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#2 【晴】っていう漢字もいいですね

前回の続き。


田畑の中をのんびり走る。


「この前お母さんと電話した時、
 『〇〇は新婚旅行どこ行くの?』
 って言ってました笑」

お母さん気が早過ぎでは…?
そう思う反面、お母さんにもう結婚を容認してもらえているみたいで嬉しい。

「国内かなあって言ったら
 『海外行かないの?!』って言われました。
 言葉も分からないし、国内全部回り切れて
 ないのに海外なんて早いよって笑」

「そうだね、俺も言葉分からないのは不安だし、
 日本も綺麗な場所たくさんあるしね」

君との旅はまだ始まったばかりだ。
まだ半年しか経っていない。
もっといろんな場所へ行きたい。



やがて道は長野県に入った。

「また長野ですね笑
 おでかけ先の6割くらいが長野ですね笑」

長野はいい場所だ…
小さい時に父親が連れて行ってくれた北海道の草原に似ている気がする。


恋人が車の窓から手を出している。

「少し涼しくなってきましたね」

この日は30℃を超える真夏日だったのだが、
長野の避暑地はいくらか涼しかった。



道は森の中へと続いた。
この辺りは別荘の並ぶ場所だ。
別荘の名前のついた立て看板が時折見える。
その中に「晴」という字を使った別荘があった。

「女の子の名前、【はる】なら
 【晴】っていう漢字もいいですね」


ん……??
僕の名前には【はる】という音が入っている。

「そうだね、【晴】っていう字いいなって
 俺も思ってたよ。3週間前くらいに思ってた」


子供の名前にお互いの名前を取って付けるというのはよくある話だ。僕らの名前を取るなら、
真っ先に思いつくのが「はるか」という名前だ。

漢字もそのまま使うなら「大香」なのだが、
ちょっとイケてない。
だから「晴香」か「遙香」がいいな……
前に一人でドライブしながらそう思ってた。


僕は子供の名前の話なんて出したことはない。
考えるのが早過ぎて、話に出すのは重い。
もしも恋人が同じ思考で「はるか」という名前を思いついていたのなら、なんか、もう、胸がいっぱい。

(もしかして、お母さんが『子供の名前何にするの?』って話をしたのかな?【はる】もお母さんの差し金なのかな?と思ったりしている)


なんか、ニヤニヤしてしまう会話だった。
あれこれ話しているうちに車はどんどん上へと登っていき、僕らは水族館に辿り着いた。


続く。

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