にじさんじGTAが面白かったという話

とりあえずこの興奮を書き留めておこうと思ったので、久しぶりにブログでも書こうかなと。

いやー、にじさんじGTA面白かった。といっても、「なにそれ?」と思う読者もいるかもしれないので説明しておきます。

にじさんじGTAとは、VTuberグループの「にじさんじ」内で、6月15日から10日間行われた企画で、もともと1人用のオープンワールドRPGだった「グランド・セフト・オート5(GTA)」を、MODを使って複数人で遊べるようにし、にじさんじのライバーさんが10日間そのオープンワールドの世界で遊ぶという企画です。

遊び方としては、もともと「ギャング」「警察」「救急隊」「飲食店」といった職業があるので、その職業について、ロールプレイを行ってもいいし、あるいはフリーで勝手に商売とか犯罪とか、あるいはイベントを開催したりしても良いという感じです。MMORPGをにじさんじ内だけの人でやっているという感じ、と言うのが、知らない人にはわかりやすいんじゃないかな。

筋書きのないドラマ

で、その何が面白かったかと言うと、端的に言ってしまえば「筋書きのないドラマ」が、日々リアルタイムに繰り広げられることなんですね。

上記の記事は序盤におきた出来事について書かれたものなんですが、それぞれのライバーが自分の思うがままにいろいろなことを行い、それが他のライバーに連鎖的に影響を与えて、思わぬ方向に物語が進んでいく。しかもそれがリアルタイムで進んでいくというのが、まー楽しかったわけです。

深堀りすればするほどはまっていく

といっても、にじさんじGTA内で何が起こっていたかは、実は一部しかしりません。というのも、今回の企画に参加したライバーは100名以上居たらしく、すべての配信を追いかけるのは時間的に不可能なわけです。

なので僕は、とりあえず石神のぞみという、にじさんじGTA内では警察官をしていたライバーの配信を主に見て、空き時間に他のライバーの配信を見たり、切り抜きを見たりしていました。

ただ、やっぱり1人の配信だけ見てると、「あれ、なんでそんなことになったんだ?」というのがわからなかったりすることがあるわけです。

例えば、石神のぞみの以下の配信では、途中銀行強盗の人質となった月ノ美兎を車で送っていたら水没し、そしてその後、飛行機の襲撃事件の現場に行って、犯人たちの襲撃に遭遇して切るされたら、なぜかそこで月ノ美兎が死んでいるのを見つけるという流れがあります。

これは、上記に挙げた石神のぞみの配信を見ているだけでも面白いんですが、「では月ノ美兎はなぜそんなことになっていたのか」ということを追っていくと、月ノ美兎側の方では、「GTA初日にギャングと行動をともにし、そこで『お金をもらうかわりにギャングの人質ををやる』という人質ビジネスを始めることを思いつく」という、思いもよらない流れがあったことを知るわけです。

このように、1人の人間の配信だけをおいかけるつもりでも、「そこで何が本当は起こっていたか」を知ろうとするために、他の人の配信を追いかけるたり、切り抜きを追い、そこでまた新しい物語を楽しむことができたわけです。

「筋書きがない」ことによるエモ

そして、そうやって多数のライバーが同じ世界に居て、相互に影響を与えることにより、ここのライバーが予想もしていなかった方向に物語がすすむわけです。

その例として、今回のにじさんじGTA内で僕が一番印象に残っているのが、「ローレン署長・エビオ副署長追放事件」です。

先ほど述べたように、にじさんじGTA内では警察という役職があり、僕が配信を追っていた石神のぞみはその警察に属する警察官でした。

警察という役職は、ゲーム内で他のライバーが行う犯罪に対し、その犯罪を行ったライバーを捕まえにいくという役割を担わされています。

ただ、その捕まえる方法というのが、ゲーム内ではかなりややこしいんですね。覚えなければならない特殊な操作や、シューティング・ドライビングというゲームスキルが必要な場面がとても多く、未経験者にとってはとても難しい役職なわけです。僕が配信を追っていた石神のぞみも未経験者だったため、悪戦苦闘していました。

そこで、GTA経験者であるローレン・イロアスとエクス・アルビオが、署長と副所長という、警察という役職のリーダーとサブリーダーにつき、手取り足取りコーチングをしていたわけです。そしてその結果、最初は全然犯人を捕まえられなかったライバーたちも、日を追うごとにどんそん成長していき、そしてさらに警察同士の絆も深まっていったわけです。

ですが、そんな中で7日目の終わりにおきた「ローレン署長・エビオ副署長追放事件」。

ことの発端は、ゲーム内で営業されているキャバクラでローレン・イロアスとエクス・アルビオが食い逃げをしたというしょうもない始まりだったのですが、それが流れで、ローレン・イロアスとエクス・アルビオが警察を辞め、小柳ロウというライバーが仮署長になるという大きな事件になってしまったわけです。

おそらく、この事件が起きる前は、視聴者の中には誰もこのような展開を予想できたものはいなかったでしょう。

このままローレン・イロアスとエクス・アルビオは警察からいなくなりギャングへ転職するのか、それとも、警察に戻ってくるのか……。視聴者はやきもきしながら8日目の配信を視聴するわけです。

そして8日目、警察に戻る条件として、ローレンはある条件を提示します。それは「俺達がギャングとして犯罪を犯すから、それを捕まえることができれば警察に戻る」というもの。しかし、経験者のリーダー・サブリーダーを失った警察に果たしてそれはとても難しい課題。

そして迎えた「ユニオン」という大型の犯罪。これは、捕まえる側にとってはとても難易度が高い犯罪なのですが、警察側は必死に、かつて署長・副所長から教わった技術を駆使して応戦し、ついにローレン・イロアスとエクス・アルビオを捕まえることになるわけです。

そして、捕まった拘置所内で、ローレン・イロアスとエクス・アルビオは自分たちの行動を謝り、警察に戻ってくることを宣言するわけです。

この一連の流れは、リアルタイムに見ていてかなりドキドキしましたし、ローレン・イロアスとエクス・アルビオが警察に戻ってくるときは、本当に感動したわけです。

にじさんじ内での関係性が、エモを増幅させる

さらにいえば、にじさんじ内での各ライバーの関係性を知っておくと、上記の物語はかなりエモさを増してくるんですね。

例えば、上記の展開において、ローレン・イロアスとエクス・アルビオがいない警察のリーダーを努めたのは、小柳ロウというライバーでした。このライバーは、2023年4月に配信を開始した、にじさんじ内ではかなり新人なライバーになります。

そのため、視聴者としてはこう思うわけです。「果たしてきちんとリーダーをつとめることができるだろうか?」と。

また、小柳ロウ自身も、この事件に対する責任を口にし、視聴者側から見るとかなり落ち込んでいるように見えました。

そこで、小柳ロウを励ましたのが、石神のぞみだったんですね。

一連の事件に責任を感じた小柳ロウをはげまし、「取り返しいくぞ」と言う石神のぞみの姿は、かなり視聴者の胸に刺さったみたいで、ファンアートも量産されているわけです。

そして、このエモの背景には、小柳ロウと石神のぞみが、共に、にじさんじのライバー養成機関であるVTAの卒業生であるということがあるんですね。

つまり視聴者側は、上記のやり取りに、「同じVTA卒業生としての絆」を見出し、余計エモを見出しているわけです。

(なお、一応付言しておくと、上記はあくまで視聴者側が勝手に付与している文脈であって、「本当に事実がそうなのか」ということは、また別の次元の話です)。

また、上記の事件において、最後に一人になりながらローレン・を捕まえたのは、魔界ノりりむというライバーでした。しかしこのライバーは、8日目が始まった当初は、ローレン・イロアスがいないことに不安を感じ、元気をなくしていたわけです。

しかしそんな魔界ノりりむに励ましの言葉をかけたのが、最初警察でありながら、それを裏切りギャングとなった卯月コウなんですね。

その励ましを胸に魔界ノりりむは、ローレン・イロアスに自分の気持ちを伝え、そしてみごとローレン・イロアスを捕まえることに成功するわけです。

この流れは、これ単体でもかなり泣けるわけですが、そこで更に魔界ノりりむと卯月コウが、「おりコウ」というカップリング名があるほど、普段からかなり仲良くしている間柄であり、でながらにじさんじGTA内では警察とギャングという、敵対する陣営にあることを知っていると、よりエモさがましてくるわけです。

このように、にじさんじ内での各ライバーの関係性を知っていると、にじさんじGTA内での物語にさらにエモさを感じることが出来るわけで、そこがまた、にじさんじオタクにはたまらなかったりするわけです。

シリアスとコミカルのベストミックス

ただ、そのようなエモにあふれたシリアスな物語があふれる一方で、しょーもない笑いにつつまれていたのも、にじさんじGTAのもう一つの側面だったわけです。

僕は、主に上記で挙げた石神のぞみの他に、もう一人鏑木ろこというライバーのにじさんじGTA配信を追っていました。

このライバーは、石神のぞみと同じ「idios」というにじさんじ内ユニットに所属するライバーですが、彼女のにじGTA配信は、上記のようなエモとはかけ離れた、まーしょーもない珍道中だったわけです。

彼女は初日、何をすればいいか全くわからない中で、ギャングとして犯罪を行っていたライバーに誘われ、行動をともにします。

そして、何もわからないまま犯罪を共にし、900万円の罰金を背負わされるわけです。

そしてそれ以降鏑木ろこは、無鉄砲に犯罪を犯しながら街をさまよう半グレとしてロールプレイを行うことになるわけです。

これは、上記のようなわかりやすいエモい展開とはぜんぜん違うわけですが、なのに配信を見ていると妙に面白いんですね。犯罪仲間や警察との軽妙な会話とか、あまりにも直情的な行動が。『俺たちに明日はない』や『パルプ・フィクション』のような、洋画を彷彿とさせるわけです。まあ、GTAの元ネタがそもそもそういう犯罪映画ですから、ある意味正しくGTAを遊んでいると言えるでしょう。

あるいは、2日だけにじさんじGTAに参戦したリゼ・ヘルエスタの配信なんかは、むしろ「エモくないものをむりやりエモっぽくみせる」という、ある意味アンチ・エモな配信となっています。

このように、一方でベタにエモさ満点の展開が行われている世界の、また別の場所では、ベタなエモではないけど妙に面白い物語が展開されていたり、あるいはエモさをネタにするようなギャグ展開が行われている、その多様性もまた、にじさんじGTAの面白さだったように思います。

上記に挙げた他にも、社長とサロメ嬢のラーメン対決や、卯月コウと叶の因縁、生徒会パン屋とエニグマの物語など、たった10日間とは思えないほどさまざまな物語がにじさんじGTAでは展開されていて、今からそれぞれアーカイブを見るのが、楽しみだなぁと、思うわけです。

運営のすごさ

最後に、この企画を発案し、そして運営してくれた、叶・星川サラ、ストグラ運営チームは、本当にすごいなと思います。

単純に技術面・運営面から言っても、100名以上の、しかも大多数がGTAに不慣れなライバーが、同時に遊べるような環境を整備し、ヘルプをおこなうというだけで、すごすぎるにもほどがあります。

そして、それに付け加えて僕が「すごいなぁ」と思ったのが、ライバーにヘイトがいかないようにする、いわゆる「ヘイト管理」のすごさです。

今回のにじさんじGTAは、各ライバーが自由に一つの世界で行動し、それを視聴者が楽しむという点で、いわゆる「リアリティ番組」と同じ構造なわけです。

ですが、それこそ「テラスハウス」などの事件を見ればわかるように、ライバーたちがライバー自身として行動しているように見えることは、そこで上記に上げたような、実在するライバーの関係性をもとにしたエモによる楽しみが増す一方で、物語の展開のなかでヘイトを受けるライバーの、人格が批判されるなど、より精神的な負荷がかかりやすいわけです。

実際、上記で挙げた「ローレン署長・エビオ副署長追放事件」においても、事の発端となったキャバクラ側を批判するようなコメントが、SNS上などにはありました。

しかし、今回の運営においては、そのようなヘイトに対する対策は、割とよくできていました。下記のような物語への介入を行って、キャバクラ側にヘイトがいかないオチを模索したり、

1日毎のにじさんじGTA内での話題をまとめるコーナーでも「いやでもアーカイブ見たけど普通に食い逃げしてたし、ローレンたちが悪いでしょ(笑)」と、茶化しながらキャバクラ側にヘイトを向けないよう誘導していたりするわけです。

上記は、視聴者たちの見える場所でのヘイト管理だったわけですが、その裏では、そもそもライバーたちにヘイトが向かず、それでいてライバーたちが自由に楽しくゲームをプレイできるよう、物語の展開が数多く調整されていたことが想定されるわけです。

そのような調整が起こったからこそ、大きな炎上もなく、楽しく10日間にじさんじGTAを視聴することができたわけで、「万単位の視聴者を相手に配信するライバーたちは本当にすごいんだな」と、思ったわけです。

そして、そのような努力を無にしないためにも、視聴者の側も、下記の動画で剣持が言ってるように、ライバーたちへの尊敬を忘れずに、配信を見なきゃなと思うわけです。


お寄せいただいたおゼゼは手数料を除いた全額だらけるために使われます。