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マウスピース考/対象:103basso A-type


やあ、あまぎつねである。皆元気だろうか。


初投稿であるが仰々しい挨拶はしない。これから掲載するだろう記事はあくまで自分のため、備忘録や思考整理を主な目的として書き進める。

最初に断っておく。乱文稚拙である。失敬。



今回の悩みは目下進行中の企画であるバスフレンチホルン(以下BFH)開発におけるアーキタイプ、103basso替え管仕様に適応するマウスピースの設計についてである。
現段階で当企画の詳細は伏す。
直の製作者側に迷惑を掛ける訳にはいかない。


何が悩ましいか、それを整理したい。

とにかく考慮しなければいけないことが多い。

・まず管長がB♭basso-C basso/E♭-Fのフルダブルとなる。
一般のB♭(alto)管は使用しない。

・それ故に楽器の重量は増大する。また剛性にも当然変化があると考えられる。

・ボアやベル、マウスパイプは据え置きである。
備考として当該個体はノイネッカーパイプの仕様である。
またベルはデュルク製H.H黄ラッカー。

・演奏したい音域は一般的なダブルホルンの1オクターブ下を目安とする。
但し4オクターブ以上可奏。ホルンをホルン足らしめる要素としてこれは譲れない。

・また音色についての要求は非常にシビアである。
基とするのはあくまで柔らかく豊潤、温かいダークなもので、ブラッシーで明るく割るようなトロンボーン方向なものは避ける。
しかし基として避けるのであって、それが出来ないという事にはしたくは無い。音色には幅を持たせたい。

・音量はホルン12重奏で充分に最低音パートを支えられるような程度に設定したい。ベル先120db以上だろう。曖昧な表現になるが仕方が無い。そもそも遠達性があることが前提である。



さてここで過去の事例を参照してみよう。

YHR-85VDとリンゴ飴はとても良い組み合わせで、個人が設計したとは思えないポテンシャルを発揮したと言ってもいいという感想を持っている。自画自賛だが何年も掛けて設計したのだからそうであってもらわねばなるまい。

この成功には前提として、10年以上使い続けた楽器である85Vを対象と捉えたということが大きい。
クセが分かっているどころか自分でクセを付けた楽器であるからして、どこをどのようにすればどのような音が出るのか容易に想像出来る迄に思考は達していた。

従来のマウスピースでは約40~100Hzの周波数が薄く、パリパリとした軽い低音しか鳴らすことが出来なかった。これは物理的な問題だと捉えている。つまり肉体をどのように強化、鍛錬しても克服は不可能だと判断していた。

それを踏まえ超重量級を提案し実行した。
演奏には強い筋肉が必要となるが、鍛えてしまえば鳴らす事は可能。
音量をキープしたまま中低の周波数を強め、且つ振動を非効率化することでブラッシーな鳴りを抑える。同時に音の芯を高音と同じような厚さにし、遠達性を高める。
ついでに4オクターブ以上の演奏が可能だ。


ほぼ狙い通りの結果になった。
これがリンゴ飴というマウスピースの存在である。

細かい事を書けばキリがないので設計上の留意点は省く。



言わずもがな、最大の特長は"重量"にある。
低音を強く鳴らすにはそれに見合う重量が必要である。準じて振動を生み出す力も。

で、

今回のアーキタイプ、まだ重量が幾らになるか分かっていない。当然ながらと言うべきか、完成してから判明する。3kg以上は確定と踏んではいる。

勿論、いくら重量があっても抵抗や振動効率等の要素も複雑に絡み合い"課題"として降り掛かってくるので、一概には言えない。



それらも考慮した上で超単純な足し算をしてみる。意味があるのかは分からない。

85Vが元々約2.4kg+リンゴ飴0.4kg=2.8kgとする。

103は約2.7kgだがベルが重いものに換装されているので2.8kgとしよう。

この時点で85V+リンゴ飴と並んでいる。

手持ちのPHC(W rim/35 Very Deep)で低音を吹いてみると確かに厚みや質はノーマル85Vより太く温かく演奏出来る。内径が違うので音域については触れない。

これで数ヶ月特訓して慣れれば、音質としては85V+リンゴ飴で求めていた状態に近くなることは容易に想像出来た。並ぶことは無くとも。

ここまでは良い。予想と理解可能な範疇である。

ここからが未知。

103の2.8kg+リンゴ飴0.4kg=3.2kgである。


103にリンゴ飴を装着して吹いた時、バランスの悪さが際立った。音質についてはそこまで大きな問題は感じなかった。とにかく重量、重心、そして吹奏感等のバランスの悪さである。
吹けば吹くほどその問題は大きく感じた。恐らくよりVカップの形状にすればある程度解決出来るのではないかという推論は立てた。

重心の悪さはあのスパイダーバルブや楽器そのもののレイアウト、そしてリンゴ飴によって手前に来過ぎである事が分かった。そのような程度であれば解決は可能である。


しかし何よりの懸念は「全体重量が重過ぎるのでは無いか」というものであった。

これは信じたく無かった、考えたくなかった。
他楽器と比較すれば明白だが、特にチューバは重い。重いからこそあの低音が出る。しかしあの楽器は全体的にボアが広く(17mm~21mm)ベルも大きい(320mm~480mm↑)。だからこそバランスがとれているのであろう。


私はボア12.1mmベル310mmの103で、より理想的な低音を発するにはどうしたら良いのかという思考を巡らせずにはいられなかった。
重量を減らしたくないのだ。前述したが、重いがこそ低音はずっしりと強く鳴る。


しかし私はそこでマウスピースの重量を減らそうと決断した。

ただでさえ2.8kgの103に、長い替え管を着けるのである。楽器全体が重くなるのであればその分マウスピースを(リンゴ飴より)軽くしバランスを取るのが良い、という結論に至った。

と言っても最初はリンゴ飴より重くしようとした。笑ってもらって構わないがムキになったという表現が適切かもしれない。重い楽器を鳴らすには更に重いマウスピースでなければならなちのでは。と極端な方向へ思考が走ってしまったからである。

しかしシャンクやマウスパイプへの物理的負荷も含め、考えていくうちに冷静になった。
やはりバランスが重要なのである。きっと。

こんな時に「きっと」等という言葉は似つかわしく無いし適切でも無いだろうが、未知だからこそそうやって自分に言い聞かせるしかなかった。

こうして500g超えのマウスピースは

目標200g代へと大幅な変更になった。
(もっと削らないといけないと思う。)


後々になって考えてみれば500g超の真鍮の塊を振動させるのは並々ならない強靭な筋力が必要だろう。
妥協し方向転換して良かったと心底思う。


そして形状や吹奏感の確認のために樹脂モデルを製作して頂いたのだが、やはりここでも問題が起きてしまう。


ダブルカップの目測を見誤った。
リンゴ飴では比較的緩やかなダブルカップを用いたのだが、103用は内部ショルダーをキツめに設計していた。
しかしそれが直接的な原因かは分からない。
どちらかといえばVカップの開口を16mmに設定したのが細過ぎた可能性の方が高い。
またマウスピースの全長は86.60mmだが、これもあまり良くないらしい。

恐らくマウスピースとマウスパイプが一体であり、充分な管厚(鋼材の厚み)があればそこまで大きな問題にはならない、というかプラスに働くのではと睨んでいるのだが、リムから接合部までが遠い事で振動が逃げるのだ。
樹脂だから、ということも折り込み済で言及している。

これを解決するにはマウスパイプ側から振動を伝達し易くする働きかけを行わねばならない。

とあるフォロワー様とのツイッター内の会話で出した案だが、このような機構が欲しい。


マウスピースを長く設計したのはテーパーを長く取りたいという思惑がある。音程調整だ。
B♭basso管は開放で約540cmである。その分マウスピース~マウスパイプに掛けてのテーパーを緩やかに長くしなければ音程に差し障りが出ると思ったからだ。
また本来であればベルもテーパーが緩やかなものに変えなければならないのだろうがそこまでの予算は手元に無く、また101のベルと着け変えるなどということをすればそれは純粋に103とは呼べなくなるだろう。
そこのラインは個人個人で認識の違いがあると思うが、私としては替え管をリセットすればノーマルの状態に戻ることを今回のアーキタイプの要点としている。

つまり私が吹くのは、あくまで替え管をした103であり、改造した103では無い。


ともかく上記のような課題に直面している。具体案で有効なものはあまり浮かんでいない。
煮詰まっているという状態である。


ついでではあるが今回のリム内径26.00mmについて、85Vには大き過ぎた。103ならそれなりにハマるとは思うが今は手元に無い…替え管製作のため工房に出している。つまり憶測である。

21mmではpedalCを大音量で出すことは叶わなかった。恐らくボアを広げてもかなり難しいと思われた。
24mm程であれば抵抗の少ない楽器には良いかもしれない。しかし103の抵抗を活かすためにはより大きな内径が必要だと感じたのだ。これにはかなり悩んだ。
また別の葛藤もあった。「内径が大きければ誰でも低音を出せるだろう」という観念である。
それは間違いではないが、今私がぶつかっている問題とはその認識と見解の深さが違うのである。

私が目指すところは4オクターブ以上を演奏することであり、低音域を2オクターブだけ特化して出したい訳では無い。
それはフレンチホルンとは言えないと私は考えている。


と持論を展開してみた。今考えている事の2/3程度は言語化出来たかもしれない。しかし荒書きなので読者には上手く伝わらないであろう。申し訳ない。主目的は自身の思考整理や備忘録なのである。

暫くまたマウスピースの設計について頭を悩ます事になるだろう。




次回の記事にも期待はしないでもらって構わない。
需要も極めて尖っているだろう事は認知している。



それでは、また。

あまぎつねがお送り申した。

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