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温泉街のRe;DESIGN~天ヶ瀬温泉の情景を見つめなおす~

天ヶ瀬温泉の街並みはどんなテイストが相応しいでしょうか?
また、この街でどんな情景が思い浮かべられるでしょうか?

第五回を迎えた天ヶ瀬温泉コンセプトワーク。前回は『天ヶ瀬温泉の食』について話し合いました。

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(↑ 第四回天ヶ瀬温泉コンセプトワークについてはこちら )

今回のテーマはずばり『空間や風景』
天ヶ瀬温泉街の情景やデザインについて考えていきます。

▼なぜ昔の街は景観が統一されていたのか

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江副(ブンボ株式会社代表);さて、今日は一言でいえば空間デザインや環境デザインの話です。多くの人を惹きつける伝統的な街並みというのは決して偶然の産物ではありません。たとえば京都や豆田のような場所、こうした街並みはなぜ統一されていると思いますか?

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皆で多数決で決めたから?その昔その街において景観条例があったから?もしくは誰かランドスケープデザイナーのような人が統括していたから?

…勿論そういった背景もあったかもしれません。ただ私は、その一番の理由は「当時そこで使える材料が限られていたから」なのだと思います。

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たとえば近年日本でよく見かける大理石のデザイン。これはイタリアなどでは日常的なものですが日本では高級な建材です。つまり、輸入などが今と比べ一般的でない当時においては必然とその土地その土地にある資源で街並みが築かれてきたのです。

これが現代の私たちが感じる“日本の古き良き街並み”の正体なのでしょう。

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時代が進み世界中からあらゆるデザインを取り入れられるようになった今、大事なのは何でもやれるその状態で何でもやってしまうのではなくて、もう一度“その街らしさ”をきちんと考えて取捨選択していくことなのかもしれません。

▼かつての温泉街の情景を見つめなおす

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旅館街の皆さん;「よく、温泉街には場所ごとにテーマがありますよね。あれってすごく重要だと思うんです。」「たしかに、別府らしさ、湯布院らしさ、黒川らしさみたいなものはある気がする。」

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江副;黒川温泉の情景といえば街中に統一して木を植えたことが挙げられます。この木というある種の“共通項”こそが『黒川温泉一旅館』(※街全体が一つの宿、通りは廊下、旅館は客室という考え)を根底で支えているのかもしれません。

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筆者;そういえば昔ここ天ヶ瀬にも桜の木が植えてあったとお聞きしました。今の様子しか知らない自分にとっては大変驚きです…!

旅館街の皆さん;「桜はたしかにあったね。」「でも、道幅や管理の問題等で昔切られてしまった。」「今考えればやっぱり切らなければ良かったのにね。」

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江副;なんだかこの街における「桜」って象徴的ですね。利便性を追求して邪魔だから切るという時代とある意味不合理かもしれないけど風流や風情を求めて大事にしようとする時代。まさにそれらを反映していると思います。

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やはりこれからの街づくりのデザインを考える際、こうしたかつて当たり前だったものや何の疑いも無く切り捨てられてきたものを改めて見つめ直すことはとても大切なのだと思います。こうした街の内面にこそ真の“天ヶ瀬温泉らしさ”が眠っているのかもしれません。

▼そのデザインを心から楽しめるか?

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梶原(㈱カジワラブランディング代表);仮にそれが街並みや旅館、ホームページやグッズであろうと、どんなデザインも必ず中の人たちが楽しくワクワクするものでなければなりません。中の人たちが心からはしゃいでいれば外から見た時にも「なんだか楽しそうだな」と自ずと興味は持たれるはずです。

逆に外部のデザイナーに言われたからこれにしようでは決して多くの人達には伝わっていかないのです。

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僕は『良いデザイン』とはそれをきっかけに能動的に楽しそうで何か会話が弾む、まさにそんなある種の共通言語のようなものだと思います。

それらを踏まえた上で天ヶ瀬のデザイン(ロゴ)はこんなものが良いのではないでしょうか。

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〝川と湯のまち天ヶ瀬〟

…やはり皆さん、このコンセプトワークを通して川について話すときは本当に心から楽しそうでした。だからこそ、天ヶ瀬を温泉街としてだけではなくひとつの川の街としても捉えたらどうかと思ったんです。

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「懐かしい」とか「ほっとする」とか「なんだか自然を感じる」といったそういう情緒的な言葉を拾い集め紡いでいき、その上でそれに見合った建築のデザインや素材といった選択肢を選んでいく。そうすれば仮にどんな天ヶ瀬になったとしても結果的にワクワクする世界観を感じられるはずです。

▼目に映る情景と目に映らない情景

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今回皆さんのお話を聞いている中で、街の情景を「色」「物」などの目に見えるもので統一していくのと同じくらい「思想」「哲学」等の目には見えないもので統一していくことが改めて大切なのだなと感じました。

そしてなおかつ、この二者を両立させることも工夫次第では全然可能ではないかと自分は思います。

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梶原さんが考えた『川と湯のまち天ヶ瀬』ということば。そして、この全5回のワークショップを通して見えてきた立場も背景も何もかもが異なる皆さんによる『それでも川が好き』という共通意思。

どちらも共通して言えるのは、そこには“この街に暮らす人々の想い”が含まれているということだと思います。

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この“目には写らぬ想い”を少しづつ街の“目に見える光景”へと具体的に落とし込んでいく。それが最終的に〝天ヶ瀬温泉街の情景〟へと結び付くのではないでしょうか。

▼天ヶ瀬ステイトメントカード

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これは僕個人の勝手なアイデアではありますが、この街に『天ヶ瀬温泉のステイトメントカード』なんてものがあったら面白いなと思いました。

ステイトメントカードなんて横文字を並べましたが、要は天ヶ瀬温泉を一つの会社(旅館)と見立てた時の“共通名刺”です。

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カードの表面には皆さんが一番強く思う『言葉』。例えば「天ヶ瀬温泉に来たら川で〇〇すべし。」…みたいな一言。カードの裏面には皆さんが一番好きな『光景』、つまり皆さんが選ぶ天ヶ瀬のbest写真をそれぞれ載せます。

フォーマットさえある程度統一しておけば、その内容━━━つまり言葉や写真は各々が自由にアレンジできる仕組みです。

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天ヶ瀬温泉街の旅館やお店ごとにカードを置いておいて、天ヶ瀬温泉を訪れた人たちは街を回遊することでこのカードを集められるといったある意味スタンプラリーのような意味合いもあります。

集めれば集めるほど天ヶ瀬温泉街の写真集&名言集が完成していくイメージで、集めた枚数に応じて何かワクワクする仕掛けを組み込んでもいいかもしれません。

というわけで、早速ひとつ実験的に作ってみました!


~ステイトメントカード写真~


…とまあ、だいぶ話は逸れてしまいましたが、ひとえに〝街の情景を統一する〟といってもそのやり方は無限に考えられるのだと思います。

▼おわりに~デザインとは~

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『天ヶ瀬温泉街のデザイン』

言葉だけ聞くとなんだか外部のデザイナーやその道の専門家達がやってきて小難しい分析の元で生まれていく様なイメージですが、実際は私たち一人一人がこの街で大切にしたい情景を見つめなおし主体的に紡ぎあげていくシンプルな作業なのだと思います。

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仮にそれがロゴあろうとステイトメントカードであろうと、無数にある手段の中に私たち自身が大事にしたい街の世界観や情緒をいかに組み込むことができるかが重要であり、逆にそこさえしっかり統一できていれば後はきっと何とでもなるのでしょう。

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〝川と湯のまち天ヶ瀬〟
〝それでも川が好き〟

ようやく見えてきた天ヶ瀬温泉街とこの街の人々の情景。

果たしてこれからこの街でどんなデザインが生まれていくのか、自分は心の底から楽しみです。

written by 桶の旅人

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