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#8 一番くじ

前回の続き。


やることが終わったので帰ることにした。

「ポカリくれてありがとね。
 帰る前にコンビニで買ってくるね」

「ああ、忘れてました笑」

「あと…病院に行った時のお金。出すよ…?」

「今回は生理が遅れてるからっていう
 だけなので大丈夫です。
 検査薬は先輩からもらったし、
 病院までは同期が送ってくれたし、
 帰りは歩いて帰ってきたんですけど…
 なので、大丈夫です」

「それなら…分かった」

「あ、あの…それならコンビニ行くついでに
 一番くじ引いてきてほしいです」

病院のお金はいいから、代わりにうさまるの一番くじを引いてきてほしいのね。それはちょっと違くない…?と心の隅で思う自分もいたが、金額的には病院よりぐっと低くなる。


「いいよ!引いてくる」

「え、本当にいいんですか……?」

恋人の声色も申し訳なさそうだった。
多分さっき僕が感じた違和感を恋人も分かっている。(勝手にそう信じている)
これのお陰で僕は何も思わずにくじを引けるようになった。

こういうところが好きだ。
書いていて気づいた。
お互いの気遣いや価値観が言外に伝わった。
これは「居心地のよさ」でいいのだろうか。
なんか、好きだ。




僕はコンビニへ行って
ポカリと一番くじをレジに出した。

何気に人生初の一番くじ。
恋人の欲しいC賞は当たるのだろうか。

「これ、開けていいんですか?」

勝手が分からないので店員さんに聞いてしまう。
どうやら開けていいようだ。


何気なく開いたくじには「B賞」の文字が。


なんか、当たっちゃった。

店員さんは「ちょっと待っててくださいね」と言って30秒くらい帰ってこなかった。

戻ってきた店員さんからポカリと、大きなぬいぐるみの入ったビニール袋を渡された。

恋人、びっくりするだろうな。


家に帰って、戦利品を見せた。
恋人驚く。
本調子でない恋人もテンションが上がった。
よかった。
君が少しでも笑えるならよかった。

「いや、びっくりしましたよ!
 玄関でガサガサ音がしたからなんだろうって
 思ったけどまさかこれを当ててくるとは笑」

「なんか当たっちゃった」

「C賞を超えて、B賞を持ってくるとは……
 これ引いた時びっくりしませんでしたか??」

「びっくりしたっていうより、
 拍子抜けしちゃった笑
 人生初だったからさ」

本当はもっと喜ぶべきだった。
恋人に共感して喜べば、恋人も嬉しかった。
でも本当に拍子抜けしていてうまく喜べなかった。
それといろいろ疲れていたのだろう。


続く。

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