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小ネタ③〜大和選手のファーム時代の守備を数字で見る

久しぶりの大和選手の小ネタシリーズ。

過去の記事はこちらから。

小ネタ①~大和選手が歴代監督と同じ試合に出た日
小ネタ②~大和選手と二遊間を組んだ選手

「記録から大和選手の野球人生を振り返る」シリーズになってきました。
今回も同じく、記録をたよりに大和選手の守備、それも2006年~2008年のファーム時代の守備(ショートのみ)を数字で見てみます。

はじめにいろいろ

何度か書いているかと思いますが、私が大和選手を応援するようになったのは彼が1軍で「センター」というポジションで活躍をし始めた頃(2012年、2013年あたり)で、それ以前のことはほとんど知りません。

現在ネット上で閲覧できる大和選手関連の記事で、最も気に入っている「高校野球ドットコム」のこの記事。

大和選手の守備を見るために鳴尾浜に通ったという筆者の思い出話に、私は感銘を受けたのでした。

その流れるような美しい所作に強い衝撃を受けたものだった。阪神のファームの本拠地である鳴尾浜球場の近くに住んでいることもあり、暇さえあれば大和選手の守備を目当てに球場へ足を運んだ。時間がない時は試合前のシートノックだけを見て帰ることもあったが、それだけで十分、目の保養になった。確実性と美しさを兼ね備えた守備力は18歳にして、間違いなく一軍トップクラスだった。

この記事に限らず、鳴尾浜時代の大和選手の守備を賞賛する文章には時折出会います。
そのたびに思うのです、「見たかったなあ」と。
しかし、15年近く前のこと、今はもうその守備をこの目で確認することはできません。それならば、

数字でそのすごさを検証してみようじゃないか!

と思い、今回調べてみたというわけです。

現在、守備評価において一般的に使われる指標は「UZR(Ultimate Zone Rating)」かと思います。UZRはどのような打球がどこに飛んだのか、映像から打球一つ一つを記録し、そのデータをもとに選手の守備力(同じ守備機会を同じ守備位置の平均的な野手が守る場合に比べてどれだけ失点を防いだか)を評価します(*1)。
日本のプロ野球でUZRのデータ取得が始まったのは2009年からで(*2)、残念ながら15年前のファームのUZRというのは存在しません。
しかし、UZRができる前にも公式の守備記録をもとにした守備指標はありました。今回はその中の「RRF(Relative Range Factor)」を応用した「RRF補殺得点」で、大和選手の守備力がどれほどものだったのかを確かめてみたいと思います。

「RRF補殺得点」は最近読んだ『デルタ・ベースボール・リポート4』で知りました。というわけで、その計算方法は同書に掲載されている下記論考と、その筆者である竹下氏のブログを参考にしています。

・「テーブルスコアを活用した疑似UZRによる遊撃守備評価」竹下弘道(水曜社『デルタ・ベースボール・リポート4』より)
RRFの考え方|日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog(竹下氏のブログ)

RFは刺殺も含めた指標で「平均的な同一ポジションの選手と比べて相対的にアウトを何倍多く取ったか」を表したものですが、RRF補殺得点では刺殺部分は省いており(遊撃手の刺殺は選手の処理能力に大きな差はつかないとされているため)、さらに「失点をどれだけ防いだか」という単位に変換されています。

大和選手のファーム時代(2006~2008)の守備評価

まずは2006年から2008年までの出場記録から見てみます。
入団してから3年間、一軍昇格は一度もありませんでした。

小ネタ③2006-2008出場記録

※試合数以外の数字は、NPB公式サイトに掲載されているボックススコアを参照して出したものです。

当時、阪神タイガースが属するウエスタン・リーグの総試合数は88試合でした。大和選手の出場試合数を見ると、ルーキーイヤーから積極的に起用されていたことがわかります。
これを見て、私は「かなり期待されてたんだな」と思ったのですが、どうやらチーム事情によるところも大きかったようです。
大和選手が入団した当時、タイガースの二遊間は大和選手の次に若い選手が6歳年上の鳥谷敬選手という状況でした。鳥谷選手は1軍でしたので、ファームでは必然的に大和選手を使うことになったのかなと。

他に興味深かった点は、途中交代の回数です。
2006年は先発で起用された試合が74試合ありますが、そのうち40試合で途中交代していました。しかし、次の年から途中交代の試合はかなり減っています。
イニングは推定なので実際はもう少し多い可能性もありますが、出場試合数で見ると2006年のほうが多いのに、イニング数では2007年が多いのはこういった事情があるようです。

続いて、守備の記録です。
刺殺から守備率まではNPBの公式サイトで確認できる記録となります。

小ネタ③2006-2008守備記録

さて、今回私が悪戦苦闘しながら出した「RRF補殺得点」ですが、すごい数値となりました。「平均的な遊撃手と比べてどれだけ失点を防いだか」という数値なんですが。

ほ、ほんとに? 高すぎない?
これ、あってるの……?

あまりにも高い数値が出たので自分でも信じられません。
RRFの算出過程で行う補正の一部を今回は省いて計算したため、それが原因なのでしょうか。そもそも私のデータ転記ミスとかあるかもしれませんが。(再チェックはしましたが)

まあ、多少誤差はあってもプラスであることに変わりはないでしょうし、ファーム時代の大和選手の守備は、言い伝えられているように「優れていた」ということは言えそうです!(無責任な結論)

おわり!(雑な締め)


※イニングについて
イニングはボックススコアを確認して出しました。
途中交代があった試合のほとんどは正確なイニング数を把握することが困難だったため、交代選手は2イニングを守ったと仮定し、交代選手数×2イニングを試合のイニングから引いたものを大和選手のイニング数として計算しています。
(『デルタ・ベースボール・リポート4』の「二軍の守備成績の捉え方」(二階堂智志氏)で取られていたカウント方法を参考にしています)

*1 UZR(Ultimate Zone Rating)|1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.
*2 日本版Ultimate Zone Rating(UZR)プロトタイプ | Baseball LAB「Archives」

参考
・日本野球機構 https://npb.jp/
・岡田友輔 他『デルタ・ベースボール・リポート4』(水曜社、2021年)
・日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog https://ranzankeikoku.blog.fc2.com/


見出し画像はいらすとや https://www.irasutoya.com/

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