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#6 もう恥ずかしくないですね

前回の続き。

3/20(日)


翌朝。
僕が先に目を覚ました。
だが、まだ外は暗い。
二度寝することにした。

また目覚めた。
だが、まだ外は暗い。
僕は携帯で漫画を読むことにした。
途中、恋人が唸った。大丈夫かな。
三度寝することした。

どうやら恋人が起きたようだ。
僕もそれに反応して目覚めた。
しかし、僕は寝たふりをした。

恋人が僕のほっぺを突っつく。
目を瞑っているのでどんな表情をしているか見えないのが惜しい。想像で補っているが、可愛い。

このまま寝たふりをしたらキスしてくれないかなと思っていた。待ち続けていたけれど、恋人はYouTubeを見始めてしまった。
僕は起きることにした。次回に期待。
僕は起き上がって、恋人に抱きついた。

「今日は私のほうが先に起きましたね」
「そうだね」

こんなことならいつも通り僕が先に起きて
君のおでこにキスをすればよかった。


起きて早々、恋人は言った。

「私の奢りでいいので
 一緒にラーメン食べに行きませんか?」

ラーメンに誘ってくる恋人が可愛い。
朝から最高である。
僕らは支度を始めた。




支度が全て終わった後、
「〇〇ちゃん、ちょっとこっち来て」
僕は恋人を呼んで、座らせ、マスクを取った。

そして袋からびっくり箱を取り出した。
これは友達に渡す箱ではない。君に渡す箱だ。

「これなんですか?開けていいんですか?」

開けてもらうと、
中からカメラバッグが出てきた。

「え、いいんですか?!びっくりしました笑」

先週ヨドバシカメラに行った時にカメラバッグを見ていたのだが、僕が「Amazonで買った方が安くなるよ」と口を挟んだせいで買わずじまいになり、不機嫌になってしまった恋人。
(恋人は安さよりも、現金で現物を買う楽しさを重視したい人なのだとあの一件で分かった……)
その楽しさを奪ってしまったのが悲しかったから、僕がAmazonで買ってしまった。
正直買うか迷った。与え過ぎは重過ぎるからだ。でも、3000円くらいだしいいかなと思って買ってしまった。

とりあえず、サプライズは成功したみたいだ。
よかった〜〜




車に乗ってラーメン屋へ向かった。
歩道には親子がちらほらと見える。
小さな子供を見つけた恋人は楽しそうだ。

「可愛い!!この町は家族が多いですよ」

「昔父親に〇〇してもらったのが嬉しかったな。
 今の親子を見て思い出したよ。
 〇〇ちゃんが〇〇してって子供にせがまれたら
 2回くらいですぐに疲れちゃいそうだね笑」

「その時は
 私のお父さんに代わってもらいます笑」

(それって僕とお父様の共同作業なのでは…?)

僕らは自然と「家族」の話をする。
僕らの親の話をすることもあれば、
僕らが親になった時の話をすることもある。
もうそんな歳。
俺もあと5ヶ月で27歳。
この恋愛を逃したら結婚できない気もする。
なんだか泣きそうになる。
君がそばにいるんだろうか。


……………


「あの時はラーメン屋なんて誘えなかったです」

「あの時、『男性をラーメン屋に連れていくってどうなんだろう…』って言ってたもんね笑」

付き合う前の話だ。懐かしいな。

程なくしてラーメン屋に着いた。
付き合う前から恋人がおすすめしてくれていた場所だ。

「私とTさん(女上司)はラーメン好きなんですけど、Kさん(男上司)は嫌がるんですよ」

「夫婦で恥ずかしがらずにラーメンに行けるの
 っていいですよね」

そして満面の笑みでこう言った。

「もうラーメンも恥ずかしくないですね笑」

自分で何を言っているのか分かっているのだろうか……

(プロポーズか今のは……)

見つめられるのは恥ずかしいと言いながらも、
話す時は真っ直ぐ満面の笑顔を見せてくれる。
この子のあざとさは僕にとって国宝級です。


そうこうしている間にラーメンが出てきた。
まずはスープを啜った。
炙られている肉の味がした。これは旨いな。
思っていた以上に美味しかった。
食べ終わった頃にはお腹いっぱいだった。


両方の意味でお腹いっぱいだ。

「ごちそうさまでした」

僕らはラーメン屋を後にして、スーパーへ向かった。


続く。

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