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このまま何もないまま

仕事終わりに外を出歩いた。

住宅と電線を見上げながら、
このまま何もないまま
若さを失って
30歳、40歳、50歳になっていくことが
とても怖くなった。
そこにどんな幸せがある?


僕は自然が好きだから
一人旅をするだろう。

でも自分の人生において
自分の家族を持てなかったことを
とても悔やむだろう。

不安と疲れと虚しさしかない人生になったら、
僕は僕をやめてしまうだろう。


僕は恋人に出会って強くなったと言った。
今は逆だと思う。
僕は恋人に出会って弱くなった。

誰かのいない人生は不安だ。


誰か?
恋人じゃなくてもいいの?

自分が恋人じゃない人といるのを想像してみた。
気持ち悪くなった。

恋人が自分以外の人といるのを想像してみた。
体に力が入らなくなった。
君が幸せならいいんだけど、
とても悲しくなった。


いつか消えてしまうものだと思って過ごすのは
とてもつらい。
そういうものを手にしてしまった。
大切なものを手にしてしまった。
一人になるのが怖くなってしまった。


一人になった途端、
すっからかんになる。
僕はそれをよく知っている。

朝の温かさも、夜の愛しさもなくなって
人が、言葉が、その時間が、なくなる。

恋人は、恋人だった人になり、赤の他人になる。

急に空気や世界に輪郭ができる。
今まで何気なく見てきた世界が
少しだけ内側に切り取られて、
いつのまにかその人のいない世界になっている。


恋人がいたら恋人と一緒にいて、
一人になったら友達と一緒にいて、
結局は恋人が欲しくなって。

依存しているとは思っていなかったけれど
これは依存先のすり替えだと気づいた。
僕は昔から弱かったんだ。


大切なものを失わないために、
僕は強くならなければならない。
大切なものを守るために、
自分自身を守るために。

この人の手は離してはいけない。

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