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映画「シェアザペイン」を全人類観ろください


 私はたまに「観てくれ芸人」になる。

 年間60〜80回くらい劇場で映画を観る。その中で特にハートにズキュン! してしまった作品を人様に観て欲しくてたまらず、複数あるSNSアカウントの名前をすべて「@××観てくれ」にしてみたり「観てくれ!! 金なら俺が払う!!!」とやらしく実弾をチラつかせながら迫ったりしてしまうのだ。どうだあかるくなつたろう。

 で、先日、久しぶりに芸人してしまう作品に出会いました。
 それがこちら「Share the Pain(シェアザペイン)」です。
https://www.google.co.jp/amp/s/tokushu.eiga-log.com/movie/54900.html/amp

 私はつい最近地方に引っ越したばかりなんですけど、所用(まあJ. GARDEN49に参加するためなんですけど)で数日上京していまして。
 せっかくなので東京でしか出来ないことをあれこれしようと美術館巡りなどを堪能して、そろそろホテルに帰ろうかなーというところで、TwitterのTLに流れてきたんですよね。


「我が国の全ての男子は、初めてのセックス の前に、性交人と呼ばれる成人男子とセックス をしなければならない」という法律がある世界のお話

 というあらすじが。

「は? それなんてBL??」
 と即詳細をあれこれチェックすると、どうやら「挿入される側の恐怖を知るため」に、そういう決まりになっている……という設定らしい。

 実はその日の朝、私は集団強姦事件の再捜査に関する署名をweb上でしたばかりでした。

http://chng.it/8PmJJdwnpH

 この記事の中で、犯人はことが終わった後こう言い放ったとされています。

「3人分気持ちよかったんだからいいだろ!」

 いやいやいや。
 待て待て待て。

「射精」という明確な終わりがあり、多少強引だろうとある程度快感があるだろう男性と違って、女が強姦で気持ちいいわけねえだろ。

 むしろ合意の上でも、夫婦間でも、よっぽど性癖のすり合わせがうまくいってない限り、10回中8回くらい気持ちいいフリしてやってんだよ!!!!!!! 
 
 ばーーーーーーーーーか。

 常々思っておりました。
 大前提として、男はそこをわかってなさすぎるのでは??
 加えて、万が一妊娠したら、堕すにしても産むにしても女ばかりが肉体的社会的にリスクが多すぎる。
 高校生だった場合、なぜか女の子だけが非難されて、男の方は転校してあっさり人生やり直しなんて、よくある話ですよね。

 ノーリスクで出してはい終わり〜の男とSEXの重さが違い過ぎるんだが??

 なので「シェアザペイン」の「挿れらる側を男が体験してからでないと、通常のSEXができない」という設定は「これこそ私の求めていた制度!!」だったのでした。
 しかもたまたま東京にいるときにやってるなんて、これはもう観ろっていう神の思し召し。

 そして本編観賞後の感想。
「めっっっちゃくちゃ良かった……全国の高校に教材として配ったほうがいい……というか、全人類観ろ!」

詳しく語っていきます。(盛大にネタバレするので、新鮮な気持ちで観たい方はスルー推奨)

 高校生のユウキは、彼女のアヤカとやりたい盛り。
 でもこの世界で男には「リード」と呼ばれるチップが埋め込まれていて、性交人との行為(作中では、SPを受ける、と表現される)を済ませてからでないと、行為に及ぶことができない。
 ちょっと濃厚な抱擁などしようものなら、電流がビリビリっと流れて、スマホのアプリに「SEXはSPを受けてからにしようね♡」的なメッセージが届く。(この辺細かくて好き)

 この世界、女の子にとって彼氏がSPを受けてくれるということは「自分も痛い思いをしてまで、私と真剣に付き合おうとしてくれている」という一種のバロメーター。
 アヤカは無邪気に「友だちの彼氏はSP受けてくれたって、いいな〜」みたいなことを言ってきます。

 お互い好き同士だし、この世界では当たり前のことなんだから、さっさと受ければいいのに、なぜユウキはしないのかというと、彼は「反SP」なんですよね。
「なんで男ばっかりそんな目にあわなきゃいけないんだ! 児童虐待だろ!」と思ってる。SNSに裏垢を作って、日々そんなことを投稿している。ケツの穴の小せえ野郎だな!(文字通り)

 そんな折、とっくにSP済のバスケ部のイケメン、ヤマダパイセンとアヤカが楽しそうに話しているのを目撃。パイセンがアヤカを狙っているらしいと焦るユウキは、やっとSPを受ける決意をします。

 とられそうになってやっとですよ。ケツの穴の小せえ野(数分ぶり二度目)

 ここから当日までの描写がコミカルで面白い。
 少しでも痛くないようにと「性交人の中で一番小さい人は誰ですか」と問い合わせてみたり。
 どのくらい痛いんですか? とYahoo知恵袋的なものに書き込んでみたり。
 両親との食卓で
「いや〜ユウキもついに大人の仲間入りだな!」
「お赤飯炊こうか」
 なんて言われちゃったり。
 こういうこと、思春期の一番繊細なときに親に言われたくないよね。

 まあ女の子は普通に言われるんですけどね! 少しは辱めを受けろよ男も。

 部屋でひとりになったユウキは、砕石位(両足を自分で抱えておっ広げる、あれ)で自分の✳︎の具合を確かめたりなどします。
 そこへ洗濯物を持ってお母さんが……!
 ✳︎に夢中で気がつかないユウキに、お母さんは無言で手を握りしめ「ガンバ!」と念を送るのでした……(つらい)

 さあ、そしていよいよ性交人の登場です。
 性交人、スポーツカーに乗って自宅まで迎えに来てくれます。
 ユウキの緊張をほぐすかのように、何気ない日常話などをにこにこと穏やかにふってくれます。

 ファー!
 スパダリ !
 さては貴様、長引く不況によりBL界からは姿を消して久しい絶滅危惧品種、スパダリ だな!?!?

(上映後の監督トークによると、この世界で性交人はアイドルのような存在らしいです。SP法に対するマイナスイメージを少しでも払拭するため、こざっぱりしたルックスの人が選ばれたり、男の子が喜ぶスーパーカーに乗ってたりする)

 そんなスパダリ 性交人の運転で、SPを受けるセンターへと向かうふたり。
 受付でローションを渡されるんですが、熨斗のかかった桐箱に入ってる(笑)
 観てる分には面白いけど、思春期のユウキの心をごりごり抉ります。熨斗て。

 そこでふと疑問を覚えるユウキ。
「SP受けるときってリードどうするんですか? 先にはずすんですか?」
「あとあと。大丈夫、最中はリモコンで切っとくから。これナイショね。この辺の子はおとなしいから大丈夫だろうけど、昔それを知ってリモコン盗もうとした奴がいて、騒ぎになったから」

 あら、電流ビリビリ、切れるらしいですよ。
 まあそうなったら、我らがケツの穴小さい王、ユウキがどう考えるかなんて、推して知るべしですよね。

 リモコンでリードを解除されたあと、トイレと嘘をついて抜け出します。
 アヤカには「今終わった」と連絡して……(クズオブクズだ……)

 生徒会室で落ち合うふたり。
 アヤカは自分のためにSPを受けてくれたという感動でうるうるです。
 今まではできなかった熱い抱擁。
 それだけで心身共に満たされてーーと思いきや、ユウキ、あせあせとアヤカの服を脱がし始めます。
「えっ、待って、こんなとこじゃやだよ」(そりゃそうだ!)
 しかし、違法なことをしているという負い目も手伝ってか、ユウキは聞く耳持ちません。
「なんで、アヤカだって早くやりたかっただろ」

 うわーん。
 最っ低。

 ついにアヤカを冷たい床に押し倒すユウキ。
「やだ!」
 激しく抵抗するアヤカに、激昂したユウキは言い放つ。

「いいよなおまえは。やりたいときに
やりたい奴とやれて!!」

 ……あー。
 ああー。

 いやあ、あのね。
 この瞬間まで私、本当の本気で「SP法素晴らしい! 現実でも導入されりゃいいのに!」って思いながら観てたんですよ。
 ユウキがびびったり苦しんだりするたび「ははっ、ざまあ! これが女が女に生まれたってだけで日々味わってる苦しみだよ!」って。

 でもここで、そんな自分の醜さを、ユウキを通して見せつけられるっていう……「痛い思いもせず、やりたいときにやりたい奴とやれて」っていうのは、私が常に男性に対して思ってることなのですから……


 うあーん。
 抉られる!!
 でも名作!!!


 ユウキがこのあとどうなるのか、ぜひ劇場で確かめてください。

http://www.cinemarosa.net/lateshow.htm

 20:45からのレイト一回のみ、10/23までなのでなかなか厳しいかもしれませんが、役者さんたちの演技もみんな自然で素晴らしく、短編ながら世界観にどっぷりつかれます。

 ジェンダーや愛やSEXについてあらためて考える機会になって、一生忘れない作品となること、請け合い。

 ……マジでこれもっと全国で上映して欲しいし、円盤化もして欲しいので、支援できるよう、ちょっと油田を掘り当てにでも行ってきます。
とにかく、全人類観ろ! 

資料の購入や取材費に使わせて頂きます。