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小説 『窓』 no,35

妹尾錠治は、紡車紫織との濃密な夜を過ごした後(のち)も…
結局(けっきょく)、(紡車紫織から)聞き出せなかった…

三輪龍二 が転落死 した 夜(よる)、紡車紫織と その場に 一緒にいた (もう一人の)男の事(男の正体)を考え続けている 妹尾錠治が…出入口の大きな『窓』を通して外を見ている…

その男が、まるで 今の妹尾錠治の存在(立ち位置)に 似ていたからでもあった…

それは、

倉崎聖士との深い人間関係があり、紡車紫織を通じて 警察内部の動きにも 詳しい点にある…

妹尾(心の声):『もしかしたら、俺は その人物に 意図的(計画的)に 間違われて 来ていたのではないか…?』

妹尾(心の声):『だとしたら、紫織(紡車紫織)は 私を騙していた事に成る…、いや、そんな事は 絶対に信じたくない!(し、)信じられない!』

妹尾錠治は、心の中で 紡車紫織を冷静に見つめるだけの自分(別の…もう一人の妹尾錠治)と 葛藤(かっとう)を繰り返していた。

倉崎聖士が堺署に勾留されて11日目の朝…

紡車紫織の兄である紡車耕司(つむ こうじ)から 妹尾錠治 に電話が入る。

紡車耕司:『もしも、妹尾さんですか…?』

妹尾:『どちら様でしょう(か)…?』

紡車耕司:『以前、倉崎さんと一緒に来て頂いた事がある、上野で「紡車(つむ)」と言う 小さな食堂(小料理屋)を 遣(や)っている 紡車耕司と申します…!』

妹尾錠治は、突然の紡車紫織の兄からの電話で驚いていた…(動揺していた…)

(妹尾は)少しでも、落ち着いて話しを聞かねばと…

そして、

気を落ち着かせる為の努力体制(モード)に入ると…

妹尾:『あぁ、分かりました!』
妹尾:『その節は 遅くまで…すみませんでした…』

妹尾錠治は そう応えると、 深く息を吸い込んだ。

紡車耕司:『いゃねぇ、妹の紫織から…妹尾さんに お詫びを入れる様に言われまして…』

妹尾:『何のことでしょう?』

紡車耕司:『 私が…どうも倉崎の言っていた事を 聞き間違えたようで…、以前(倉崎が最後に店に来た時)、そちらの 佐倉井さんに 確認電話した際(さい)の事なんですが…』

そこまで 紡車耕司が話し出すと…

妹尾は「あぁ、佐倉井から聞いていた…あの時の話しだ!」なぁ…と、(妹尾は)冷静さを取り戻し、引き続き 紡車紫織の兄である紡車耕司の話す内容に耳を傾けた…

紡車耕司:『久保伸治さんの「シンジ」だったのを 妹尾錠治さんの「ジョージ」と勘違をして、(佐倉井さん) 連絡してしまいまして…』

紡車耕司:『妹尾さんに 大変な御迷惑を掛けてしまってた事を 妹(紡車紫織)の方から、つい 先日(せんじつ)聞かされまして…』

紡車耕司:『お詫びしなければ…と思い 電話で 失礼ではありますが…、
なかなか 大阪まで出向く時間が取れなくて、一言でも…謝りたくて…』

紡車耕司:『本当に申し訳ありませんでした 』

一呼吸を置いて、紡車耕司が更に話しを続けた…

紡車耕司:『妹が言うには、私が聞き間違えた せいで、妹尾さんが警察(署の方)で取り調べを受けられたとの事を知りまして…、』
紡車耕司:『本当に 申し訳なくて…』

妹尾:『そうでしたか… でも、それは(多分)、弊社(へいしゃ)の佐倉井にも原因が ある事のように 思うのですが… 』

紡車耕司:『いえいえ、それは… 私が もう少し佐倉井さんに誤解を与えないように配慮して 話せば 良かった 話しなので…』

妹尾:『紡車さん、実(じつ)は 私の方も ちょうど今、その事について考えていた ところでして…』

妹尾:『逆に あの夜に (倉崎聖士の待ち合わせしてた相手が…) 久保伸治 だと 教えて 頂いて たいへん助かりましたょ…』

と 応えた 妹尾錠治の言葉が聞けて…か、少し安堵(あんど)した様子の紡車耕司が、 さらに話しを続けた…

紡車耕司:『PGセキュリティ システム(株)の関係者の皆(みな)さんには、常日頃(つねひごろ)より、お店に来て頂いたており…、
(妹尾さんも含めて)皆さんから名刺を頂(いただ)いておりますが…、
私(紡車耕司)も含めて「… …ジ」の名前(呼び名)の方が 多いのと…、 倉崎(聖士)からは 自分の部下達を「下の名前」でばかり、(店に来て)聞かされていた ものですから…
本当に佐倉井さんにも御迷惑を掛けてしまいました…』

紡車耕司の間違えた理由まで、しっかりと聞かされた…

妹尾錠治は…

紡車耕司の様な立場(お店の店主)で日頃から 多くの客と 接していると…

お客の名前を覚える上で…、

倉崎の( いつも社長の立ち位置で いるかのような 倉崎の態度 の )ように (他人を)下の名前で呼ぶ癖(くせ)がある「客(倉崎の様な客)」だと… 、(お客の名前を覚えるのが…)大変だろなぁ…、」と思った…。

妹尾錠治:『紡車(耕司)さん、どうか、 もう気になさらないで下さい…』

妹尾:『本当に もう 大丈夫ですから!』

紡車耕司:『ありがとう御座います…』

紡車耕司:『また、是非とも東京に来られた際には、御立ち寄り下さい… 改(あらた)めて お詫びさせて頂きますので…』

妹尾:『もう、お詫びは良いですから…、また 美味しものを食べさせて貰(もら)いに 必ず行きますょ!』

妹尾は (数分間も続いた…) 紡車紫織の兄である 紡車耕司からの「謝罪」の電話を切ると…

妹尾(頭の中で):「久保伸治」だっのか…
「これで謎が解け出して来たぞ!」

妹尾錠治は(自宅のマンションの)エントランスの様なベランダに出て煙草(たばこ)に火をつけた。

妹尾(頭の中):「何らかの理由で、自分の口からは、結局(けっきょく)言えなかった(答えられなかった) 「久保伸治(くぼしんじ)」 の 名前を、紡車紫織が 自分な兄(である紡車耕司)を 使って伝えてきたんだろ…!?
…とも取れる(可能性のある)推測を続けていた。

そして…

妹尾錠治は、「久保伸治」の存在の異常さに 気づくと…、
今までに感じた事の無い様な「不気味さ」を、ホワイトボード代わりに (マンションの)部屋に置いてる 「画用紙の綴り」 の 一枚に マジックペンを使って書き出した…

倉崎に依頼された 紡車紫織が 三輪龍二 から「ブラック·ステック」と「設計情報と思われる資料」を 押収する際にも…久保伸治が…
紡車紫織の直ぐ傍(そば)にいたとしたら…

そして、

赤井義晃らと 倉崎聖士の会社を辞める際に「もう、二度と(倉崎聖士の)こんな会社には来ない!』と 言い放っていた(豪語していた) との佐倉井を含む 会社の職員達の証言(話)が あるのに…(残っているのに…)

紡車紫織の兄の(遣っている)上野の和食食堂「紡車(つむ)」で 倉崎聖士と 待合わせの約束の遣り取りをしていたり…

さらに、

倉崎聖士が開発した「ブラック•ステック」を 三輪龍二の会社である「三輪商事」から 製造依頼を受けて、更に小型化したゴト具を設計し製造していたと 考えられる 「久保製作所」の存在と、 久保伸治とが繋がっているとしたら…

妹尾錠治が 呟きながら マジックペンを使って、画用紙に名前と矢印と、それらの繋がる関係性についても書き込み続けていた…その…
妹尾錠治のマジックペンの動きが急に止まる…と、

妹尾(心の声):『 「何なんだ!」「こいつ(久保伸治)の 本当の 立ち位置は…?(そして) その 正体 は…?」 』

妹尾錠治が大きく深呼吸をする…と、

妹尾:『これが事実だったら、久保伸治は「三重スパイ」じゃあないか!』
妹尾:『そして、それが 出来る「立ち位置」があるとしたら…』

妹尾錠治の心の声は、「妹尾錠治の興奮状態で分かる様に…」 既(すで)に漏(も)れて出ていた…

そこまで(の)、(妹尾錠治の) 心と頭が 一体 となって繋がった「推理」を続けていた(妹尾錠治の)顔面(表情)が…、
まるで 行き場を失った鶏(にわとり)の様に「 一瞬 」止まった!

……………………つづく………………………
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