【散文】夜襲
ぐるりと意識が一周し、気付けば布団の上で重力に沈んでいた。
おそろしい怪物がやってきて、力なき者の身体に爪痕を残して去っていったのだ。
柔らかい毛皮の隙間から覗いた怪物の黒い瞳。
光のない左目に見初められて、力なき者は自らの無力を知ったのだ。
彼奴からは逃れられない。
身体に力が入らなくなる。
力なき者の本能がそうさせているのだと、逃げろと、理性が警鐘を鳴らす。
しかし、力なき者は蹂躙されることを望んでいた。
逃れられないように留められた身体はあつくなっている。
あの日、夜襲に遭ってから。
そればかりが脳裏をよぎるようになった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?