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家系ラーメンにおける“濃いめ”とは

 放課後ティータイムの歌にこんな歌詞がある。

関東人ならやっぱり 家系ラーメン&ごはん

[要出典]

 町○商店や壱○家、その他個人店舗など、各駅ごとに必ず何らかの家系ラーメン屋があるのではないかとも思えるほどポピュラーな存在である。お年寄りから女性まで(正直言ってお体が心配である)幅広い客層を有している。
 そんな家系において、ラーメンを注文する際に言う魔法の呪文がある。

「硬め、濃いめ、多めで」

 一部では、早死に三段活用とも言われているらしい。私は5年以上こいつを食ってきたが、幸運なことに未だに生きている。

 この注文。具体的に検証しようではないか。
 各人、 “いつものやつ”を持っていて、日々、同じ3語を呪文のように繰り返しているに違いないが、果たしてその選択はベストなのだろうか?

 まずは鶏油である。
 一般的には、普通を選ぶ人が多いように思われる。「太るから少な目」という意見を時折見るが、スープの上に浮いてる分の差はラーメン全体の油量と比べたらオーダー的に誤差の範疇のように思えてならない。
 まあ好みなのであれこれ言うことではないし、私自身「『硬め濃いめ多め』の聞こえがいいから」という理由だけで多めにしているので、尚更なにも言えない。
 正直、脂っこいものは苦手である。そのくせスープを飲み干すことを信条としているので、序盤戦で吸い切っておく必要がある。さもなくば、重油が流出した海がごとく手出し不可能になりお手上げである。

♰ 油多めは序盤勝負

 麺硬めは、おそらく半分以上の客が注文していることではないだろうか。そしてその理由は当然だが、友人といった際に言われる、
「麺は硬めにすると早く来るよ」
 という伝説に違いない。いや、伝説というか事実ではある。さらに言うと、複数人数で来た際の、店の回転率の観点から硬めを注文する、というのは美徳とされることに違いない。
 しかし、人はいずれ自立して一人ラーメン屋に向かうようになる。時間に追われているときとは限らない。店も取り立てて混雑している時間帯ではないときに訪れたとする。
 果たして、麺硬めに固執する理由はあるだろうか?
 そして麺硬めを注文する多くの者は、かつて食べた麺普通と比較して硬めを選んでいるわけではないのではないだろうか。最初に食った際に言われた通り硬めを注文し、そこから惰性で硬めを食い続けているのではないだろうか。
 私がそうである。
 柔らかめはふにゃふにゃしてそうで、うーんという感じだが、普通に関しては一考の余地があるのではないだろうか。盲目的に硬めを食っている人間は、一度でも普通を選んでみる勇気を持ってほしいと思っている。
 私もそうである。

♰ 麺硬めは永遠の逃げ

 本題である。
 味濃いめを選ぶ人は一定数はいるだろうがさほど多くないだろう。それでも私はその一定数に言いたい。言ってやりたい。
「お前は本当に味濃いめを食っているのか」
 と。

 しょっぱいものを求め家系を食っている人間がいる。私がそれで、二郎などは、どうしても食っている途中でしょっぱいものを欲する瞬間が訪れる。醤油への渇望はあらゆる豚骨ラーメンに付きまとうが、家系は醤油と共存を例えば二郎などよりも深く実現するラーメンである。
 そのような理由から味濃いめを選ぶのだろう。そこまではわかる。自分もそうであるから。
 行動が伴っていないのではないか?

 そういった考えに至れたのは、私がスープを飲み干して来たからである。
 ”濃いめ成分” は、結構底に溜まっているのである。
 すなわち、濃いめを真に食うとは、スープを底まで空けることではないかと私は考えている。飲み干さない限り、お前は”普通”までしか食っていないのと同じなのである。

 スープ飲み干す党としては、麺をすすり終わり、具もいつか消え果て、スープの太平洋に飛び込んだときにふと感じる瞬間がある。
「あ、濃いめになった」
 それが終盤戦始まりのゴングである。

♰ 味濃いめは終盤勝負

 何でこんな体に悪いものを最大限摂取しようとしているのか。
 いずれ病気になるどころか、食いながら急死するのではないか。

 私自身そう思ってやまない。
 それでもなお暖簾をくぐり続けているのは、死んでもいい、という覚悟を持ってラーメンに臨んでいるからである。その考えに至ったのはラーメンが原因ではないが、ラーメンに対する向き合い方としてはこれで良かったと思えてくる。
 死ぬ気で食っている瞬間が一番生を実感できるものである。 

 もちろん道を外れちゃっていない人間は健康的な食事をするべきだと思っているが。

 最後に、個人的にダントツで飲み干しやすい店を書いておく。
 秋葉原。武将家外伝。
 電気街の武将家無印はもっとアブラが強いが、どちらかというと外伝は塩っ気が強い。まさにしょっぱいものとして最高にうまい一杯である。
 ”外伝”というアウトローな雰囲気とは真逆の、「普通にうまい」の極致だと思っていて、そのギャップも萌え~である。

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