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【読書感想】望月の烏_その1

はじめに申し上げたいのは
わたしは八咫烏シリーズが大好きであることです。
八咫烏シリーズは外伝・ファンブック含めて
全て読んでおります。

また、この投稿は、「望月の烏」を読んだ人間が
「楽園の烏」を読み返した際の記録のようなものです。
「烏に単は似合わない」から、「弥栄の烏」まで読み、
なおかつ「楽園の烏」から「望月の烏」まで読んでいる。
そういった前提で、ネタバレ気にせず記載しておりますので、
自分で伏線を回収したい方はこちらで折り返してください。

では、はじめます。

「楽園の烏」 阿部智里 著 
2020年9月3日に単行本、そして2022年1
月5日に文庫本が発売。
八咫烏シリーズの7作目となり、第二部のスタートと位置付けられている。

舞台は「弥栄の烏」から20年後の現代から始まります。
この間の20年間にとんでもないことが多々起こっているのですが、読者は知ることもなく話は進んでいきます。
「楽園の烏」の後に続く、「追憶の烏」、「烏の緑羽」、「望月の烏」を順に読み進めた方は、「楽園の烏」がどの時点を描いているのか勘づくことになります。
「望月の烏」読了後の私としては
弥栄の烏→追憶の烏→烏の緑羽→・・・→楽園の烏
という順です。
「烏の緑羽」から「楽園の烏」までの間の、各陣営のストーリーは今後描かれていくのではと妄想しています。

「楽園の烏」の表紙をご覧いただくと
室外機のある建物の間を人間が駆け抜けていく奥に山内が見え、その傍らには夕顔が咲いています。
朝顔ではなく、夕顔だろうというのは読み進めていくうちに気づくことになりました。

プロローグ
登場人物二人のやり取り。
誰と誰なのでしょうか。
「一度死んで、生まれ変わるしかなかった。」
この生まれ変わるというのは、
肉体的に、なのか、精神的に、なのか。


本章は、本作の主人公である安原はじめが父の遺言を知るところから始まっていきます。
山内を内包する荒山を父から相続した安原はじめ。
『どうしてこの山を売ってはならないのか分からない限り、売ってはいけない』という遺言付きで荒山を相続したのですが、相続後すぐ、複数の人間から山を売らないからと話を持ちかけられます。
現代における荒山の所有権を得たい雪哉陣営、いや博陸侯雪斎陣営の差し金でしょう。笑い方が全く同じと表現されていますが、私は勝手に垂氷郷で強さ賢さを隠して生きてきた雪哉の表情を思い浮かべてしまいます。

そこで安原はじめは白いワンピースを着た美しい女性と出会います。彼女は自分のことを幽霊と称しますが、正体は澄生と思われます。
澄生は、元山内衆で奈月彦の側近である澄尾と西家の真赭の薄の子どもになりますが、その正体は奈月彦と浜木綿の娘であると、雪哉は気づいています。
正当な宗家の血を引く娘ですが、身を隠して生きてきたのでしょう。
雪哉は澄生の戸籍について、奈月彦が暗殺される前から用意されていたと推測しています。奈月彦の後継者を巡った争いの中、姿を消した浜木綿と娘。その後地方を転々と逃げ回った後、西家を後ろ盾にしつつ、官吏登用試験を受け落女として中央に還ってきた澄生の生き様は今後描かれることでしょう。

しかし彼女は、望月の烏の中で、博陸侯雪斎による政治を批判して、凪彦の心をかき乱し、その後滝に身を投げています。(だいぶ省きましたが、間違ってはないはずです。)
この時死んでいなかったのですが、どういうことやら南家を味方につけて、天狗と手を結び現代にやってきたようです。

南家は、奈月彦の死後は東家と肩を組んで、凪彦を傀儡とした博陸侯雪斎の政治を支援しているように見えますが、現代との通行口を管理しているのは南家であることを考えると、南家の当主融が二枚舌なのか、南家の中に浜木綿を支える一派がいるのか、なにかしら動きがあることが想像できます。長束陣営が南家の娘と通じている様子から、今後南家の内情も描かれるでしょう。

安原はじめは、幽霊のことを
『夜空のような瞳をしていた』
と表現しています。奈月彦の血が流れているのでしょうね。

幽霊は、安原はじめの父に、『昔ご恩を受けたことがある』と言っていますが、一体どのようなご恩なのでしょうか。気になります。
幽霊が安原はじめを連れて逃げていく中、追いかけてくるのは3本足の烏、八咫烏です。
博陸侯雪斎陣営に、優秀な人材がたくさんいるのかしら。

幽霊の目的はなんでしょうか。荒山の所有権が、山内に渡ると、特に博陸侯雪斎に渡ると何かまずいのでしょうか。
山神と猿との過去のいがみ合いの結果、山内にはほころびが生じ、山内は今のままでは崩壊してしまう可能性があります。真の金烏である奈月彦が生きている間は、その力によって繕われてきましたが、奈月彦の死後、山内のほころびは拡大の一途を辿っていることでしょう。
博陸侯雪斎は、山内の崩壊を食い止めるために荒山の所有権を得ようとしています。
しかし、幽霊はそれを阻もうとしています。
望月の烏で描かれた澄生と博陸侯雪斎の舌戦を見るに、彼らの政治思考は真逆ですが、山内の崩壊を防ぐ目的は同じはず。雪哉の方が、山内の崩壊に対して焦っているように見えましたが、奈月彦の娘である澄生が知らないはずありません。

やり方が違うのでしょうか。
安原はじめを連れて荒山へ向かう幽霊=澄生の想いはこう綴られています。

「私はなんとしても、私と私の大切な人たちを殺したものをこの世から滅ぼさなければなりません。」

私は、これが第二部のテーマではないかと考えています。

その1はここまで。引き続き「楽園の烏」を読み返しながら、「望月の烏」へ思いをはせていきます。

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