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短編小説

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夢から着想を得ることが多いです。
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#小話

奥さんの言うことはいつもよし(現代おとぎ話)

ある所に夫婦がおりました。 ある日旦那さんがハゼを釣ってきて、料理をすることになりました。 奥さんは「わたしがやろうか?」と言いましたが、旦那さんはむきになって自分でハゼをさばき、塩こしょうをふって粉を付けました。 調味料や粉は、そこらじゅうにとびちりました。 旦那さんは熱した油にハゼを乱暴に投げ込んだので、今度は油がとびちります。 「油はねガードをした方がいいんじゃない」 奥さんが言いましたが、だんなさんは言うことを聞きませんでした。 油はますます周囲に飛び散りました。

路地裏のメッセージ(短編小説)

閉店間近の雑貨店で、白髪の店主はクローズドの札を下げてやれやれと肩をひとしきりもんだ。 今日はまあまあの人の入り、でも午後になるにつれて暇になっていき、最後はほとんど居眠りをしていたかもしれない。 それはあんまりソフトな音だったので最初は気づかなかった。 たん たん たん 雨でも降ってきたのかとすりガラスに暗い窓の外を覗いてみた。 雨粒が当たっている気配はない。 タン タタン だし だし さっきよりも強めの音がした。 辛抱強くいつまでも定期的に。 取るまで鳴り続け