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『金色のガッシュ‼︎』と言語学(?)

このあいだ「金色のガッシュ!!と雷句誠原画展」が開催されましたね。
私も長年のガッシュファンとして行きたかったのですが、残念ながら叶わず…泣
前売券の存在を知らなかったので当日券を狙いましたが、会場に向かう電車のなかで完売のツイートを見て、打ちひしがれました笑(販売開始30分で完売って…)

というのはさておき。
ガッシュに登場する呪文ってけっこう言語学的な楽しさがあるのでは?とふと思ったので、そういう話をします。

タイトルを「言語学(?)」としたのは、その手の専門家に「言語学なめとんのか⁉︎」って言われたらいやなので、予防線として疑問符つけたという感じです(笑)
ガッシュが好きな方はもとより、ガッシュのことよく知らない方でも全然大丈夫ですので、ご心配なく読み進めてもらえたら嬉しいです。

ガッシュのあらすじと設定

とはいえ前提となる説明は必要なので簡潔に。

『金色のガッシュ!!』は雷句誠先生による少年マンガです。あらすじはこんな感じ。

★あらすじ★
中学生の主人公・高嶺 清磨たかみね きよまろのもとに、謎の少年ガッシュ・ベルが現れる。
ガッシュは、「魔界」から人間界に送り込まれた100人の魔物の子の1人。
魔物の子たちは、千年に一度 人間界で行われる「魔界の王を決める戦い」の参加者たちであり、人間のパートナーとともに、魔界の王を目指して最後の1人になるまで戦い合う。
ガッシュは、パートナーの清磨といっしょに、「やさしい王様」になることを目指して戦うのであった。

魔物どうしの戦いのなかで使われるのが、今回のテーマとなる「呪文」です。魔物の子とパートナーは、呪文を駆使して戦っていきます。
呪文は魔物によってさまざまなものが存在します。

パートナー(人間)が詠唱することで呪文が発動する。
画像は、ガッシュの第1の呪文「ザケル」。口から電撃を放つ。


接辞と語根

こんどは言語学のはなしです。なんとなく理解してもらえれば大丈夫なので、気楽に読み進めてください。

英語びより」より

言語学には「接辞せつじ」「語根ごこん」という用語があります。どちらも単語を構成するパーツをあらわします。

たとえばreaction(リアクション、反応)という単語は、re-/act/-ionという3つのパーツでできていて、re-と-ionの部分が接辞、まんなかのactが語根です。

語根は、その単語の中核となる意味を持つパーツ。
接辞は、語根の前後にくっつくことで、新しい意味を加えたり、派生語を生み出すパーツです。(語根との位置関係によって「接頭辞せっとうじ」「接尾辞せつびじ」と呼ばれます)

上の例では、語根act(行動する)に、「再び」を意味する接頭辞re-と、単語を名詞にする接尾辞-ionがくっついているわけです。

この「接辞・語根」のシステムは、英語以外の外国語にも当てはまりますし、日本語にも通用します。(参考:https://ipa-mania.com/radical/

余談ですが、私は高校時代、この接辞・語根を調べるのにはまっていた時期があり、そのおかげでけっこう英単語を覚えることができたなあと思います。
その後、大学ではトルコ語などいくつかの外国語を勉強したのですが、そのときも接辞・語根の知識はとても役に立ちました。

呪文はまさに…

さて前置きが長くなりましたが、察しの良い方は、私が話したいことがもう分かったのではないでしょうか。

そう、ガッシュに登場する呪文はまさに接辞&語根のシステムで成り立っているのです!
おもしろくなってきましたね(笑)
例を見てみましょう。

ガッシュの最強呪文「バオウ・ザケルガ」。敵を噛み喰らう電撃の竜を放つ。

ガッシュの必殺呪文である「バオウ・ザケルガ」。
これをパーツで分解するとしたら、”バオウ-/ザケル/-ガ”という感じでしょうか。

”ザケル”が語根です。ガッシュの第1の呪文が、基本の構成要素となっています。魔物によって基本となる呪文はそれぞれ違います。

接頭辞”バオウ-”は、上級クラスの呪文をあらわします。
※厳密には”○オウ-”という形であり、〇には魔物ごとに異なる文字が入ります。(例:ラオウ-、スオウ-、ザオウ-など) いずれも、作中ではその魔物の最強クラスの呪文として扱われることが多いです。

接尾辞”-ガ”も、呪文のランクを示します。ガッシュには「ザケルガ」という呪文もあり、作中では「初級の上ランク程度」の強さと言われていました。

ランクを示す接辞が2つ存在していて違和感がありますが、その場合はより上位のものが優先されるのでしょう。
ザケルガ→バオウ・ザケルガとランクアップしていることを示す意味もあるかもしれません。あるいは単にゴロの良さで付けられているか。(マンガだから響きの良さは大事)


もう一個くらい見てみましょう。

ゾフィスの「ディガン・テオラドム」。複数の爆撃が降り注ぐ。

ストーリー中盤で登場する魔物 ゾフィスの「ディガン・テオラドム」。響きだけでもなんか強そうな感じがしてきます。

これも同じく分解していくと、”ディ-/ガン-/テオ-/ラドム”といった感じでしょうか。

ラドム:語根。ゾフィスの使う基本呪文で、小さな爆発の球を放ちます。
ディ-:呪文のランクを示す接辞。上級クラスをあらわします。(≒ディオガ?)
ガン-:呪文の性質をあらわす接辞。複数の攻撃を放ったり、連射したりすることを意味します。
テオ-:おそらく中級クラスを指す接辞で、さきほどの"-ガ"よりも強いです。


まとめ

ガッシュに登場する呪文ってめっちゃ言語学的じゃない?というお話でした。いかがだったでしょうか。

作中では、紹介した以外にもさまざまな接辞・語根が登場します。
他の呪文も見ていくと、呪文が一定のルールにもとづいて命名されていることがより分かると思います。

ときに響きの良さ重視で例外が生じるところとか、いっそう言語っぽさが感じられて興味深いです。

呪文の接辞・語根をまとめているサイトも見つけたので、興味のある方は見てみてください!

また、今回例をあげた接辞は私なりの解釈で説明しているので、読む人によってはまた違う解釈があると思います。そこはマンガですからね、読者の数だけ解釈があってしかるべし。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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