涼暮月
小雨の降る日暮れ時。
傘もささず、濡れた石畳の道をそろそろと歩く。
小鳥のさえずりや、風の通り道をさがしていたら、
さっきまで何で悩んでいたのかを忘れた。
みんな忘れた。
青々とした緑はまだ若い。
みなぎる草木の声、虫の活気。
青楓。
青楓がとおせんぼをする。
立ちどまって、濡れた青楓をそろりと撫でる。
細かい雨粒は霧状になって、頬に涼しくあたり続ける。
心は透明だった。
湧きあがる自然の声に気付けた私は、
いつのまにか静かに老けていた。
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