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上に立つ者

同じ職場で働く若い男性がいる。青年と言ってもいい歳。
彼とはシフトが全く違ったので、一緒に仕事をしたことはなかった。
ただ、良い話は聞かない。何度頼んでも、同じミスを繰り返す、言われたことを忘れる、ドタキャンよろしく急に休むこともあったらしい。
それでもクビにしないのはどうしてだろう?と言う人もいる。

新しく来たマネージャーは、思い切ってシフトを変え、別の仕事をやらせることにした。私とも多少時間が重なるし、同じ仕事をする機会もある。

彼の噂を聞いていたので、初日は結構緊張していた気がする。当てにしてはいけないと思ってもいた。

体躯の良い、強面な彼。格闘家並みの風貌だ。でも、笑うと目尻が下がって、少年のような幼さが見え隠れする。
彼は、指示されたことは、淡々とこなす。力持ちなので、頼りにできることも多い。

マネージャーの配置換えは、功を奏したようだ。彼への仕事の指示は、一時に与えるのでなく、一つをこなしたら、次の指示を与えるというのがいいようだ。

私もやってもらったことには感謝し、それを言葉にしている。
「頼りになるよ、ありがとう」
「すごいね、うまくできてる」
「もう、終わったの! 早いね」
そう言うと、彼は照れた笑いを浮かべる。
自分が求められるていることを実感することも、彼には必要なのかもしれない。

一つのグループを、誰をも漏らさず、まとめ上げ、うまく機能させていく「長」の資質の大切さを、今更ながら思い知った。やり方一つで、そのグループはいかようにも作り上げられる。

私には、到底無理な話だな。


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