紙片#004
『ボミ』
燃えるゴミ
燃やすしかないゴミ
思い出というゴミ
半透明感情袋
しかと口を縛る
これで涙は零れない?
燃やしたくないゴミ
燃やすしかないゴミ
棄てる曜日のないゴミ
でも棄てる
でないとゴミになる
ボク自身が
ゴミになる
ボミだ
キミと出会った曜日に棄てるよ
その曜日ごとね
かつて愛だったゴミ
本当はまだ全然愛しているゴミ
*
子どもらの
声に押されて
ゆく笹の舟
並んで走る
笑顔泣き顔
わざと遅れて
繋ぐ指
去りゆくはやさ
競うかなしみ
山越え町越え海超えて
入道雲に突き刺され
*
『空を巻き込みながら右折する』
「あじぃ」
風向きを変える。エアコンの冷風が首筋に当たる。ハンドルに額を近寄せ、反動で見上げる。赤いLED、不完全な朝を背景に、天体のように浮かんでいる。
「ビルがない」
違和感の正体。右折先手前の小ビルがない。等間隔に明滅するロープで囲まれている虚無感、建物一棟分に満たない瓦礫、誰かの失意、いつからかの雑草、透明な怒号。
「透けてる」
ビルが退いた分空が見える。昨日までは架空だった色がフロントガラスに張り付いている。信号が青に変わる。空を巻き込みながら右折する。
*
『指のいた季節』
枕二つ頭二つ
伸び過ぎた僕の眉毛
感情なく見つめ
強めになぞった指
あの指を季語として詠みたい
今なら美しい文章にできる気がする
でも分からない
あの指がいた季節が
僕にはもう分からないんだ
*
『空が空になる瞬間』
ボクは
特別な存在じゃない
取るに足らない存在じゃない
その二つを矛盾無く腹落ちさせる
この缶コーヒーを飲み干したらね
その瞬間から初めて
ボクの人生で初めて
空が空になる
*
早歩きで走った
失格になった
競歩って難しい
生きるのと同じくらいに
*
需要と供給
切なさと口づけ
*
いつも孤独がそばにいる
僕はいつだって孤独といっしょだ
だから寂しくない
*
思想脳老にきをつけよう
*
この人でいいや
この人でいっか
一生を共に過ごす人は
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