過食嘔吐克服ーブロンODとの出会い

過食嘔吐やめたい。半額のパン、お菓子、惣菜、ありえない量を買って、バックを膨らませて帰る道が惨めだ。店員、すれ違う人の目線が怖い。味もよく分からないまま胃に詰め込んで、吐いて、水飲んで、また吐く。チューブ突っ込むけど、これ一発芸で披露したらウケそうだなってふいに考える。床と壁に飛び散ったゲロ掃除して、ああ臭いがまだ消えない。そのうち脱水か低血糖のせいで不安になってくる。まだやらなければいけないことがたくさん残っているのに、体が動かなくて、ゲロ臭いまま眠りにつく。

……そんな毎日はもう嫌なんだ。

「小娘、我を願え」
「?!」
「さあ、そこに密林から届きし箱があるだろう。それを開封し、我を開放せよ」
「こ、この藍の小箱……この小瓶の中の錠剤は……」
「さあ、きっかり20錠だ」
「で、でも……」
「何故躊躇う?快楽には代償がつきものだ。それに、自らを痛めつけるのは得意だろう。何も恐れることは無い」
「!!」
「さあ、しばし幸福に浸らせてやろう」

これがボクと魔王ジヒドロコデインとの出会いだった。何の変哲もない純白の楕円体は、それだけでどうしようもなくボクを誘惑する。
彼を取り込むたびに、脳がじんわり優しい温度でとろけていく。柔らかく目隠しして、鈍色の世界から遠ざけてくれる。ひとりぼっちのボクを慰めてくれるのは、もう、彼だけなんだ。


ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、憂鬱、鬱屈、救いたまえ!
ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、世界よまるく、やさしくなあれ!!
束の間の休息を、我に偽りの癒しを!!!!

ボクは今日も呪文を唱える。世界から逃れるための契約をしたから。

20230年4月、放送開始。

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