見出し画像

【声劇台本】天然ヒットマンズ~Fox Chase~


天然ヒットマンズ~Fox Chase~(フォックス チェイス)

湿った暗黒の夜空
街の中を1人歩く殺し屋「ナンバー10(テン)」は、とある人間、「フォックス」を探していた

天然ヒットマンズの続編です。前作を知らなくてもいい内容です
4人不問
20分程度のコメディ
雰囲気とシナリオの展開を崩さない程度の言い換え・アドリブは可
良かったらどうぞ


ヒデじい様の声劇台本置き場にも置いてあります



キャラクター



・殺し屋

今回の標的である「フォックス」を探しに、バーへとやってきた
裏社会組織「A・H・O(エー・エイチ・オー)」所属
通称「ナンバー10」

・用心棒

フリーの殺し屋
元「BA.k.A(バクア)」の組織メンバーで、「タイガー」という呼称がある
フォックスとは知り合い

・諜報員(ちょうほういん)

通称「フォックス」
ハニートラップなどを得意とする
「BA.k.A(バクア)」に所属している
所属イラストは女性ですが、性別不問。オカマでも可


・マスター

バー「airhead(エアヘッド)」のマスター
仕掛人の取引相手であり、バクアと契約している仕事の斡旋業者
性別不問
(絵は若年ですが、中・老年でも可。ご自由に)


シナリオ本文

0:湿った暗黒の夜空、その下に、黒いスーツを身にまとった者が1人
 
殺し屋:……今日は月がよく光る
 
殺し屋:さて、目的の場所はここか……情報によれば、裏稼業の人間が集まる、と……
 
殺し屋:……行くか
 
0:殺し屋はあるお店に入った
 
殺し屋:随分と賑やかな場所だな
 
殺し屋:(店員が来る)……ん? ……ラーメン屋? バーじゃないのか?
 
殺し屋:……失礼した
 
0:殺し屋はラーメン屋から出る
 
殺し屋:……隣か
 
0:殺し屋は隣のお店に入る
 
マスター:いらっしゃいませ
 
殺し屋:すまない、初めてなもので
 
マスター:えぇ、見かけない顔ですから、そうかと
 
マスター:ご注文は?
 
殺し屋:軽めのやつを、少し……
 
マスター:申し訳ありませんが、今お酒を切らしていまして
 
殺し屋:そうなのか?
 
マスター:ええ
 
殺し屋:後ろの酒棚(さかだな)は?
 
マスター:これは、演出のための飾りですよ。中には何も入ってません
 
殺し屋:……なるほどな
 
マスター:もし水でよければ
 
殺し屋:構わない
 
諜報員:ふふ……びっくりするわよねぇ、ほんと
 
0:ふと、カウンターの隅から声がした
 
殺し屋:いつの間に?
 
諜報員:最初からいたわ
 
殺し屋:あんたは?
 
諜報員:常連よ
 
マスター:お待たせしました。こちらをどうぞ
 
0:殺し屋は出されたお水を飲む
 
殺し屋:うまいな、これ
 
マスター:ありがとうございます。ちなみにこちらは水道水ですが、お店の雰囲気も違えば、味も変わるというものです
 
殺し屋:……そうか
 
諜報員:それで、あんたは何しに来たの?
 
殺し屋:ある人物を追っていてな
 
諜報員:どんな人?
 
殺し屋:「フォックス」を知ってるか?
 
諜報員:知らないわねぇ。山で探して来たら?
 
殺し屋:そういう意味じゃない
 
マスター:ふふ……狐さんも冗談がお上手だ
 
諜報員:ちょっと!
 
殺し屋:……狐さん?
 
マスター:……あっ
 
殺し屋:お前がフォックスなのか?
 
諜報員:……バレたら仕方ないわ。狐は本当に居るってね
 
殺し屋:こんな近くに居たとは、探す手間が省けたな
 
0:入口から別の人物が入ってくる
 
用心棒:なんだなんだ、知らない間に雰囲気が変わって、驚いたぜ
 
用心棒:しかも……よく見たら知ってる顔が、ちらほらと
 
殺し屋:お前は……!
 
用心棒:よう、殺し屋。そして……
 
諜報員:っ! タイガー!
 
マスター:お知り合いで?
 
諜報員:ええ……
 
用心棒:久しぶりだな、狐
 
諜報員:まさか、あんたもここにやってくるなんてね
 
マスター:察するに、味方ではなさそうですね
 
諜報員:以前はそうだったわ。でもおかしいわね……こいつには何にも教えてないはずだけど
 
用心棒:そりゃ、行きつけのラーメン屋だからな
 
殺し屋:……ん?
 
用心棒:なんだよ
 
殺し屋:ラーメン屋は隣だぞ
 
用心棒:……そうなのか?
 
マスター:ここがラーメン屋にみえると?
 
用心棒:……はぁ、なるほど。雰囲気が変だと思ったら、そういうことか
 
諜報員:あんたもここに来るなんてね……
 
マスター:偶然とは、糸が絡むように、もどかしいものですな
 
用心棒:というか……殺し屋。なんでお前、ここに居るんだ? 休日にパーッと一杯やりたかったのか?
 
殺し屋:いや、フォックスを探しにな
 
殺し屋:ここにいるとは思わなかったが
 
用心棒:なんだよ、顔も知らねえで探してたのか? なんで分かったんだ?
 
殺し屋:そこのマスターが、丁寧に教えてくれてな
 
用心棒:親切だなぁオイ
 
マスター:ありがとうございます
 
諜報員:褒められてないわよ、あなた
 
用心棒:しっかし、人気者じゃねえかフォックス。こいつにも狙われるなんざ
 
諜報員:おだまり。あんたがここに居ると、喰われそうで嫌だわ
 
諜報員:だから、その獰猛(どうもう)な牙をしまって、大人しくラーメンでもすすっていればいいのに
 
用心棒:却下だ。この状況がどうにも面白くてなぁ。飯は後回しでいい
 
殺し屋:……ラーメンか
 
用心棒:今度、喰うか?
 
殺し屋:いや、その
 
用心棒:なんだよ?
 
殺し屋:さっき、ラーメン屋とここを間違えてな
 
用心棒:おいおい、お前もか?
 
殺し屋:ああ。ボーっとしていて、看板も見ずに入ってしまった
 
用心棒:へっ、その間抜けなところ、相変わらずだ
 
0:用心棒は席に座る
 
用心棒:そしたら……せっかく来たんだ。とびきり美味い酒を一本……
 
マスター:申し訳ございませんが、現在、お酒を切らしております
 
用心棒:あ? ないのか? 
 
マスター:お水でよければ、こちらをどうぞ
 
用心棒:はぁ、まいいや。さんきゅ。(水を飲む)……美味いな、これ
 
殺し屋:それ、水道水だぞ
 
用心棒:えっ?
 
諜報員:ふふ……そのオマヌケなところ、変わってないわね、タイガー
 
用心棒:うるせえ
 
0:水を飲み干したあと、マスターをちらっとみた
 
用心棒:……というか、見たことない顔だな、あんた
 
マスター:私ですか?
 
用心棒:さっきの様子からして、フォックスと手を組んでるようだが
 
マスター:ええ。あなたが去った後に、仕事の契約をしたものですから。顔が分からないのも当然です
 
殺し屋:その仕事場が、ここか
 
マスター:そう、仕事の斡旋です
 
用心棒:金に困ってんのか、お前ら?
 
諜報員:違うわ。この人のほうが、高くていい仕事をくれるものだから、ね
 
マスター:こちらこそ、ありがとうございます
 
殺し屋:そうか、大体は分かった。……なら、やることは一つだ
 
0:そう言って、殺し屋は席を立つ
 
マスター:おや。急に立ち上がって、どうされましたか?
 
殺し屋:俺の目的を、分かっていないわけじゃないだろう
 
マスター:マナーの悪いお方とは、思いませんでしたが
 
諜報員:あぁ……そういうこと。もう少しゆっくりすればいいのにね。A.H.O(エー・エイチ・オー)の殺し屋さん
 
用心棒:はは! なんだ、マトにされてんじゃねえか
 
マスター:争いごとはご法度ですよ
 
殺し屋:今更、何を言っている
 
マスター:ここは嗜(たしな)む場所であり、街のざわめきから離れた、腰を落ち着ける場所でもある。そして今、あなた以外にもお客様がいる。出来ればそういった態度は避けていただきたい
 
殺し屋:残念だが、あんたも同業者なら、俺にその道理は通用しない
 
マスター:おやおや……
 
殺し屋:諜報員の「フォックス」、俺達の組織は、お前をターゲットに選んだ。お前の噂は流れてきている。いずれ厄介な存在になると踏んで、探していた
 
諜報員:あら、そうなの。違う意味でモテちゃったわね
 
マスター:やれやれ、面倒な事になりそうだ
 
諜報員:心配しなくても大丈夫よ
 
殺し屋:どういうことだ?
 
諜報員:うっふふ……「飲んでしまった」ものには、気をつけないと
 
用心棒:うぐっ……!
 
殺し屋:用心棒!? ……っ!?
 
0:用心棒と殺し屋が少し体勢を崩す
 
マスター:ふふ……おや、急にどうなされましたか……?
 
諜報員:何を笑っているのよ、マスター。あなたも加担している癖に
 
マスター:いえいえそんな。それにしても、仕込むのがお上手なお方です、流石、フォックス
 
用心棒:コスい真似してくれたなぁオイ……!
 
諜報員:残念ね、タイガー。そしてありがとう、マスター。今回は私の手柄じゃなくて、あなたよ
 
マスター:いえいえ、私は何もしていませんよ
 
諜報員:あははは!
 
マスター:ふふふふ!
 
0:2秒ほどの間
 
諜報員:……おかしいわね
 
マスター:ん? 
 
諜報員:粉、渡してなかった?
 
マスター:いいえ、もらってませんが
 
諜報員:……ちょっと待って。
 
0:ポケットを探る諜報員
 
諜報員:……あっ
 
マスター:どうされました?
 
諜報員:持ってきてなかったわ、粉
 
用心棒:あぁ……?
 
殺し屋:なんだと?
 
マスター:ふふ、それは残念でしたな。お二人とも上手くいけば夢の中だったものを
 
殺し屋:じゃあ、何も入れてないのか?
 
諜報員:ええ
 
用心棒:でも殺し屋……お前の様子、何かおかしかったぞ?
 
殺し屋:お前も、人の事が言えないだろう
 
用心棒:いや、俺は、何となく仕込まれてんじゃねえかと思って……慌てていただけだ
 
殺し屋:そうなのか?
 
用心棒:ああ。お前は?
 
殺し屋:……俺も、薬を飲まされたと思って、慌てていたんだ
 
用心棒:……。
 
殺し屋:……。とりあえず、無事のようだな
 
諜報員:ちっ。仕方ない……だったら、実力行使といこうじゃないの
 
用心棒:させねえよ
 
0:4人は素早く、自分の銃を取り出した
 
マスター:ふうむ。4人ともぴったりでしたな。動きに隙が無い
 
用心棒:なんだよ、しっかり構えてんじゃねえか、マスター。そっちもデキる奴とは
 
殺し屋:バーテンダーに銃は似合わないぞ?
 
諜報員:それは各々の感性でしょうに。自分の命が危ないからって、無駄なジョークは辞めない?
 
殺し屋:ジョークなら、ピンクに染まったその銃を降ろしてほしいものだな
 
諜報員:いい色でしょ? これ
 
用心棒:はっ、ロマンたっぷりな色に染めちまって、よく仕事ができるもんだぜ
 
マスター:ふふ、このような状況でも、余裕のある御方ばかり。飽きませんな
 
諜報員:というか、タイガー。あなた、そっちの味方するの?
 
用心棒:はは! てめえらに味方しても、つまらなそうだからなぁ!
 
諜報員:退屈が嫌で、自由になった虎ってわけ? まぁ凶暴なこと、アフリカにでも行ったら?
 
殺し屋:いいのか、用心棒? 俺の味方をして?
 
用心棒:借りがあるからな。爆弾装置の
 
殺し屋:そんなこともあったな
 
マスター:知らない間に、お二人とも、随分と交友関係が出来ているものですな。さしずめ、私も人の事は言えませんが
 
諜報員:ただ、今日でおしまいよ。悪いけど、虎って野蛮だから嫌いなの。それと手を組んでるA.H.O(エー・エイチ・オー)の殺し屋も。ま、あたし好みのいい顔してるけどね
 
殺し屋:容姿と中身は別、か。
 
殺し屋:嘘を得意としている奴が、言う事とは思えないな
 
諜報員:ごめんなさいねぇ。私、人をハメるのが好きだから
 
用心棒:じゃあとっとと撃ち込んでこいや
 
マスター:そんなこと言わずに。そちらから来なさいな
 
殺し屋:少しでも動いたら、撃つと?
 
諜報員:どうかしらねぇ?
 
0:しばらくの沈黙 3秒くらい
 
殺し屋:用心棒、先に撃て
 
用心棒:お前が行けよ
 
殺し屋:……いや、その
 
用心棒:あ? なんだよ
 
殺し屋:……弾を、入れ忘れた
 
用心棒:なっ……
 
諜報員:馬鹿ねぇ! 自分からバラすなんて! じゃあ、さよなら~!
 
0:2秒ほどの沈黙
 
諜報員:……ん?
 
マスター:フォックス?
 
諜報員:ふふ。……弾を入れ忘れたわ
 
マスター:えっ?
 
殺し屋:用心棒、今だ
 
用心棒:……殺し屋。それは、できねえ
 
殺し屋:? お前まさか、裏切るのか?
 
用心棒:いいや違う。……はは。俺の銃もな、入ってねえんだわ
 
殺し屋:何……?
 
用心棒:どうにも少し軽いなぁと思ったら、今思い出したぜ、畜生
 
諜報員:なら、こちらの勝ちね。マスター、やっておしまい
 
マスター:……
 
諜報員:ちょっと、どうしたのよ?
 
マスター:分かりませんか?
 
諜報員:まさか……
 
マスター:ふふふ……私も、構えたのはいいんですが、弾が入ってないのでどうしようかと思っていたんですよねぇ……
 
諜報員:何ですって……! くそ、これじゃ何もできないじゃないの
 
マスター:振り出しに戻りましたね。さて、どうします?
 
諜報員:だったら……退散あるのみね……!
 
マスター:まぁ、そうするしかないようですな
 
0:諜報員とマスターは隙を見て、カウンターの裏口から逃げようとする
 
殺し屋:待てっ!
 
諜報員:動かない方がいいわよ
 
用心棒:落ち着け、殺し屋
 
殺し屋:っ、なぜ止める?
 
用心棒:あの野郎、おそらく何か仕掛けてやがるな、カウンターから向こう側に、な
 
殺し屋:罠を仕掛けているのか?
 
用心棒:そういうことだ
 
マスター:流石ですね、フォックス。知らない間に仕掛けていたとは……
 
諜報員:ふふふ……。あれ?
 
マスター:どうしました?
 
諜報員:作動しないわね
 
マスター:えっ?
 
諜報員:あぁ、どうも故障みたいね、これ。……逃げるわよ!
 
用心棒:殺し屋!
 
殺し屋:分かってる、入口から出て、反対側から足止めする
 
用心棒:ああ。……いや、待て。このまま追いかけたほうがいいんじゃないか?
 
殺し屋:裏口には、罠があるんじゃないのか
 
用心棒:さっき壊れてるって、言ってなかったか?
 
殺し屋:そうだったな、追いかけよう
 
0:殺し屋と用心棒は、裏口に出るが、二人の姿はない
 
殺し屋:……くそ、見当たらない
 
用心棒:手あたり次第探すしかねえな。そう遠くには行ってないだろ
 
殺し屋:お前と手を組むことになるとはな
 
用心棒:狐よりも、てめえらのほうがまだマシだ。借りは返すぜ
 
殺し屋:よし、手分けして探すぞ
 
0:殺し屋と用心棒は二手に分かれた
 
0:しばらくして
 
殺し屋:……どこだ、ここは?
 
用心棒:畜生、どこ行きやがった……
 
殺し屋:どうだった、見つかったか?
 
用心棒:駄目だ、見つからねえ。そっちは?
 
殺し屋:もうさっぱりだ
 
用心棒:さっぱり?
 
殺し屋:迷子になってしまってな。道が全然分からない
 
用心棒:ったくよ……
 
殺し屋:お前は、この辺り、分かるのか?
 
用心棒:いいや、全くだ
 
殺し屋:ラーメン屋によく行ってるんじゃなかったのか? 
 
用心棒:それとこれとは別だろ
 
殺し屋:……そうなのか、それなら仕方がないな
 
用心棒:しかし、どうやって探すよ? 
 
0:そこで、殺し屋は、あるものを見つける
 
殺し屋:ん?
 
用心棒:どうした? ……あのビルに、何かあるのか?
 
殺し屋:あぁ……あれを見てみろ
 
用心棒:んん……?
 
0:
 
0:
 
マスター:こっちです
 
諜報員:……本当にこっち?
 
マスター:あっいや、反対でした。失礼
 
諜報員:大丈夫?
 
マスター:ええ。フォックスこそ、大丈夫です?
 
諜報員:私はいつも通りよ
 
マスター:それは良かった
 
諜報員:にしても、用意がいいのね
 
マスター:もしもの為に、準備はしておりますゆえ
 
諜報員:ありがと。ただ……はぁ。このまま組織にかえったところで、何て報告するか。始末書をかかされるのがオチね、きっと
 
マスター:フォックスの組織……「BA.K.A(バクア)」も、「A.H.O(エー・エイチ・オー)」に引けを取らない組織と聞きました
 
諜報員:そう、愉快な愉快な動物ちゃんばっかりよ。タイガーも面白い人だったけど、どうしちゃったのかしらね、外に出ちゃって
 
マスター:ふっ。同じ考え方を持った動物は、一緒にいないということですね
 
諜報員:そうね。ふふ……
 
マスター:着きました、このビルの屋上でお待ちください。私も向かいますゆえ
 
諜報員:任せたわ
 
0:
 
0:ビル屋上 しばらくして
 
諜報員:さぁ、そろそろ来る頃かしらね
 
諜報員:それにしても、いい眺めねぇ。お月様がまぁ綺麗なことで
 
殺し屋:それも見納めだ
 
0:諜報員の後ろで声がした
 
諜報員:あら、びっくり
 
用心棒:1人で月なんか浴びて、どうしちまったよ?
 
諜報員:待ち合わせよ
 
殺し屋:マスターはどこだ?
 
諜報員:さぁ? 知らないわ
 
用心棒:そんなわけねえだろ
 
諜報員:もう、貴方たちばっかり質問しちゃって。こっちからも一つくらい聞かせてよ。……どうしてここが分かったの?
 
殺し屋:お前が染めた銃が、落ちていたものでな
 
0:殺し屋がピンク色の銃を諜報員に投げた
 
諜報員:っ、あれ? いつの間に……
 
用心棒:入口にあったぜ。このビルの、な
 
諜報員:……なるほど。ふふ、随分と分かりやすいヒントを落としていたようね、私
 
殺し屋:おかげで探す手間が省けた
 
諜報員:しかし、もうちょっとだったわね
 
殺し屋:どういう意味だ?
 
諜報員:こういうことよ
 
用心棒:ん? なんだこの音?
 
殺し屋:……ビルの下からか?
 
0:ビルの真下から、ヘリコプターが現れた
 
マスター:間に合いましたね
 
諜報員:グッドタイミング。やるじゃないの
 
殺し屋:っ、これを待っていたのか……!
 
用心棒:逃がすか……!
 
殺し屋:っ!? 待て!
 
マスター:おやおや、気づきましたか?
 
マスター:って分かりやすいか。……これだけ大きな機関銃を、備え付けていればね……!
 
用心棒:っ、なんだあのバカでけぇのは!
 
殺し屋:用心棒! ヘリから離れろ!
 
用心棒:くっ!!
 
マスター:ふふふ…ハハハハハハ! さようなら! そして、地獄へ行ってらっしゃい! これで全員、皆殺しです……!
 
用心棒:あの野郎、えらいもの持ってきやがって!
 
殺し屋:物陰に隠れろ! 今はチャンスを伺うんだ……!
 
諜報員:さぁ、とっととかましてちょうだい!
 
マスター:……あれ?
 
諜報員:どうしたのよ?
 
マスター:弾、入ってませんね、これ
 
諜報員:えっ?
 
殺し屋:っ……あいつら、撃ってこない? ……もしかしたら
 
用心棒:こいつはぁ……もしや弾切れか?
 
殺し屋:よし、今だ!
 
用心棒:っ、何やってんだ! 相手は機関銃だぞ!? 
 
殺し屋:弾がないなら問題ないだろ!
 
用心棒:……あ、あぁ、そうだな!
 
0:殺し屋と用心棒は、ヘリの前に立ち、同時にコックピットへ銃を向ける
 
マスター:しくじりましたか……
 
諜報員:いいや、大丈夫よ
 
マスター:どういう意味ですか?
 
諜報員:互いに銃を向けあった仲でしょ?
 
マスター:……あぁ、そうでしたね
 
0:殺し屋と用心棒は引き金を引くが、一向に弾が出ない
 
用心棒:あっ、くそ……そうだった
 
殺し屋:すっかり忘れていた、弾切れだ
 
マスター:間一髪でしたな
 
諜報員:さぁ、マジの退散よ!
 
マスター:では、ここで失礼いたします
 
殺し屋:ここまでか……!
 
諜報員:バイバイ~、お二人さん。刺激的な夜だったわ。また遊びましょ~!
 
0:ヘリコプターはそのままビルを離れていく
 
用心棒:ちっ、逃がしたか
 
殺し屋:そうだな、これ以上は追えない
 
用心棒:すまねぇな。何もできなくてよ
 
殺し屋:いいや、構わないさ。夜の涼しさで、どうでもよくなった
 
用心棒:へっ、そうかい。じゃ、景気良く、ラーメンでも食いに行くか?
 
殺し屋:賛成だ
 
殺し屋:……ただ
 
用心棒:なんだよ?
 
殺し屋:どこにあるんだ
 
用心棒:……ほんとだな。そういや、ここ、どの辺りだ?
 
殺し屋:……分からん
 
用心棒:……まぁ、探せば見つかるだろ
 
殺し屋:ふっ。湿った暗黒の夜空は、まだ続きそうだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?