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#2 田舎においで

前回の続き。


僕は町田で警察に止められてしまった。
バス専用の車線を走ってしまったからだ。
点数がつき、罰金を取られた。

止められた直後は気にしていなかったが、
徐々に悔しさが込み上げてきた。

どうしようもないのだ。
金で不幸になってはならないのだ。
金は幸せになるために使うのだ。

悔しさと悲しさ、失った金は力で取り戻すのだ。
もう悔やまない。
僕は帰宅したら資格の勉強をしようと心に堅く決めた。標識だけでなく標示ももっとちゃんと見ようと。そして、都会の駅周辺は走らないようにしようと。




恋人に事の顛末を伝えたら、

「都会ややこしいから田舎おいで🙌
 一本道だから分かりやすいよ」

そう言ってくれた。
この三連休にドライブをして君の住む町を通過した。川沿いで見た夜景と星空が綺麗だった。やっぱりここには敵わないと思った。ここになら骨を埋めてもいいと思った。山、川、湖、静かな空気、全部ある。


田舎においでと言った君がどんなことを考えているか分からないけど、僕は君と一緒に暮らせたらいいなと思うよ。

それが1年後なのか、2年後なのか、3年後なのか。3年後、僕は30歳だ。君は27歳だ。

君はどう考えているんだろう…




三連休の前に僕は美容院へ行った。
いつものお兄さんに髪を切ってもらう。
お兄さんと言っても僕の4歳下だけど。

お兄さんは彼女さんと付き合ってもうすぐ4年、同棲して2年になるそうだ。時間で言えば、もう結婚できる段階だと思う。子どもの名前は何がいい?なんて話もしているようだ。ただ、プロポーズはお金が貯まって覚悟が決まってからと決めているみたい。


僕は母方のおばあちゃんが生きている間に結婚したい。
これは僕が5歳から決めていた大事な意志だ。
僕にとって大切な、生きる意味だった。
残念だけど、母方のおじいちゃんと父方のおばあちゃんには間に合わなかった。

この前の葬式の時、段差を上がれないおばあちゃんを見て、弱っているのが分かった。僕は少し泣きそうだった。もう時間がない。

僕には時間もお金もない。
だからと言って、恋人を急かすことはしない。
これは僕の個人的な事情だ。
当たり前だが、結婚は焦ってするものではない。
二人でタイミングを見て結婚したい。
いや、そもそも結婚できるか分からないけれど。

もし本当に時間がないとなったら、結婚は間に合わなくとも、おばあちゃんに恋人を会わせたい。
そして、できれば、「僕はこの人と幸せになるよ」「おばあちゃんありがとう」って言いたい。

いや、それってプロポーズじゃん。
なんとも素敵で無責任で身勝手な言葉だ。


どちらが先?
どうにもならない悲しさは時間が運んでくる。
これは自然の摂理だ。
意志は自然の摂理を越えられる?

どうであろうと僕は正しく生きるしかない。
大事な人たちを守るために。
それがきっと一番の近道なんだ。


続く。

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