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短編小説

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夢から着想を得ることが多いです。
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#短編

はじめての140字小説。お笑い芸人とおっさんの友情

ずっと140字小説に憧れがあったので、いつかやってみたいなと思っていた。 近況を報告すると、何だか無茶苦茶に忙しくなってしまっていて、フルタイムの仕事の過酷さを思い知らされています。 140字では終わらないのが悲しいへっぽこ物書きの性で、起きた時は続き見せて~~!な気分だった。 自分が男性になっている(独身、中年に近い、恋人なし、一人暮らし)夢というのが好きで、まさに異世界を体験しているようでとても楽しい。 何となく女性というのは、気を付けなければならなかったりわずらわし

秘密機械(ナンセンス・短編)

休憩室で女子が三人、二人は食べ終わったカップ麺をほったらかしで肩を寄せ合ってうわさ話をしている。一人は椅子に深く背中を預けて、携帯を見ながらそれを聞いていた。 「本山くんの秘密機械の話を知ってる?」 「知らない」 休憩室のガラス張りのドアから見える扉を目でさした。 「本山くんの、命から十五番目ぐらいに大事にしてる秘密機械があるんだけど」 「けっこう順位低いね」 「すごいことが起きて、時空が反転しちゃうんだって!」 顔が近い。 「そんなことが起きちゃったら大変じゃん」

路地裏のメッセージ(短編小説)

閉店間近の雑貨店で、白髪の店主はクローズドの札を下げてやれやれと肩をひとしきりもんだ。 今日はまあまあの人の入り、でも午後になるにつれて暇になっていき、最後はほとんど居眠りをしていたかもしれない。 それはあんまりソフトな音だったので最初は気づかなかった。 たん たん たん 雨でも降ってきたのかとすりガラスに暗い窓の外を覗いてみた。 雨粒が当たっている気配はない。 タン タタン だし だし さっきよりも強めの音がした。 辛抱強くいつまでも定期的に。 取るまで鳴り続け

託宣の人(短編小説)

 畳の部屋から廊下に出た。  素足の下で冷たい木がきしむ。  庭園に面した離れ家へ長い廊下が続いているのが見えた。  さきに行っていた二人が入り口で私を手招きしている。  廊下からは、広大な日本庭園が一望できる。  あのぽつんと離れた東屋(あずまや)か茶室のような場所からはなお美しい庭を堪能できるだろう。  身をかがめて鴨居の下をくぐる。  ここなら一息つける。  私たち三人は外の騒乱から逃れてここに来た。  何気ない抗議行動の体(てい)を装って始まった騒乱が、この