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スーパースピードアグレッション!

 狙う的はあの舐め腐ったクソ女の乗艦、真っ白な大型フリゲート。生きてるうちに一発ブチかましておかないと気が済まなかった。

「紗良! 主機もう少し出して!!」
「ムリ! 両舷全力いっぱい!! マジでブッ飛ぶっ!!」

 機関チェックモニタに齧り付いた紗良が、全力稼働中の高速ディーゼルエンジンより喧しい悲鳴を上げる。無線機要らずの大声だ。
 45ノットを超えると、水飛沫も豪雨と大差ない。高速艇用の六点式シートベルトで座席に括りつけられても、風圧で座席から吹き飛ばされそうな錯覚に襲われる。
 さながら台風ド真ん中のジェットコースター、それ以外に適当な表現は思いつかない。

「敵高速艇、発砲」

 火器管制レーダー波の探知アラートにコンマ1秒だけ遅れて、レーダースクリーン前に陣取る綾乃が無線越しに告げた。こちらはびっくりするほど無感情。

 反射的に舵を思いっきり左舷へ切る。
 右舷スレスレに水柱が立ち並んだ。聖渓学院の無人高速艇が装備しているのはボフォース40ミリ機関砲、こんな小舟など数発でスクラップだ。

「畜生退けクソ野郎ッ!」

 火器担当の祐奈が、艇首の遠隔制御式エリコンKAB20ミリ機関砲座を向けて負けじと撃ち返すが、当たるどころか届くかすら怪しい。
 いや、一瞬60度は傾いた甲板からブッ放して何かに当たったら、ちょっとした奇跡だろう。牽制より景気付けの類だ。

 冗談みたく重い舵を右舷いっぱいに切り返す。速度は早すぎ旋回半径は最小、挙句に過積載で艇は転覆ミリ秒手前。キツい横Gで、我が操舵ながらゲロが喉まで込み上げる。
 しかし勘と航法レーダーが正しければ、艇はしっかり真正面を向いたはずだ。

「祐奈ぁ!」
「距離180! 目標インサイト、射撃管制移譲! 深咲ぃ!」
「よし! 死ねぇ真弓ぃっ!! 死ねぇっ!!」

 操舵席の左端、保護カバーごと発射ボタンを叩き込む。瞬間、艇首がつんのめった。
 艇尾に詰め込んだ三発のガブリエル対艦ミサイルが、一斉に炎を噴いたのだ。

(つづく)


#逆噴射小説大賞2023
#小説

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