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春の新刊「晴明の娘 白狐姫、京の闇を祓う」をいろどる実在の人びと

 平安あやかしファンタジー小説「晴明の娘 白狐姫、京の闇を祓う」が4月4日にポプラ文庫ピュアフルから刊行されてからあっというまに1ヶ月がたちました。
 今回は安倍晴明をはじめとする実在の人物たちに、主人公の煌子(あきこ)というフィクションのキャラクターが混ざって話が展開していきます。
 私はこれを勝手に「ベルばら方式」とよんでいます。

 ただ「ベルばら」の18世紀フランスと違って、平安時代を生きた人々に関しては、名前と官職、官位、業績の記録は残っていても、どんな性格でどんな容姿の人だったのかというのはほとんどわかりません。
 たとえば安倍晴明も、陰陽師としての功績の記録(占ったとか、儀式をおこなったとか)は藤原道長の「御堂関白記」をはじめいろんな人の日記に残ってはいるものの、どういう容姿でどういう性格の人だったのかはほとんどわかりません。
 つまり設定したい放題です。ニヤリ。

 今回のnoteでは、ネタバレにならない程度に、「晴明の娘」に登場する実在の人物を紹介していきますね。

◆安倍晴明 陰陽師 ヒロイン煌子の父親
 有名すぎて架空のキャラクターだと思われがちですが、実在の人物です。
 今年はNHKの大河ドラマでユースケ・サンタマリアさんがなかなかブラックな晴明を、映画では山崎賢人さんが若き日の晴明を清々しく演じていますが、実際には優秀な官僚だったようです。
 ☆実在の安倍晴明についてはこちら↓をどうぞ

「晴明の娘」では晴明の母親は葛の葉という美しい白狐だったという説話を取り入れ、天文好きな優秀な陰陽師でありつつも愛情深く優しい父親という設定にしました。
 もちろん晴明もその子供たちも、みんな葛の葉似の美男美女です(笑)

◆安倍吉平(よしひら) 陰陽師 晴明の長男 煌子の長兄
 この人も「御堂関白記」などにちょくちょくでてくる実在の陰陽師です。
 やはり占いや儀式での業績の記録が残っていますが、特に陰陽(占い)が得意だったようで、陰陽博士もつとめています。
 晴明もそうですが、陰陽寮でまあまあ出世したあと、他の省庁へ転出し、さらに栄達しました。


◆安倍吉昌(よしまさ) 陰陽師 晴明の次男 煌子の次兄
 同じく晴明の息子ですが、吉昌は天文が専門で、天文博士になっています。
 その後、安倍家では初めて陰陽寮のトップである陰陽頭に就任。
 生涯、天文博士も兼任し続けました。

 子供がたくさんいた吉平と違い、吉昌は息子がひとりだけ。そのひとり息子も養子だったという説があります。
 そんな事実をふくらませて、吉昌は生涯を天文観測にささげた星好きで、あまり女性とは縁がない、とにかく真面目なお兄さんという設定にしました。
(現代ものなら眼鏡をかけているところ)
 逆に吉平は女性にも男性にもとてももてるはなやかなイケメン男子で、横笛が得意、要領がよく、ほどほどに仕事もできる、でも妹にも甘いお兄さんという設定になりました。

◆晴明の妻 宣子(のぶこ) 吉平・吉昌・煌子の母

 晴明には息子たちがいる以上、妻もいたはずなのですが、家系図には氏名も生没年も残っていません。
 しかし名前がないとなにかと不便です。
 17世紀に書かれた「安倍晴明物語」という仮名草子では、晴明の妻の名を梨花としていますが、梨花だと平安っぽくないので、「晴明の娘」では宣子という名にしました。
 晴明も三人の子供たちもみな半妖という安倍家で、ただ一人、生粋の人間である宣子は、適応能力が高く、しっかり者です。


◆賀茂保憲(やすのり) 陰陽師 晴明の上司

 「光る君へ」にも「陰陽師0」にも出番がありませんでしたが、賀茂保憲は晴明と同時代の陰陽師で、陰陽寮の上司でもあります。
 年齢は晴明と4才しか違わないのですが、若い頃からめざましい功績をたてて出世街道を爆走。
 特に暦(カレンダー)のエキスパートで、20代で暦博士に昇進しています。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/賀茂保憲

 「晴明の娘」のあとがきにも書きましたが、賀茂家の面白いところは、保憲本人は暦道の本を、弟の保胤は漢文の評論本を、保憲の娘は和歌集をだしているところです。
 ジャンルは違えど、それぞれ本をだしている賀茂ファミリーは、きっとオタク体質に違いあるまいと私はにらみました。
 保憲が書いた「暦林」なんて全10巻もあったんですよ。
 きっと暦愛がみっちりつまった解説書にして布教本だったんでしょうね(笑)。
 というわけでそんな保憲のキャラクターを私は「有能な上司だけど教え魔なので陰陽寮の若手たちはちょっとけむたがっている」と設定しました。
 基本的にはいい上司なので、煌子の裳着の式で腰結いの役目を引き受けてくれたりもしています。

◆賀茂光栄(みつよし) 陰陽師 保憲の長男
 賀茂忠行、保憲に続く三代目です。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/賀茂光栄

 光栄ものちに暦博士をつとめているので、陰陽寮で日がな一日暦を書いている暦職人というキャラクター設定にしました。
 なお、「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」にでてくる「りとる☆陰陽師ミッチーくん」という少女漫画の主人公はこの賀茂光栄です。

◆賀茂光国(みつくに) 陰陽師 保憲の次男 
 リンクを張り忘れたわけではなく、Wikiに独立したページをもらっていません(涙)。
 光国は天文博士になっているので、吉昌の先輩というポジションになります。

◆賀茂保憲の長女 歌人
 名前も生没年も不明ですが、「賀茂保憲女集」という歌集を残しています。
 この歌集にはかなり長い随筆風の前文がついているのが特徴です。

 年齢に関しての推測はかなり幅が広く、いろんな説があるのですが、「晴明の娘」では、煌子より少しだけ年上のクールなお姉さんキャラとして設定しました。
 名前は青姫さま(通称)。
 本にかこまれて日がな一日家でごろごろしていたい平安オタク女子なのですが、保憲が太宰府経由で宋から取り寄せた白居易の直筆サイン本とひきかえに五節の舞姫を引き受けた、という裏設定になっています。
 
◆藤原道長 政治家
 教科書にもでてくる有名人ですね。

 のちに摂関政治を確立して権力の頂点に立ち、紫式部に「源氏物語」を書かせた道長ですが、「晴明の娘」にでてくるのはまだ元服したての15才です。
 右大臣兼家の息子とはいえ、五男坊だし、将来への野望を抱くこともなく、明るくのびのびとした少年という設定にしました。
 
◆円融天皇
 道長の姉、詮子が女御として入内した天皇で、「光る君へ」でも序盤の頃にでてきました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/円融天皇

 「晴明の娘」にでてくる円融天皇は21才の若き帝。
 1年前に亡くなった最愛の堀河中宮を忘れられないでいる、という設定にしました。

◆堀河中宮(藤原媓子)
 円融天皇の12才年上の妻。
 33才の若さで世を去りました。

 円融天皇が元服した翌年に入内。
 子供はいませんでしたが、夫婦仲はむつまじかったとのこと。
 というわけで、美しい幽霊として登場していただきました。

◆弘徽殿女御(藤原遵子)
 円融天皇の女御。
 父は関白頼忠。公任の姉。

 21才の時、2才年下の円融天皇に入内しましたが、帝は堀河中宮にぞっこん。
 翌年、堀河中宮が亡くなり、ようやく自分の出番が、と、思ったのもつかの間、ライバルの梅壺女御(詮子)が先に身ごもり衝撃を受けます。
 これは嫉妬に苦しみ、生き霊となってもおかしくないよね!
 平安だし!

◆道満 法師陰陽師
 陰陽寮につとめていない、民間の陰陽師。

 道満という陰陽師が晴明と同時代に実在していますが、これまた名前以外はまったく不明。
 というわけで、若い頃は晴明と親友だったが闇落ちした、という王道設定でいくことにしました。


 「晴明の娘」には、他にも右大臣兼家(道長の父)を筆頭に、名前だけでてくる実在の人たちがたくさんいますが、長くなったのでこのへんでやめておきます。


 華麗なる平安京の闇にうごめく妖怪や怨霊を片っ端からふきとばしていく最強の化けギツネ煌子の爽快なファンタジー「晴明の娘 白狐姫、京の闇を祓う」楽しんでいただければ幸いです 

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