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やまとのショートストーリー|短編小説

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自作の短編小説をまとめています。 どれも短いお話なので、手軽に読めます。
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#私のコーヒー時間

超短編小説|『朝のルーティン』

 目を覚ますと、伸びをしてカーテンを開ける。窓から朝日が差し込んでくる。朝日を浴びながら、軽く水を飲む。シャワーを浴びる。これが、僕の毎朝のルーティーンだ。  シャワーを終えて出てくると、棚から透明な瓶のキャニスターを手に取る。そこからお気に入りの豆を取り出して、豆を計る。手動のコーヒーミルで豆を挽いていく。もちろんこのときに、フレンチプレスにお湯を注いで温めておくことも忘れてはいけない。  コーヒーミルを左手で持って、右手でハンドルをぐるぐると回しながら、コーヒー豆を少

超短編小説|大人のコーヒー

 初めて飲んだコーヒーは苦かった。 得体の知れない黒い液体は、少女のわたしの好奇心を掻き立てた。それはまるで、用水路を流れる泥水のようであった。けれど香りを嗅ぐと、うっとりと夢見心地な気分になるものだった。  母はいつもコーヒーを飲んでいた。 そのため、濃厚なコーヒーの香りは部屋中をふわふわと漂っていた。  わたしもコーヒーを飲んでいた。 母はコーヒーの量が減っていることに気づくと、すぐにわたしを叱った。母はきまって、「コーヒーを飲むと、背が縮むのよ」と言った。  わた