の備えはいくら必要なのか」についてもシンプルに考えることが出来ます。要は、「いくら必要か」=「現役を引退してから繰り下げ受給を開始するまでの間に必要な生活費の合計」と考えれば良いということになろうかと。その計算には、繰り下げ受給で受け取れる額を基準として用いても良いかもしれません。たとえば、繰り下げ受給することで夫婦合わせて月額18万円だとすると年間216万円の収入です。65歳から75歳までの10年間を貯蓄で生き抜くとすると、216万円×10年=2,160万円になります。あれ?そういえば、老後必要な金額は2,000万円という話も少し前に話題になりましたね。

もし、10年間を2,160万円で暮らしていけそうであれば、あとはいかに現役のうちにその額を貯めるかということになりますね。退職金で一撃!という羨ましい方もいらっしゃるかもしれませんし(もしそうなら、現役世代に貯蓄いらないってことなのかしら!?)、NISA/iDeCOでなんとかという場合も多いのではと思います。何れにせよ、「足りるかな?足りないかな?」と疑心暗鬼で不安のままでいるよりは、根拠を持って2,000万なら2,000万貯めきればFIの勝算が見える、という感じで目指していくほうが幸せに暮らせそうな気がしています。

もしかして、大げさな年金制度改革しなくても良くなかったりする?

色々書いていますが、一方、この年金制度が作られたイチバン最初の趣旨に遡って見るならば、元々年金ってそういうもの(人生の晩年はもう一切お金の心配はいらないよ!ということ)だったはずなので、こういうこと(年金のもらい方)にテクニックを駆使する必要性自体が本来ないはずなわけです。

だからある意味こういう事を考えなければならない時点で現在の年金制度は不十分ということになるのかもしれませんが、だからといって「年金制度は崩壊している」などというのも少し違うのかもという気もするのです。手の打ちようがないのならいざしらず、少なくとも年金の本来の趣旨を現行制度で可能にするような使い方は個人のレベルで可能だと思うからです。

とっても極端なことを言うならば、今からでも可能な人がみな可能な範囲で受給年齢繰り下げをすれば、結構今の年金制度でも「年金が本来果たす役割」=「今後の人生お金のことは心配なし!」は結構な人にとって実現可能なものなんじゃないかと思ったもので。

あくまでこの主張は「個人として人生を安心して暮らしていく」ことを一義的に考えたものです。国の政策を論じたいわけではありません(今の年金制度が最高で非の打ち所がない、とか、逆に欠陥だらけだとか、そういう話ではないつもり)。


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