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#5 忘れてしまうくらい

前回の続き。


コメダを出た僕らは車に乗った。
僕は再びback numberを流した。

「あのね、
 先週兄ちゃんとカラオケ行った時に
 二人で青春パンク歌ってたんだけど、
 カラオケ終わる頃に兄ちゃんが
 『これだからいつまで経っても
 back numberが歌えるようにならないんだよ』
 って言ってて分かる〜〜〜!!ってなった。
 それで、そろそろ聴いてみようかなって
 思ったんだ」

「そしたら、〇〇ちゃんのLINE MUSICがback numberになってたから、なんか意識してるみたいになったら嫌だなって…兄ちゃんが先ね」

「そうなんですよ、びっくりしました笑」

君が『半透明人間』を聴いてたのを知ってるだなんて言えない。

「何が好きですか?」

「単純にサウンドだけならこれかも」

「静かなやつは何が好きですか?」

「うーーん、それはこれかも」

別れる人とback number聴くって複雑。
でも君が嬉しそうだからそれでいい。
君はどんな思いで聴いているんだろう。



車で走る。
道中で恋人が言った。

「お盆に大阪旅行に行くことにしました」

「そうなんだ。いいじゃん」

「驚かないんですね」

実は知ってるだなんて言えない。

「なんか、驚くべき事だったんだけど
 淡々と受け止めちゃった笑」

適当に誤魔化す。

「大阪に大学時代の友達がいて、
 あとライブの友達もいて、
 その人たちに会ってこようと思ってます」

自分から大阪旅行のことを話してくれたってことは、恋人のこと信じていいのかも。

「人混みいっぱいだろうし、暑いだろうし
 気をつけて行ってきなよ。
 無事に帰ってきな。それだけが心配だよ」

本当は他にも心配なことがあったけど、
君がそう言うなら。



コメダから20分程走って、僕の行きたかったクリスタル・ミュージアムに着いた。恋人も好きそうだなと思ってここにした。
恋人は『宝石の国』というアニメを観ていて、僕はその漫画を読んでいる。それで宝石に興味が湧いたからここに来た。

ここはジュエリーショップと宝石博物館が併設されていた。

まずはジュエリーショップを見て回る。
たくさんのアクセサリーや宝石が並んでいる。
見応えあり。ここだけでも大分ボリュームがある。

「これ綺麗だね」

「これはうちの会社でも扱ってます」

「これ大きいね!」

「大きいですね…」

二人で見て回る。
時折それぞれ好きに見て回る。
君の綺麗な後ろ姿にキュンとしてしまう。
ああ、俺って幸せだな。

「●●さんの誕生石は…」

「ペリドットかな」

「ペリですか」

「私の誕生石、この色しかないから…」

「ああ、確かにそうだね」

「〇〇ちゃんはどんなのが好きなの?」

「うーん、これですかね」

恋人楽しそう。
僕も普通に楽しんでいる。
幸せな時間が過ぎていく。

別れることなんてすっかり忘れていた。
本当に忘れていた。


続く。

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