「何も知らない」7 最終話
“アオイさん”
携帯がひかり、液晶に浮かぶ懐かしい名前。
消してなかったんだ、僕。
心臓だけが正直で、打ち付ける痛みを感じながら、届いた一通のメッセージを開く。
「トウマくん、久しぶり。元気?…にはしてないよね、君はきっと」
アオイさん。
アオイさんの言葉。
あの時のアオイさんの声が、耳の中で再生される。
それは真横にいるほど鮮明で。
僕は何一つ忘れられないでいることに気づく。
「私は変わらず、前の寂しい生活に戻ったよ。旦那とも、何も無かったみたいに過ごしてる。あんな