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時の移ろい 季節の行事  

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地域の伝統行事や厚洋さんと一緒にやった季節の行事。 そして、移ろっていく美しい自然、愛しい人の愛した我が家の花達の代わりに語りたい
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2022年4月の記事一覧

山の麓の小さな村に

山の麓の小さな村に

 山の麓の小さな村に、咲いた可愛いれんげ草。
 真愛の小さい頃のお話。
 れんげ草畑に真っ白いコットンのワンピース姿で、足を踏み入れる。
 小学校2年生の寡黙な女の子は、れんげ草の香りを楽しんだ後、靴を脱ぎ捨てて柔らかくほのかな暖かさも感じるれんげ草を踏みつけながら、クルクルと回った。
 フレアスカートの裾はまあるく広がって、ふわふわと絡みつく。
 大きく広がった裾をそっとれんげ草の絨毯の上に広げ

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穀雨

穀雨

 今日も雨。傘がない。
 井上陽水さんの歌だ。
 厚洋さんが47年前にもよく歌ってくれた。
 本当によく雨が降る。
 毎日のように降っている。

 ラジオで「今日は穀雨です。」と言っていた。
 そうかぁ。だからだ。
 昨日、一昨日コメリに行ったら、トマトやきゅうりの苗が売っていた。
 買わなくちゃとよく見たら、3月26日発売と書いてあった。1ヶ月近く売れ残っている苗ということだが、なかなか元気な苗

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フリージア

フリージア

 たった6輪しかないフリージアを部屋に飾った。
 室温は20度。
 フリージアの「無邪気な香り」が、邪〔よこしま)で、打算的になった真愛の脳〔海馬)から、胸の中から、心の底まで満たした。
 吸って吸って、吸って!
 吐くのを躊躇うように、フリージアの香りを楽しんだ。

 真愛がフリージアの香りを好きになったのは、高校の卒業式の時だった。
 何十年も前のことである。
 卒業式当日に遅刻する奴も珍しい

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