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【長編】なんでも屋もなんでもはしない【第2話】

 寧々さんと図書館で不思議な出会いをしてから数時間後、午後8時、僕は遠坂と学校近くの公園の草むらに隠れていた。
 図書館での話を要約しよう。寧々さんは(僕の記憶が正しければ)ここから2,3駅先にある大学の3年生らしい。一応、うちの高校の卒業生らしいけど、僕にとっては部外者だと言ったらなぜか遠坂に睨まれた。
 遠坂と寧々さんの関係はわからないけど、2人はなんでも屋というのをやっているらしい。うちの高校または寧々さんの大学の学生から依頼を募集していて、ボランティア的に解決しているらしい。そんなの初めて聞いたけど。まぁ、学校非公式だし遠坂とそんなにしゃべらない限りは知りえないか。
「下駄箱のすぐ近くにある掲示板には依頼募集の紙が貼ってあるわよ」
そんなことを遠坂に言われても、あの掲示板の前で足を止めている人を僕は見たことないよ。
 でも、やっぱり知ってる人は知ってるらしい。今回の依頼もうちの高校の学生から来たものだ。
「最近、ほぼ毎夜の常盤公園で草むらが不自然に揺れていて、横を通るのが怖いから調査してほしいんだってさ」
寧々さんが小さい紙切れを読みながら言った。常盤公園というのはうちの高校の近くにある公園で、昼間は小さい子たちが遊んでいるのを見かけるが、夜になると誰もいないような公園だ。遊具や椅子も少なく、僕も今までに利用したことはない。
「誰からの依頼なんです?」
僕は興味本位で聞いてみた。
「匿名希望だよ。うちに依頼してくる子はほとんどどこの誰だかわからない。だから、私たちが解決した後も依頼者がどういう風に思ってるのかわからないんだ〜」
なんでこんな活動してるのか聞きたくなったが、それよりも先に寧々さんに話を続けられた。
「でね、夜の公園に女子高生一人を向かわせるのも危ないからタロウくんに付き添ってほしいんだよ」
「寧々さんは用事でもあるんですか」
「私は忙しいからね」
僕は平日の昼間から母校に来ている大学生を見つめたが、それ以上の説明はなかった。

「ちょっと、まじめに観察してるの?」
遠坂に肩を揺らされた。
「あ、あぁ。ちゃんとあそこの草むらを見てるよ」
「不自然に揺れる草むら、なんなんだろ」
遠坂はまじめに考えているようだった。
「まぁ、おおよその予測はついてるよ」
「えっ、なんなの?光崎くん」
「おっ!遠坂さんあそこ見て、草が揺れてる」
「あっ!」
僕が監視していた隣の草がガサガサと揺れていた。
「み、光崎くん、どうする?」
「にゃあー」
僕はまぁまぁの出来のネコ真似をしてみせた。遠坂はキョトンとして、開いた口がふさがってない。
揺れていた草むらから黒い影が飛び出してきた。
「あれって、、、」
「そう、ネコだよ」
僕はちょっとドヤ顔で言ってみせた。
「よくあることだよ。ネコが草むらを揺らしてたんだ」
「でも、なんでネコってわかったの?他の小動物の可能性もあるでしょ?」
遠坂は不思議そうにこちらを見ている。
いつの間にか飛び出した黒ネコはどこかに行ってしまっていた。
「ごめん、ごめん。実は僕、正解を知ってたんだよ」
「えっ、、、!?」
「タネ明かしは草むらの中にある」
僕と遠坂はネコが飛び出した草むらの方へ歩いていった。

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