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何も知らない

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生きる意味を見い出せず、自暴自棄に生きる斗真と出会ったのは、売り専で買ってくれた客のアオイだった。「お酒飲もうよ!」アオイの温かさ、美しさ、儚さを知った斗真は一気に惹かれていく…… もっと読む
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記事一覧

「何も知らない」1

1……2……3…… ―― 僕は常に死にたかった。 “生きてればいいことあるよ” ほんと、そ…

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「何も知らない」2

「え…お酒ですか?」 キッチンへ向かう彼女の背中を僕の声が追いかける。 「そうよー…あれ…

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「何も知らない」3

「はぁーあ、もうこんな時間か…終電とかあるよね?そろそろお開きにしましょー!…今日はあり…

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「何も知らない」4

部屋に戻り、黒いワンピースを脱がしたアオイさんはとても細く、まさにモデルのようだった。 …

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「何も知らない」5

僕達は連絡先を交換し、アオイさんから連絡が入った時だけ、あのマンションで会った。 大体決…

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「何も知らない」6

「ごめんね、もう会わないようにしよう」 それは突然のことだった。 機械を通したアオイさん…

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「何も知らない」7 最終話

“アオイさん” 携帯がひかり、液晶に浮かぶ懐かしい名前。 消してなかったんだ、僕。 心臓だけが正直で、打ち付ける痛みを感じながら、届いた一通のメッセージを開く。 「トウマくん、久しぶり。元気?…にはしてないよね、君はきっと」 アオイさん。 アオイさんの言葉。 あの時のアオイさんの声が、耳の中で再生される。 それは真横にいるほど鮮明で。 僕は何一つ忘れられないでいることに気づく。 「私は変わらず、前の寂しい生活に戻ったよ。旦那とも、何も無かったみたいに過ごしてる。あんな