「氷点」天使のような彼女にも悪魔のような顔があった

昔々に読んだ、三浦綾子さんの「氷点」。昼ドラのような展開なのだが、人間の内面の醜さが細かく描写されていて、まだ10代だった私の心を魅了した。

あらすじはこうだ。幼い我が子がある日、通り魔的な犯人により殺害される。子供が連れ去られた時、母親は父親の同僚と不倫めいた(不倫していたわけではない)時間を過ごす為、幼い子供から目を離していたのだ。

父親は当初、当然犯人に怒りを感じていたが、次第に怒りを妻に向ける。そして、犯人の酷い生い立ちを知ったとき、同情すら感じるようになったのだ。そして、父親はある行動に出る…

高潔そうに見える人物ほど、内面の醜さとの落差があるのかもしれない。人は嫉妬や憎しみから逃れられないものなのか。生きている人間がこの世で最も怖いのではないか、そんな感想を昔は抱いたものだった。

だが子供を持った今、改めて読んでみればまた違う感想を抱くのかもしれない。親の立場になって、少しは父親の気持ちに相対できるだろうか。

久しぶりに読んでみようか、感想文を書きながらそんなことを考えていた。


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