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甘く浮く醸造への道②

第2回 「石見麦酒へ醸造研修」

2018年9月某日。

早朝那須塩原駅から新幹線とモノレールを経由して羽田空港へ、そこから(当時33歳にして)生まれて初めて飛行機に乗って島根県は石見空港に舞い降り、途中浜田駅で雨による電車の運休によりしばし足止めを食らいましたが、何とか目的地行きのバスを見つけて江津市にたどり着いたのは午後4時を回った頃でした。


今回参加した石見麦酒さん主催の「醸造大学」。小規模ビール醸造所立上げを目指す方達を対象にしたワークショップで、1日中醸造所を開放し、オリジナルビールの醸造作業をしながら、合間にクラフトビール醸造の設備や経営を勉強するといった内容でした。

具体的な座学項目は
●醸造家を目指すうえで絶対に欠かせない物差しであるオフフレーバーの研修
(専用のキットを用いてビールの匂いから失敗の原因を探り改善まで導くといった内容)

●醸造免許取得に必要なこと。免許の種類・免許を取得する要件等
(日本の酒税法では麦芽、ポップ以外の副原料の比率が高いクラフトビールは発泡酒扱いになるので、発泡酒の醸造免許取得の勉強)

●醸造設備にかかる費用内訳
(炭酸ガス充填機を用いずナチュラルカーボネーションで醸造すれば150万で済むという話でした!)

●税務署提出用の製造工程表や各種帳簿のつけ方
(これが大変…)
などなど


島根に到着した当日は参加者の親睦会が催され、翌日が半日かがりのワークショップでした。

スケジュールは以下の通り。

9:00  石見麦酒江津工場集合
9:30~ オリジナル麦酒醸造開始
     (モルト粉砕・マッシング開始)
10:00~ 座学 醸造設備説明 
     オフフレーバー研修 
11:30~昼食 
12:00~ スパージング・煮沸開始
12:30~ 座学 醸造免許取得のために必要な事
14:00~ 酵母添加・発酵処理
15:00  醸造大学終了


その日は地元産のゆずの皮を使用した小麦ビールをみんなで仕込みました。

今回のワークショップで印象に残ったことは、すでに開業されているプロのブルワーさん達が4人も参加していた事です。事業拡大の際の設備増設に「石見式」の導入を検討している様子でした。

そして何より強烈だったのは石見麦酒工場長の山口さんのバイタリティです。
何故ここまで自分たちの財産とも言える企業秘密をオープンにするのか。

山口さんは言いました。

「昨今賑いを見せているクラフトビールブームも、国内シェアで見るとたったの1パーセントに過ぎない(2018年当時)。この数字を最低5パーセントにまで押し上げなければ自分たちを含め全国の小規模ビール醸造所の永続的な経営は困難である。なので、自ら知識や経験をオープンにしてクラフトビール業界全体の底上げを図りたい」のだと。

人口2万人の小さな町・江津市で、年間2万リッター以上を醸造・販売し、その販路のほとんどが地元山陰地方だという驚異的な業績の理由を垣間見た内容の濃い体験でした。


一刻も早くここでの体験を妻に伝えたい。
村上春樹的に言うなら
「僕たちは若く、太陽の光はタダだった」
まさにそんな気分で意気揚々と島根を後にするのでした。
(つづく)

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