あま

本が好きな理系大学生。

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最近の記事

3.淡い夏色

僕は仲の良い大学の友達と、広い豪邸に来ていた。どういう経過かわからないが、持ち主が僕らを招待してくれたのだろう。それはそれは立派なもので、庭園を通る水路のような長いプールが館を囲んでいて、随所に格式高い装飾が施されていた。招待された僕達は早速、澄んだ水色のプールに入り、水の流れに身を任せて流されるのを楽しんでいた。しばらく待っても僕達を招いてくれた彼女は全然外に出てこないようで、僕は気になって見に行くことにした。 流れの先に、プールのすぐ側に小屋があるのを見つけたので、僕は

    • 2.目が覚めた後

      月曜日になって僕はまた学校へ出かけるのであった。桃色の花が散ってしまった後の薄緑を生やした木を横目に見ながら、まだ見慣れないその場所を教室目指して歩いていた。授業が始まる20分前に教室に着くと、まだそこは人がまばらで、僕は辺りに人が少ない、前から3列目の席に座って、周りの誰かが会話しているのを何の気なしに聞いていた。数分後、また一人ドアを開けて教室に入ってくるのが見えた。 その人は辺りを見回した後で、僕のことを認識したようで、 「おはよう!」 と挨拶をする。彼女は毛先の揃っ

      • 1.出会い

        古本の様な淡い褐色の光の中で僕は目覚めた。見覚えはあるが、名前も知らない人間が僕の周りにひしめき合い、喧騒の中で通らない自身の声を誰かに伝え合っているようだった。油の染み付いた長机には、誰かが飲み干した氷の入ったグラスと食べかけの料理皿が不規則に並んでいて、その香気が辺りを彷徨っている。目に映る世界はふわふわと非現実味を帯びていて、僕は初めて飲む酒か、それともこの雰囲気に酔ってしまったのか分からなかった。ふと僕は向かい側から視線を感じてそちらに目を向けると、飾り気のない格好の

      3.淡い夏色