2019年をふりかえる - PO支援編

前回の続きです。2019年は個人的にPO支援が大きなテーマでした。PO支援について考えたことをまとめます。

自分にとってのプロダクトオーナー支援

自分は元々エンジニアなので、開発チームと一緒に活動しながらスクラムを導入していくオーソドックスな支援をこれまで行っていました。最初は仕事が終わらない、品質が低い、改善が進まないといった問題が沢山出ていたチームも、少しずつ安定して開発ができるようになってきます。開発チームが安定するにつれて、プロダクトバックログに積まれたアイテムの質が気になるようになり、下記のような疑問が湧いてきます。

「このアイテムを作ると誰が嬉しいんだろう?」
「何を測定すればこのアイテムが価値を提供したことが確認できるか?」
「依頼されたタスクをこなして終わりになっていないか?」
「技術的な改善が少なすぎるのでは?」

端的に言うと、開発はそれなりに回ってるんだけど、加速しきった感じがしなくて、プロダクトバックログを見てもワクワクしないといった状況です。自分はこれはボトルネックが開発チームからプロダクトオーナーに移動したと考えます。このような状況では、プロダクトオーナーと一緒にプロダクトビジョンを再検討したり、プロダクトバックログアイテムの精度を高めるための支援をすべきだと思いますが、そのための引き出しを持っていないことに問題意識を持っていました。

自分はものづくりが大好きで、ユーザーの役に立つ最高のプロダクトを作りたいと常に考えているので、プロダクトオーナーにとっても良き相談相手になりたいと思い、今年はPO支援に意識的に取り組みました。

やったこと

プロダクトオーナーの頭の中を整理・共有し、出てきた仮説を一緒に検証するようにしました。あまり詳細には書けないので、ざっくりと書き出します。

- ユーザーストーリーマッピングを作りリリースに必要なフィーチャを特定する
- ステークホルダーとの議論をファシリテートして建設的な議論ができる場を作る
- リーンキャンバスを使いプロダクトマーケットフィットに向けた仮説を整理する
- ビジネスアイデアについて仮説検証を繰り返し学習を共有する
- インタビューやプロトタイピングを使い、実装前に検証する術を持つ
- OKRとスプリントを組み合わせてスプリントのリズムでOKRをレビューする

参考になった情報

10月に受けたJeff Pattonの認定プロダクトオーナー研修がめちゃくちゃ参考になりました。受ける前はなんとなくやるべきことは見えているんだけど具体的な方法についてあまり見えていない状況でしたが、発見〜実装〜検証といった全体像がうまくフレーミングされて次のアクションが具体的に設定できるようになりました。

他にも同僚が参加したOutcome Delivery Practitioner研修、ワシントンD.C.のAgile Conference、ウィーンのGlobal Scrum Gathering、Product Manager Conferenceなども素晴らしいインプットになりました。

仮説検証は楽しい

複数の研修やカンファレンスで大量にインプットしつつ複数の現場で実践することができたので、初期フェーズから成熟期までそれぞれのプロダクトについてプロダクトオーナーを支援する一歩を踏み出せたと思います。

プロダクト開発は「ビジョンを実現するために何を学習するか」ということを考えて検証し続ける活動で、プロダクトオーナーはその難しい問題に一番正面から向き合う役割だと思います。壁打ち相手になったりファシリテーターになったり一緒に手を動かすことでその活動を支援することは、まさにプロダクト開発の醍醐味でありとても楽しいです。

スプリントレビューでPOからビジョンを伝え、持っている仮説・学んだことを共有するようになると一気に場としての価値が高まり、この学習の共有が大事なのだと改めて感じました。

開発チームをDiscoveryに巻き込め

よくある「POはプロダクトバックログを作る人で、開発チームはそれを粛々と実装するのが仕事」という構図はとても不健全だと思います。POと開発チームで共通の認識を作り、単に実装を依頼する関係ではなくアイデアの検証を一緒に進めていけるチームが理想です。

そのためには、チーム全体で仮説を立て、インタビューやプロトタイプにより仮説を検証し実装すべきフィーチャを特定する発見(Discovery)のプロセスが必要です。自分はスクラムマスターとしてプロダクトの価値を最大化するために、今後もそのプロセスを支援していきたいと思います。

プロダクトオーナーは権限を持っていることも多いですが孤立もしやすいので、しっかりとサポートして良いチーム・プロダクトに繋げていきましょう。来年も楽しいプロダクト開発を!

ありがとうございます。書籍代に使ったり、僕の周りの人が少し幸せになる使い道を考えたいと思います。