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超短編小説|オリジナル

ショートショートというのは、超短編小説のことです。なので、すべてフィクションです。すぐに読める手軽なものなので、ぜひ最後までご覧ください。

オリジナルって何だろう?

よく自分の言葉で語れとか、オリジナルの言葉や表現が求められるけど、オリジナルってどこにあるんだろう?

僕は中学生だが、周りの友達には、オシャレな服を着ている女の子や全国大会に出場しているスポーツマンがいる。彼らは特別で、他の人には持ち合わせていない色を持っている。

僕はというと、平凡でありきたりだ。だから、いつも誰かの言葉や意見をなぞることが多い。自分の考えを表に出せないというよりは、考えを持ち合わせていないため、何が正解なのかを常に探してしまう。

今年の夏休みに「未来の世界」を描く絵画の課題が出された。自分が思い描く100年後の世界を自由に描く宿題だ。先生いわく、これもオリジナルが求められるらしい。

分からないから、とりあえず姉に聞いてみた。
「オリジナルって何だと思う?」
「パクらないことかなぁ。」
父にも同じ質問をしてみた。
「オリジナルって何だ思う?」
「人と違うってことかなぁ。」

僕はそれを聞いて、すぐにピンときた。そそくさと部屋に戻り、絵具を取り出し、画用紙の上に思いっきり色を塗りつぶしてみた。緑や赤や青の絵具をふんだんに使い、画用紙全体に色を重ねてみた。しまいには、いつもは使わない白も使った。特に何か意味があるわけではない。

すると、次第に人の顔のようなかたちに変化していく。
「やったぁ」
僕は心の中でガッツポーズをした。誰にも描けない自分だけのオリジナルの絵が完成したのだ。タイトルは「未来人」でいこう。

次の日、描いた絵をクラスの担任の先生に提出した。すると、先生から思いがけない言葉を言われた。

「やり直し。ふざけないで。」
担任いわく、これでは課題をやったことにはならないらしい。つまり、オリジナルではないらしい。

僕の頭の中は、まるで自分が描いた塗りつぶしの絵のように混沌としていた。誰かの作品をパクってもいないし、人と違うことをしたのに。

オリジナルって何だろう?

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