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3Dフードプリンタによる「調理の民主化」

デジタルファブリケーションツール、たとえば3Dプリンターやレーザーカッターなどがものづくりの民主化をもたらすと広く言われています。この文脈において3Dフードプリンタを考えると、多くの家庭にはすでにキッチンがあり料理ができるので、既に民主化されているのではないかという疑問が浮かびます。

しかし、従来の調理法と3Dフードプリンタを用いた調理法は、楽器を使って演奏する音楽家とDTMで音楽を作るプロデューサーの間に見られる関係に似ています。つまり、共に「料理をつくる」という目標があるものの、その達成に向けたプロセスは全く異なるという点です。

楽器を使用して演奏する方法は、実際に触れることで質感を感じ、音の波動や空気の流れを直接感じながらライブ演奏を楽しむ方法です。一方、DTMはパソコン上で曲を正確にプログラミングし、初めから完成形を意識しながら楽曲を作り上げます。これらを比較すると、かつては楽器を演奏できる人々だけが音楽を作れた時代から、今ではパソコンを使えば誰でも音楽を作ることが可能になったことが、「民主化」という観点から理解しやすくなるでしょう。

DTMの普及を考えると3Dフードプリンタは次のような可能性が見えてきます:

  1. ホームキッチンプロデューサーの台頭:3Dフードプリンタは、一般の人々が自分の家で創造的な料理を作ることを可能にします。音楽の世界でいうところの「ベッドルームプロデューサー」のように、自宅で創造的な料理を作る人々が増え、デジタルノマドのような生活を送るデジタルシェフが出現する可能性があります。

  2. 新たなフードスタイルの誕生:DTMがEDMを生み出したように、3Dフードプリンタも新たな食のスタイルやジャンルを生み出す可能性があります。樹脂の3Dプリンタでしばしば問題となる積層痕を、逆に模様表現として活用することで、フードプリンタでも新たな表現方法が確立されています。

  3. デジタルレシピの流通:3Dフードプリンタはデジタル化されたレシピ(データ)を使用します。これは音楽のデジタル配信と似ており、自身の作った料理のレシピをインターネットを通じて世界中の人々に届けることが可能になります。このような動きは、個々の人々がオンライン上で「バーチャルレストラン」を持つ未来をもたらすかもしれません。

これらの未来像に向けて、ハードウェアの普及などまだ課題は多く残されています。しかし、これらの可能性を追求し続けることで、新たな食の文化が広まっていくでしょう。

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