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2003.01.19猫を産む



昔書いた、育児ノイローゼ系の話です。
書いた後に自分で主人公に対してたいそう腹を立ててました。は?何だこの女?と思って。
もう溜めておいても仕方がないので、小話は出来不出来にかかわらずどんどん放出しようと思いました。



***


ねこをほんとに産んでしまってびっくりした。
やわらかくてもうとってもおおきくてにゃあってなく。
「なんで?なんでねこなんですか!」
分娩台の上から産婦人科医に詰問した。
「こんなにふわふわだし、けっこう大きいよ」
医者は的を得ないことを言う。
目はねこに釘付けだ。

「何て可愛いの。抱いてごらん?」
「やだ、私アレルギーなんで」
むりむりむり。
みんなワイワイやって、奪い合いで抱っこしてる。
こっちのことなんて気にもしない。

看護師さんもこちらはそっちのけで、よその妊婦さんまで見に来た。
「普通、生まれたてって可愛くないのに、この子はすっごい可愛いね」
「おとなしーい」
「やわらか!やだー!ふわっふわ!」
「ちょっとこっちも抱かして」
「待って待って」

分娩台の上から怒鳴った。
「ちょっと!こっちはどうしてくれるんですか!」
すると首だけこちらに向けて事務的に言う。
「あー、そのまま寝ててください。すぐには動かせないんで」
首はすぐに戻った。

慌ただしくやってきた夫に訴える。
「聞いてよ、ねこだって」
「うん、もう見てきた。名前決めてきた」
「はぁ?」
呆れてものもいえない。
それが、何に対してなのか自分にもよくわからない。
わたしに相談なく名前を決めたことなのか、ねこを産んだことに一言もないからなのか。
わからない。

重大なことを打ち明けてみる。
「あのさわたし、猫そんなすきじゃないの」
「仕方ないね」
どうして肝心な所をみんなスルーするんだろう?
ちゃんと話聞いてるのかな?
詳細に調べて準備したベビーグッズをみてため息しか出ない。
おっぱいも張って痛い。
そうっと立ち上がろうとして、今度は下腹の痛みに顔を歪めた。

チリチリ…。
首に付けた鈴が鳴る。
ねこは下から大きな目をして見上げてた。
赤ちゃんを抱っこして授乳して、少しずつ大きくなって、はいはいして、立って動いて話をするときを楽しみにしていたのにな。
涙がぽとりと落ちた足元を不思議そうに見て、かまいもせずに足に体を擦り付けてくる。
しっぽが巻き付くように動いてくねる。
ふわふわだ。柔らかい。
慣れなきゃいけないんだろうな。
ため息をついてかがみこみ、手を置いたねこの腹はあたたかく、脈動して上下にゆっくり動いていた。





おわり





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