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TRPGに憧れるTRPG未経験者の戯言~「Voice of Cards ドラゴンの島」プレイ感想

「Voice of Cards ドラゴンの島」は、前に記事を書いた「すみれの空」と同様、唐突に「あなたへのおすすめ」で紹介されたゲームだった。

TRPGモチーフのゲームで、雰囲気も非常に好み。さらに可愛いサンショウウオみたいな子がいるとあっては、やらない手はなかった。天下のグーグル先生、さすが好みをわかってらっしゃる。

事前情報は「スクエニ発のTRPG風」ということだけ。自分はタイトルの通り、TRPGを実際にプレイしたことが一切ないニワカ故、TRPGモチーフという言葉だけで飛びついてしまった。

はたして実際はどんなゲームだったのか。クリアした感想を、今回はなるべくネタバレ無しでレビューしてみた。

 ※あくまで個人の感想である点了承ください。

TRPGとは


そもそもこのゲームがモチーフにしているTRPG(テーブルトークRPG)とは、その名の通り卓を囲み、話しながら進めるRPGのことである。

コンピューターRPGではシステムで処理される「世界説明」「判定」などを、TRPGでは全て「ゲームマスター」と呼ばれる人間が担っている。

参加者は、自身のキャラクターを演じながらゲームマスターに行動を宣言し、ゲームマスターがその成否を判定することで進めていく。

言葉で説明するとなんのこっちゃだが、興味がある方は「The gamers」というパロディ映画がおすすめだ。小難しい話なく雰囲気が分かるだけでなく、非常にユーモラスで良く意味が分からなくても笑えることうけあいだ。

ハードルこそ非常に高いものの、自由度の高さと、自分で物語を作り上げる感覚は、コンピューターRPGとは一線を画すだろう。そんな「TRPG」をモチーフとしたのが、今作「Voice of Cards ドラゴンの島」である。


本作をおすすめできる人


結論から先に言うと、本作は「人を非常に選ぶゲーム」といえる。


・TRPG愛好家には逆におすすめできない

本作は「TRPG」モチーフという触れ込みではあるものの、主人公ダストの行動を選べるのは僅かな選択肢のみ。

さらに彼は、プレイヤーの介入外で言動したりもするため、純然なプレイヤーキャラとは言い難く、TRPGのよさである「キャラクターを演じ、物語を作り出す側面」は全く期待できない。

そのため、この点に魅力を感じている可能性の高い「TRPG愛好家」には、逆におすすめできない。

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参照元:公式HP https://www.jp.square-enix.com/vocd/system/


・TRPGの雰囲気を味わいたい人はおすすめ

TRPG愛好家にはおすすめできないといっても、演出は非常に凝っており、TRPGを疑似体験している感覚は存分に味わえる。

雰囲気抜群のゲームマスター、サイコロで判定するダンジョン内イベント、裏返されたカードをめくっていくマップ。

特に戦闘は、当記事上部の画像をご覧いただければ分かる通り、雰囲気溢れるクオリティの高いものとなっている。

とはいえ、この凝った演出も、TRPGに興味がない人にとってはただの冗長な演出にしかならないため「TRPGの雰囲気を味わいたい人」にしか刺さらないだろう。


・ダークなシナリオが好きな人にはおすすめ

シナリオ自体は、非常に魅力的だった。プレイ時間は10時間ほどであるため、非常にこじんまりとはしているが、それ故にストーリーはシンプルで無駄がない。

個人的には折角のファンタジーであるため、魔法の原理をはじめ世界設定の深堀をしてほしかったが、そういった本筋に関係ない部分は多く語られない。

それとは対象的に、キャラクター描写は豊富で、何の変哲もない村人Aにさえストーリーが用意されている。世界描写のあっさり具合は、人に焦点を置いたストーリーだからかもしれない。

キャラクターの深堀として、条件を満たすと開放される、キャラクターの裏エピソードというものがあるのだが、それがどれも一筋縄ではいかない内容であり、怖いもの満たさで夢中になってしまった。

このような裏エピソードをはじめ、コミカルなPTの仲間達とは裏腹に、作中を覆う雰囲気はほんのりダークでシニカル。何度かゾッとしてしまう場面もあったが、そんな「ダークな世界観が好きな人」にはたまらないだろう。


以上のことから、このゲームをおすすめできるのは「TRPGの雰囲気を味わいたい人」又は「ダークなシナリオが好きな人」と言える。


気になった点


自分はTRPG好きのダークな世界観好きであるため、本作は非常に楽しめた。それでも、気になる点は三つほどあった。以下は特に主観が入るため、あくまで個人の感想である点ご承知おきを。


・ストーリーが短い

まず一点目が、ストーリーが短い点である。プレイ時間は大体10時間程度であり、想像していた半分程度の長さだった。

ストーリーの長さだけで価値をはかれるものではないが、これで3,500円ちょっとというお値段は正直お高いな、と感じてしまった。

値段がこれならば、もう少し長いストーリーを見たかったのが正直なところだ(とはいえ、後述の通りテンポが非常に悪いため、想定通りだったらキツかっただろうとも思う)


・テンポが悪い

二点目がテンポの悪さ。本作最大の売りであるTRPG風の演出自体が、テンポの良さとはトレードオフであるため、両立が難しい部分ではあるだろう。

しかし、やたらとエンカウント率が高く、頻発する雑魚戦だけはなんとかならないものかと感じた。

他のイベントで経験値を入手させ、戦闘はイベント戦闘だけにとどめるなど、ここぞという時だけに絞っていれば、ストレスなく楽しめるように思う。


・ラスボスが理不尽に強い

三点目はラスボスの強さ。これは完全に主観ではあるが、ラスボスだけが唐突に強くなったのが大きなマイナスポイントだった。

複数EDがある短編で、道中の難易度も低く、戦闘面での戦略性に欠けるゲームであるにも関わらず、クリア直前での急な難易度上昇には正直なところ場違い感を覚え、かなり萎えてしまった。

レベルが低かった可能性もあるが(24)、本作の雑魚戦がレベル上げには向かないのは前述した通り。自分は一度全滅した後、レベルを上げずに魔石を買いこみ、エレメント・ゼロぶっぱという運任せかつ頭の悪い戦い方でごり押しした。

運が味方しただけの勝利だったため、クリア直後の率直な意見としては、他の選択肢やベストEDを見たい欲よりも、あのボスと戦いたくない欲の方が強い。

完全にヘタレプレイヤーの戯言のため記載を悩んだが、こんなダメプレイヤーもいるということで一応残しておく。


ブランドへの期待


気になる点で割と辛辣に書いてしまったものの、個人的には非常に楽しめたゲームだった。

TRPG風の演出はもちろん、魅力的なPTキャラクター達による掛け合いがとても面白く、夢中になってプレイしてしまった。

BGMも作品の雰囲気と非常にマッチしており、気になる点はあったものの個人的にはかなりのヒット作だった。次回作が出るのであれば、発売日当日に購入する予定だ。

きっと本作がインディーズゲームであれば、全てに目をつぶり手放しに称賛したのだろうが、これが大手ゲーム会社スクウェア・エニックスから出ているという点が期待値を大幅に跳ね上げ、結果的に評価を厳しくしてしまった点は否めない。

しかし、そんなスクエニが、ある種時代に逆行しているとも言えるTRPGをモチーフとするという、需要があまりなさそう(多分)な試みをしたという一点だけとっても、個人的には非常に喜ばしく大絶賛したいところだ。

欲を言えば、次回作が出るとしたら値段は倍でいいので、今度こそ壮大なボリューム感で、演出だけに頼らないTRPGらしさを見てみたい。

ここまで読んでいただきましてありがとうございます。

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