世界に一つの温泉街の旅の始まり
◆はじめに~被災した天ヶ瀬温泉~
【令和元年の記録的豪雨で被災した大分(豊後)三大温泉地の一つである天ヶ瀬温泉街、そこで今『新たな取り組み』が行われています】
━━━いや、やめましょう。そんなありきたりで退屈な文面は世間一般に出回る新聞やテレビだけで十分です。
ここでは綺麗ごとだけではない天ヶ瀬温泉のリアルな今を「未来への記録」として書き綴っていこうと思います。
もしかしたらこの物語には皆さんが望むような復興哲学や答えは出てこないのかもしれません。いやむしろ、“それ”はきっと一切面白くない地道な作業の積み重ねでしかないのでしょう。
しかし、情報で溢れたこの時代に決まったある答えを出すということ自体に意味はありません。むしろ、その答えに辿り着くまでの体験や過程にこそ意義があるのだと思います。
…さあ、堅苦しい前置きはこれくらいにして早速参りましょう。いざ、未来へ!
◆〝天ヶ瀬温泉未来創造協議会〟とは
最初にお伝えするのは今この地で新たに始まった“天ヶ瀬温泉未来創造協議会”について。
『天ヶ瀬温泉未来創造協議会』とは、市や観光協会の皆さん、被災した旅館街の社長さんや女将さんら、天ヶ瀬の復興に携わってくれる外部のクリエイティブチーム、そして自分を含めた天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト(※通称あまみら)による連合団体のこと。EU(欧州連合)みたいな感じだと思ってもらえれば構いません。
簡単にご紹介していきます。
まずは温泉街チーム。温泉旅館14軒の皆さんの中には、川沿いの宿で洪水被害に遭いこれから旅館の再建を図ろうとする方々と宿が川上に位置しており直接の洪水被害には逢っていない方々の両方の立場の人がいます。
各旅館の社長さん方に限らず女将さんや後継者さんらも混ざった年齢も性別もバックグラウンドも異なる多種多様なメンバーです。
続いてクリエイティブチーム。ここにはブンボ株式会社代表の江副さん、カジワラブランディング株式会社代表の梶原さん、株式会社ブリックハウス代表の焼山さん、西日本新聞社の野村さん、同じく西日本新聞社から鳥越さんらが参加。
日田や天ヶ瀬にゆかりがある各分野の個性派揃いの頼れる面々です。
そして、僕も含めたあまみらチーム(天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト)。自分らは主にこの連合で、旅館街チーム、クリエイティブチーム、そしてその他の住民さんや行政との橋渡し役を務めます。
天ヶ瀬温泉未来創造協議会の目的は一つ、この先の復興の指針━━━つまりゴールを定めること。皆が目指したい先さえ見つかればそこに辿り着く道のりはいくらでも見つけることが可能です。いわばこれはある種“登山”の様な作業なのかもしれません。
〝頂上は常に一つ、しかしそこに辿り着く道のりは無限に存在するものなのだ〟
━━━ガリレオ・ガリレイ
◆これは“コンサルタント”なんかじゃない
さて、この連合チームで実行していく取り組みは主に『コンセプトワーク』と『勉強会』の二つ。2020年12月~2021年3月の間にそれぞれ各5回ずつ行っていきます。
今回はその第一回目となるコンセプトワーク回。この先のワークや勉強会の進め方を皆で話し合います。
今回のワークで一番大切なのこと、それは決して『外部コンサルタント≻天ヶ瀬温泉街』という様な関係ではないということ。
これは一見当たり前のように思えて実はものすごく大事なことです。
こういった連合チームでの取り組みというのは、その規模や内容の差異はあれどきっと今日この瞬間も日本全国ありとあらゆる場所で行われていることかと思います。
内の視点と外の視点をかけ合わせることは何事においても必要不可欠であり、その上で外部の力を借りるという手法は大変理に適ったことです。
しかし、それらの数多の取り組みの大半が上手くはいきません。いや、もっと正確に言えば仮にその一時は上手くいったように思えても決して長くは続かないのです。
なぜなら、最終的にこの街を築き上げていくのは他でもなく地元地域に根付く人々であり、それは決してコンサルタントや外部の人々ではないからです。
どんなに優れた効率的な解決策や指針であろうと、地元の人々がそれを自分事として思えないものなら全くの意味を成しません。
だからこそこの天ヶ瀬温泉未来創造協議会ではあくまでも旅館街の皆さんが主体であり、外部のクリエイティブチームや自分たちはそのサポート役でなければなりません。
つまりこれは先生と生徒といった上下関係ではなく、それぞれの役割の違いを持った対等なチームメイトなのです。
皆さんにはそのことを前提にこの先の復興の物語を読み進めて頂けたら幸いです。
◆終わりに~世界にひとつの温泉街復興物語~
さて、何度も言うように情報が溢れ、誰もが一瞬で正解に辿り着けるそんな今の世の中において答えを出すこと自体にさほどの意味はありません。
今すぐにこの記事を閉じてGoogleで「被災地・復興・経営戦略」とかで調べればそれっぽい答えは五万と出てきます。
自分たちが苦労してやっと思いついた“名アイデア”ですらも既に世界のどこかでは全く同じことが思いつかれているはずです。
もしかすると、全てのワークが終わった先に見えてきたコンセプト(指針)だって一見すると何の目新しさも無い、この上なくありふれた答えなのかもしれません。
もしそうであるならば一体なぜこうした取り組みは行われていくか。それは他でもない、私たち自身が“経験”するためです。
どんなに情報としての答えが溢れたとしても、私たちは経験することでしか本当の意味での答えは導き出すことができません。
皆で徹底的に話し合い、深く考え続け、時には失敗を重ねもがき苦しむ。
そうして辿り着いた答えには、きっと今この瞬間に見つけることができる答えとは別の意味が生まれてくるはずです。
そしてそれこそが1300年もの歴史を持つこの天ヶ瀬温泉街において現代を生きる私たちができる唯一無二な役割なのかもしれません。
目的を見つけよ。手段は後からついてくる。
━━━かつてガンジーはそう言いました。
これから仮にこの街でどんな物語が紡ぎ出されていくことになろうとも、きっとその時私たちは何だってできるはずです。
いざ、各種各様の経験の旅へ━━━
written by 桶の旅人
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