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超短編小説|コロコロ変わる名探偵

 私は男に問い詰めると、彼は気まずそうに「コロコロ変わる名探偵です」と答えた。手に汗を握り、目をギラギラさせている。

 彼に出会ったのは、去年の夏だった。近所の住民から嫌がらせ被害に遭っていた私は、知人の紹介で名探偵を紹介してもらった。

 異変に気づいたのは、相談してから1週間くらい経った日のこと。いつものように彼に被害を相談していると、大きなカミングアウトを受けた。

「実は、名探偵じゃないんだ。高校の教師なんだ」

 私は唖然としてしまった。それでも、彼は少しずつだが、私のために証拠集めをしてくれた。だから、たとえ探偵でなくても、彼を信用しようと思った。

 それから1週間経ったとき、私はさらなるカミングアウトを受ける。

「実は教師じゃないんだ。八百屋なんだ」

 それからも、彼は美容師になったり、占い師になったりした。その度に私は不安になったが、彼は着々と真実を明らかにしていく。

「あなたは、いったい何者?」

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