松本清張作 映画・鬼畜

松本清張の鬼畜という作品を知ってますか?
何度か映像化もされているんですが
その中で、一番最初に映像化された
緒形拳さん主演、岩下志麻さん小川真由美さん出演ver.について

主人公は妻と従業員ひとりの印刷会社を経営している真面目な男
だが、ある時連れていかれた料亭で働く女性に惹かれ
自分も愛人くらいかかえる男になりたいと
その女性と関係をもってしまう
はじめの頃は羽振りも良かったのか、なんの問題もなかったが
会社の経営状況が圧迫しはじめ、愛人を囲っている余裕がなくなっていく
愛人には子どもが3人
食うにも困った愛人はある日とうとう子どもたちを連れて
男の家に乗り込んでいく
奥さんに内緒にしていたこともあって、外で言い合いをしていると
奥さんが出てきて、家に入ってもらいなよ、と
愛人は、騙された!と責任とってよと男に迫り
奥さんは奥さんで、旦那に何年もの間裏切られていたことに怒り心頭
一晩泊めてと言った愛人は、夜中のうちに子どもたちを置いて
トンズラしてしまう

旦那にも愛人にも怒りが収まらない奥さんは
あんたの子どもなんだから
あんたが面倒みなよ、と知らん顔
男も面倒見るには見るが
小さい子どもの世話は思った以上に大変で
奥さんに手伝ってと頼んでみるも鬼の形相
奥さんは子どもたちを心底毛嫌いしており
一番下の赤ん坊の寝ている顔の上に座布団を乗せようとしたり
ご飯粒を無理やり口に押し込めたりして窒息死させてしまう

その事件をきっかけに
男もじょじょに子どもを邪魔に思うようになり
夫婦で始末する算段を相談し合うように
2番目の女の子と東京タワーに出かけて
女の子が気をそらしたすきに置いて逃げていってしまう

一度に妹と弟を失った1番上の男の子は
なにかおかしいことを薄々感じているものの
まだ父親には懐いていた

次はあのコだと、毒入りのおにぎりを持って出かけさせる
お腹が空いたから食べようと促すも
男の子は食べない
男は自分のしようとしていることにふいに恐ろしくなり
ひと目も憚らず泣いてしまう

だが、奥さんは容赦しない

男の子を連れて、男は旅にでる
親子の最初で最後の、悲しい旅行
泊まった旅館で夕飯を食べながら
男は子どものころの話をする
あまりしあわせな子ども時代ではなかったらしい
翌日、二人で東尋坊ヘ
崖から子どもを突き落として
逃げるように去っていく
これでいいんだと自分に言い聞かせて

しかし、子どもは死ななかった
助けられ、警察に保護されるも黙秘
父親のこともなにも話そうとしない

同じく警察に捕まった男のもとへ連れられてくる子ども
あのひとはお父さんでしょ、との問に
子どもは憎しみとも悲しみとも絶望ともなんとも言えない表情で
知らない、あんなひと知らない
と涙を堪えながら訴え続ける

このときの男の子の気持ち
決別を意味していたのか
親なら殺そうとするはずがない
あんなひどい目に合いながらも
それでも、父親をかばいたかったのか

それから男が、泣きながら許してくれと打ちひしがれるところ

壮絶な虐待ものの映画で
観るのもツライ胸糞映画だけど
主人公を演じてるのが緒形拳さんだからか、
単純にひどい人間、クズ人間と決めつけられない
(まぁ、クズはクズなんだけど)
人間らしさを感じさせるのはさすがだなって思った
若い頃の(というか皆若いのだけど)岩下志麻さん
若い頃から超美人
そして、演技と思えないほど超怖い

まだ赤ん坊だったあのコ、トラウマになってないか心配


この作品における鬼畜とは一体誰のことを指しているのだろう

誰の心の中にも、小さい鬼畜が眠っているのかもしれない
本当に恐ろしいけど、こういう映画こそもっと世にあるべきと思う



#映画 #鬼畜 #緒形拳 #岩下志麻 #小川真由美

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