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Rangasthalam(ランガスタラム)感想とか翻訳調べたメモ②

お世話になっております、BONOです。
ヘッダー画像のチッティ、みなさんお好きなのではないでしょうか。もちろん私も好きです。

こちらのnoteの続きです。しかもこれでも書き終わらず、クライマックス直前までの感想です。ゴリゴリネタバレ。相変わらずテルグ語も英語も分からないしインド知識もガバガバ感想noteですので何卒、何卒でございます。

前回の続きでこれまたストーリー順にメモ

・ブパティの幹部(おハゲ)をボコったために警察に捕まるチッティ。と思ってたんだけどシーン冒頭チッティに尋問してる警官が「How dare you hit the police constable?(よくも巡査を殴ったもんだ)」と言ってる??  直前の連行されるシーンで「シェシュ・ナイドゥ(おハゲ)を殴った件で連行だ」みたいなことを警官が言ってるんだけど、それとは別件で警官でも殴ったのかな(警官”でも”て)。そのあと「村の祭りで騒ぎを起こした」「村長の部下に手を出した」というのも合わせて言ってるんだけど、祭りでボコしたのは前髪くるくるカシ兄ちゃん率いる村のチンピラたちで、ブパティの手下ではないよね? どれがどの話? んふふ、分からん分からん。
(※ちなみに「よくも”police constable”を殴ったな」の「police constable=巡査」はこちらのテキストを参考にさせて頂きました! しかし謝れと尋問している警官が「SI」と呼ばれているのが何なのかは分からず!)
(2023/4/17追記:リプにて、インド警察の「SI」は「Sub Inspector(副検査官)」ではないかと教えて頂きました!→ 参考サイト 
なんか強そうな役職ですが、ブパティの息がかかってる警官という時点で色々ダメっぽそうですね! 歪(ヒズミ)さん、ありがとうございました!)

・結局警官を殴った話になってて「謝れ!」って言われるんだけどチッティには聴こえない。駆けつけたクマールの必死さがあまりにお兄ちゃんすぎて泣けるよ…。「弟は難聴なんです、大きな声で言わないと聴こえない(だから謝らないだけ)!」ってクマールが言ってるのに、チッティは「聴こえてるよ!」と警官を煽ってしまう。多分聴こえても謝る気ないし、こんな尊大なやつらに難聴があると知られたくもないんだろうな。

・チッティの釈放を口添えしてもらえないかクマールがブパティに頼みに行くシーン。ここでうっかりサンダル履いて入ってきちゃうくだりがクマールの必死さを表わしつつ、観客にウッと緊張感を与える演出でほんと上手いですよね…。クマールが「弟が殴られてる」って訴えても、「”人間には言葉、動物には鞭”という言葉がある。話して聞けば叩かれないが、叩かれているということは聴こえてないんだな、可哀想に。悟りを開くかもしれないし2日間遊ばせておこう」みたいなことをブパティは返している様子。それでも懇願するクマールに一呼吸置いたあと「私の名前を知っているか?」と放つブパティの迫力…。部下はみんな口を揃えて「President」と呼ぶ。この村のPresidentはこの30年たった一人しかいない、だからもう個人名を呼ぶ者はいない…。ランガスタラムにとってのブパティの存在がどれだけ根深いか思い知らされますし、悔しいかなその返しはちょっとカッコいいと思っちゃいましたよね。ジャガパティさんの目力がすごいもんだから…こんなオノ・ナツメ作画みたいな目の人ほんとに存在するんですね。

・ところでこのnoteではPresidentをとりあえず「村長」で統一してしまっているんですが、実際ニュアンス的にはどんな表現が適切なんでしょうかね? ランガスタラムではブパティの言葉こそが「法」なので「大統領」というBIGなニュアンスもありかもしれないですが、私の体感としては「会長」とかなのかなとか思ってます。「総裁」だとよくお祈りをするキャラクターにちょっと合わない感じがしますね。日本語字幕がつくとしたらこのあたりはどうするんだろう。楽しみ~!!(まるで日本語字幕がいずれつくかのように言う)(ついてくれ!! そして一般公開してくれ!!)

・呼び起こされて牢からよれよれで釈放されるチッティ、警官を睨む目ももうしょんぼりしちゃって、ドタマがおかしくなってしまう。可哀想、早くご飯を食べさせたいという気持ちと、どえらく可愛いという気持ちが混ざった最悪のキメラが心の中に生まれてしまった。ちいかわ? ラーム・チャランさんってほんと恐ろしい俳優さんですね。これ以上俺の穢れを暴かないでくれ。

・傷つけられたチッティの姿を見てクマールはその足で村長選に立候補。受付の人が「ランガスタラム」の名前を聞いた途端「これはただ事じゃねえぞ」って顔するの分かりやすくて最高ですね! 威風堂々とブパティ邸に突き進む兄弟の足元、履物は履いたまま、そしてブパティは兄弟の姿を鏡越しでとらえる…いちいちかっこいいなあ!  そしてここで流れる音楽がラストで流れる音楽と同じなんですよね。背中を押すような推進力あるカッコいい曲だと思います。村長に立候補し、ランガスタラムの政治を変えると宣戦布告をするときとかもうもう、チッティが喋ってるときはクマールが誇らしげだし、クマールが喋ってるときは(ちょっと聴こえなそうだけど)ドヤアしているチッティにマジでニヤけてしまう。しかもダメ押しの「ファニンドラ・ブパティ」呼び!!! 「この名前をどこかで聞いたことないか? 忘れてるかもしれないが、あなたの名前だよ」と皮肉たっぷり!!!! 「選挙が始まるぞ!」とぶち上がるシーンですね~。

・ちょっと分かってなかったんですごい基本的なことの整理なんですけど、ブパティ邸の旗もチッティたちが掲げてる旗もそれぞれ政党のものということですよね? ブパティの「私の名前を知ってるか?」のくだりでも「この村の旗が一本だけなのは政党の権威ではなく私の言葉に価値があるから」みたいなこと言ってますし、チッティたちの宣戦布告のあとにブパティは「あの自信の根拠は持っている旗だ」と言ってるみたいです。つまり時系列としては「チッティ釈放」→「選挙にエントリー」→(⇔)「MLAのダクシナ(の政党)に支持してもらう」→「旗を持ってブパティ邸へ宣戦布告」って感じですかね? 日本の選挙みたいにその選挙区の候補者に党の「推薦」や「公認」がつくみたいな感じでしょうか。きっちり後ろ盾を用意してくるあたりクマールの賢さとぬかりのなさを思わせますがこのダクシナ…ダクシナァアアアアアアア!!!!! 字幕を翻訳にかけてる間もギリギリと指先に力がこもってしまいましたよ!!

・その直後、事故に遭ったダクシナが昏睡状態になっている現在軸に戻る。チッティが補聴器を使っているのが一応軸が違うことへの見分けになっている感じですかね。流れとしてはクマールの選挙に尽力を誓ってくれたダクシナへの恩義でチッティはお世話を志願しているように見えますが、それだけでここまでするのか、現在軸だとしたらクマールはどうなったのか、チッティはなぜ補聴器をつけるようになったのかなど、微妙に観客は引っかかりがある感じで観ることになるんですよね、きっと。私はWikiであらすじを読んでしまっていたので、こういうとき「何も知らずに観てたらどう感じてたんだろう」って思います…まあ仕方ないんですが。

・過去軸に戻ってチッティとラクシュミがイチャついてるときのやりとりも何か示唆があるかもしれないと思ってちまちま打って翻訳かけたらほんとにただイチャついてるだけだったのでFUNKY MONKEY BABYSの『そのまんま東へ』のジャケットみたいな顔になりました。いや二人は可愛いんですよ、可愛いんですけどね。

・ここで草むらからRRRのジャングでお馴染みチャトラパティ・セカールさんが!! 最初「似てるだけでさすがに違うだろ」と思ってたんですけど調べたらセカールさんだった。当然腕がおありだから色んな作品に引っ張りだこなんでしょうけど、RRRの善良で純粋な羊飼いの一人としてのセカールさんから入った者からすると、こんな闇のラフィキじいさんみたいなお芝居を『マッキー』に続いてまたやられていることにビックリする。「このランガスタラムという舞台に新しいヒーローは現れない、Presidentという名の悪役がいるのみ。選挙が始まるということは誰かが死ぬということだ!」と、人なのか亡霊なのか幻覚なのかナガパティおじさんの警告が響く…。

・うわわ、そのあとのクマールとパドマの会話で「結婚して、あなたが就職したら遠くへ行って二人で幸せに暮らそうって約束したよね?」的なことを言っている…。パドマの登場シーンってすっごく少ないので、彼女が議員の娘でありながら農村出身のクマールと結婚しようとしていることをどう捉えてるんだろうと思ってたんですが、初めから駆け落ちする気だったのかな。そのあとの雑なほっかむりでダバダバしてるチッティが可愛くてだね、頭入ってこねえだよ。危ないってナガパティおじさんが言ってたんだ!っていうチッティに噴き出すクマールもすげ~良い。この兄弟にはずっと笑っていて欲しかった。

・カシ兄ちゃんと手を組むことになったくだりがまあ「組むことになったんだ」くらいしか分かってなくて、カシ兄ちゃんに何か事情があったのかな~とか勘ぐってしまっていたのですが、実際はもっとシンプルな理由だった。クマールとチッティが選挙活動するもんだから家族が村から無視され始めて、お父さんが「どうにかしなさい、友達でも敵でも構わず声をかけなさい」と言ったところで、クマールはお祭りで揉めたままだったカシ兄ちゃんに頭を下げに行く。もうなんとなく分かり合えないと思い込んで声をかけることすら選択肢になかった中で、まずは試しにこっちから頭を下げてみるってのは意外と意味があったりしますよね(まあそれでも分かり合えないケースもいっぱいあるが)。カシ兄ちゃんは「お前たちが殴ってきたからこっちも殴り返した。でも今までブパティの部下を殴った奴はいない。お前の弟はそれをやってのけた。その弟に刺激を受けてお前は村長に立候補した。それも自分のためではなく村のために。味方しないわけにはいかないよ」と。クッ…! カシ兄ちゃん、めっちゃ良い人…。ベタだけどこういう男気あるキャラクターの存在は気持ちいいし、「どうせ分かり合えない」と思ってたところから道が開ける展開も良いものですよね。さあ、巻き返すぞ!ソングのチッティも可愛い~~~~~!!!! 途中でクマールのほっぺキュキュッてつねるの良き~~~~~~~

・選挙活動中にラクシュミ宅で不穏な動き。父親に連れられチッティとは別の人と結婚させられそうになっている? ここでラクシュミが「My dad is holding a bottle of poison, what do I do?(お父さんが毒の瓶を持ってるの、どうしたら良い?)」って言ってるんだけど、poisonってもしかしてお酒のことだろうか。お父さんがお酒を飲んでいるか、もしくは飲むぞと脅されて逆らえない…? ランガンマおばさんは「あなたのせいよ。村長に歯向かって村民からも煙たがられて、どうやって彼女を養うの?」とチッティの味方をしてくれない。さらにラクシュミの父親から一つの提案として「金を受け取ってクマールの立候補を取り消しさせろ。そうしたらラクシュミと結婚して良い。」と…。なんかもう色々どうなのかな、その取引。チッティは「金も彼女も必要ない! 代わりに兄に投票してくれ!」と出て行ってしまう。チッティもうちょっとラクシュミにフォローないかねとは思うが、やっぱりラクシュミもこの時点では父親の言いなりって感じなんだな。
のちにチッティがブパティ側から賄賂を受け取る展開があって、そのとき「賄賂受け取って選挙下りるアピールするなんてよくチッティ一人で思いついたな(失礼)」ってちょっと思ってたんだけど、このラクシュミの父親の提案をきっかけに思いついたのかもしれませんね。

・応援してくれないランガンマおばさんのもとへ酒飲んでやってくるチッティ。笑いの沸点が小学生なので酒瓶をおばさんちの庭に割り捨てるところが豪快すぎて毎回ちょっと笑ってしまう。ランガンマおばさんがチッティを部屋に招いてフィッシュカレーを食べさせるんだけど、こんな風にちゃんと腰を据えて話を聞きなさいってご飯を食べさせるのは、何か慣習由来だったりするのかなあ。ブパティのバターミルクとは意味合いが違うだろうし。ランガンマおばさん、兄弟を心配するだけでなく「村のために戦ってたのはあなたたちだけじゃない」って心のどこかで歯痒い思いをしていたんだろうな。かつて自分の夫もこの村の政治の不正に気付き、村のために選挙に立候補していたんだもの。そしてその夫さんが!!!! RRRのニザーム藩王国顧問さんだったんですね!?!? いやめちゃくちゃ有能そうな目ヂカラある夫さんが出てきたぞって思ってたんですけど、カーーーッ!! ニザーム藩主国顧問と全然雰囲気違う…。そして草むらのシーンは怖いですね。背の高い草の向こうにぼうっと立つ男たちのショットはめちゃくちゃ怖かった。しかも状況説明だけであればそこまでやる必要ないのに、「気を失ったふりで難を逃れたと思ったらしっかりトドメを刺される」っていう緩急を容赦なく差し込んでくる感じ!! あんな危ない草むら刈り取れ!って感想見かけたときはその通りすぎて笑ってしまいました。実際問題刈ってもまた伸びてきちゃうんでしょうけど(そんなマジレスいらないよ)。

・ランガンマからこの村の恐ろしい「舞台装置」を知ったチッティがショックを受けてるときのお祭りシーンも悪夢みたいで素晴らしい。今まで村長に歯向かった男たちは裏で殺され続け、そして自分の兄もその歯車に巻き込まれてしまうかもしれないという恐怖。足元がぐらついて視界が歪む感覚。眠るクマールに寄り添うチッティがもう…こんなことってないよな…。

・回想で村の男たちが村長に物申す場面が出てくるわけですけど、特に物語の冒頭に出てきた溺死させられた若者が訴えてるときの腰に手を当てて片足重心で立って煙草吸ってるブパティちょっと爆イケすぎる。すげ~悪いやつですげ~人を見下してるシーンなのに。

・疑心暗鬼になったチッティはダクシナの応援演説で彼の部下を取り押さえてしまいクマールと仲違い。酔っ払って一人で家に帰ってきたら「ご飯は俺の好きなものとクマールが好きなものどっちを作ったんだ? やっぱりクマールのか」って言ったり「村長候補さまは朝から晩まで大忙しだな」って嫌味を言ったり。チッティがブパティサイドからお金を受け取ったのはクマールを守るためだと思ってたんだけど(勿論それは前提だけど)、クマールの態度に傷ついてちょっとヤケになってしまったところもあったということなのかな。応援演説のときもクマールを守りたい一心だったのに「もうついてこなくていい」って言われて、どうしたら良いかもう分からなくなっていたのかもしれない。ならいっそ選挙を辞退させてしまえと「村民の信用を失くさせる」っていう強引な手段を選んでしまって、自ら喉に刃物を当てて問い詰めるクマールに、クマールが自分の想像以上に村のために真剣だったことに気付いて後悔する。政治っていうものに対する解像度がクマールとチッティで差異があったかもしれないし、なんかもう、自分の大切な人を大切にするってどうしてこんなに難しいんだろうって胸が詰まる場面だった。

・(ここで本当にごめんなさいなんですけどこの場面のチッティのタンクトップの胸ぐりやたら深くありません? いやわりとずっと深めかもしれないですけど、たたた谷間が…って思ってしまったし、お父さんにかなりキツめの罵倒(deaf rascal)を言われたあとにグッとシャツで胸元隠すので「アッスミマセン、見てしまってスミマセン」って気持ちになりました。チャランさん胸元がご開帳気味でボタンが息していないというのはよーく聞き及んでいるのですが、V字のガバいのは良くてU字にガバいのはちょっと抵抗あったりします? 何の話だ、そのくだらない分析を今すぐやめろ)

・チッティがブパティにお金を返しに行くシーン。お金埋めていたところはブパティ邸の敷地内だったのかな? お金をもらうところだけ村人に目撃させて、持ち出さないし手も付けないというのはチッティなりの仁義だったのかもしれない。というかお金は手段だっただけで目的ではなかったわけだしね。チッティの吐露も英語力ないやつの意訳で申し訳ないんですけど、「金を受け取ればみんなが支持を取り下げて兄も立候補を取り消すと思った。ところが彼は喉にナイフを当てて自殺すると脅してきたんだ。恐ろしかった。でもそこまでして村に尽くしている兄を誇りに思ってる。そんな兄のために自分はあとどれだけのことをしたらいいんだって思うけど…。やる、やるよ。」って。ブパティに言っているようで自分に言い聞かせている感じで、戸惑いというかやっぱり大切な人を応援する、支える難しさみたいなものが滲み出ているように受け取りました。そして今まで村長に逆らってきた人々(ここではランガンマの夫は除く)の名前を挙げて、「何か大きな力(不思議な力って感じでも良いのかな)が働いてあなたに逆らった者は殺されるなんて聞いたけど、真実はあなたが知っていればいいです。あなたは偉大な人なので。その大きな力とやらに言っておいてください。クマール・バブにはチッティ・バブという弟がいる。クマールのところに来るのなら、まずこのチッティを通らずには行かせないと」。自分のしたことの後悔とクマールの意志の強さを知って、クマールの盾になると覚悟したんですね。ここのチッティ、バターミルクのコップをぺしゃんこにするところも含めてすっごくカッコいい。

・今度はラクシュミの婚儀?に乱入。ここの台詞もまだ要精査なんですけど、チッティが言ってることを要約すると「本当はラクシュミが必要なのに、兄の方が大事だからと手放した。でもあなたは私のために父親を手放すようなことはしてくれない。私が兄を思うのと同じように私のことを思ってくれる日がきたら教えてください」というのが直訳なのかな…。言葉通りだけでなく実はちょっと凝った説得なんじゃないかと思って色々考えたんですけど、直前にチッティに起きたことと、「涙」が関係するのかなあって思いました。
この物語の中で「愛」とは「相手のことを思って涙が出ること」です。パドマはクマールを想って、ラクシュミもチッティを想って泣いた場面がありました。あとチッティが釈放されたときにクマールが少し泣いてて、ここではチッティが喉にナイフを当てたクマールを思い出すだけで涙が出てしまう。「愛とはそういうもの」というのはクマールの言葉で、そしてその言葉はチッティも引き継いでます。
そしてチッティは自分の中に迷いが生まれたとき、本来味方をすべきクマールを傷つける手段を取ってしまった。これはラクシュミもやってしまったことがある。チッティに婚約を持ちかけておいて騒ぎになったら恥ずかしくてチッティを叩いてしまったのと、借金額について組合にかけあう際クマールを巻き込んだのに、虚偽の借金額を飲んだ父親に「恥をかかせるな」と言われたら押し黙ってクマールたちを置いて行ってしまったときのこと。
このあたりを踏まえるとチッティが言いたかったのは「自分の中で迷いが生まれてどうしたら良いか分からなくなっても、大切な人(味方すべき人、涙が出るほどに愛している人)を手放すようなことをするのだけはもうやめよう」って、自分がしたことも含めてラクシュミに懇願したのかなって思いました。だから最後去り際にチッティは「もう誰も手放さない」(クマールの味方もするしラクシュミも手放さない)と言っていたのかなって。「何があっても味方をする」と誓うのは、大切な人と一緒になるときの覚悟として必要なことですよね。
あとラクシュミのお父さん、やっぱり「poison(お酒のスラング?)を飲んで死んでやるぞ」と脅している? これ以上お酒飲むと体に毒だからやめてもらいたいラクシュミをそうやって脅して言うこと聞かせてたのかな。そこで「その量じゃ死なないよ」って大きな瓶を渡される。周囲が笑ってるので、しょうがない親父だな〜って認識なのかな、村人も。

・おハゲと村長が話しているところで、息子を亡くした使用人に話を聞かれてしまうところ、「あなたが神だったとは知らなかった」って嘆いていたんですね。息子が亡くなったとき「頃合いの果物を我々がもいで食べるように、人の死期は神が決めている」みたいなことをブパティが言っていたことに対する言葉。重い。そしてここでおハゲが「クマールもやっちゃいましょう」的な弁解しているのかと思ってたんですが、字幕を翻訳したら「だいぶ劣勢です、もう諦めた方が…」みたいなこと言ってたっぽい。このタイミングでよう言えたねえ…そらブチギレたブパティに撲殺されちゃうねえ…。しかしブパティの今の地位に対する執着も恐ろしい。

・このあとのチッティが家に帰ってくるところなんですけど、良すぎません??? クマールが喉にナイフ当てて脅すなんていうとんでもない騒ぎが起きてたのに、「ブパティに金返してきたぞ~い!」って吹聴しながら帰ってきたチッティに「茶番は良いから家入ってご飯食べて」って言えるクマールとお母さん…。多分昔から、兄弟が小さいときからずっとチッティが何かしでかしてクマールが怒って喧嘩してチッティがヘソ曲げて、でもそのたびに「まあチッティもクマールが大好きだからやっちゃったんだよね」って家族で仲直りさせてたんだと思うんですよ、あの感じ!!! そしてお父さんに言われた罵倒を根に持ってて「あの人がひどいこと言ったせいで家に入れなくて餓死するとことだったけど、ご飯ならここにあるんだよね! フィアンセのラクシュミの料理美味いんだから! ささ、ここで食べよう!」って感じでラクシュミをノリで紹介するチッティを玄関越しに見てるクマールとお母さんと妹ちゃんの”感じ”、あまりに良い。もうチッティのこの感じに慣れっこな顔、たまらん。そして食べさせて~って順番に家族が出てくるところ、マジで微笑ましくて最高すぎる。お父さんも「下さい」しに出てくるとチッティがむくれて「もっと大きい声で言って!」って蒸し返すんだけど、もうみんなあまり気に留めないっていう。
チッティの家ってずっとそうだったんだろうな。兄弟が選挙活動始めて村の人に無視され始めても活動自体に反対はせずどちらかというと「頑張って早くどうにかしてよ!」って感じだったし、応援演説の一件でチッティとクマールが仲違いした夜もお母さんが「選挙始まってから平穏な時間がないわね」って感じで、兄弟がよく騒ぎを起こすから小言は言うんだけど「もうこれが我が家だから」って感じでなんだかんだずっと仲良くやっている家なんだろう。それを思うとこのあとの展開がよりキツい。

・プージャさんの踊り子さんタイムだ!!!!! 爆カワ~~~~~。良い感じで家族にフィアンセ紹介したあとにこれかよって感じですけど、私は男性同士の「婚前に最後のひと遊び」みたいな流れはわりと嫌いじゃない。ルンギたくし上げて激しく踊るチッティがすごくて「好きな俳優さん(しかも男性)の太ももってこんなに見て良いんだっけ!?」って動揺してしまうがまあ見ちゃいますよね。あとダンスパートになるとダンサーさんメインになって脇役の人たちがいなくなるパターンありますけど、ここではマヘーシュもカシ兄ちゃんもカシ兄ちゃんの弟分も一緒にいるので嬉しい。プージャさんが「♪Jigelu Jigelu…」ってスカートの裾をちょっとずつ上げながら歌うところで両サイドに黒味が入って狭くなった画面が音に合わせてちょっとずつ開いていく画作り? 「急にそんなことして良いんだ!?」ってちょっとびっくりしたけどかなり好きです。あとチッティのなんかめっちゃキツいプランクみたいな動きしたあと足をねりねり(?)してクルっと回って片膝立ててどっしり座って決め顔するところあるじゃないですか分かります?(早口のオタク) あのムチムチ感がネコチャンみたいでえっちですごいと思いました。他の役見てもチャランさんをムチムチしてるってあまり思ったことないんですけどチッティはムチムチしている。あと他の方の感想で別の役とかチャランさん自身はウインク自然と出来るのに、チッティだと不慣れなのか思いっきりバッチン☆ってやってるのが可愛いっていうのを見かけてThis is それです(?)。

・踊ってるところでマヘーシュが外にいるご飯運んでる男を怪しむ場面、あれは「この村のやつじゃない」って気付いて怪しんだということなんですね。よそ者がすぐ分かるっていうのは農村とか地方の村が舞台の作品ならではの描写って感じがするので好き。そしてチッティたちがその食事運び男について行くとそこにはさらにまた見慣れない男たちが…クマールが危ない!って気付くところ、「ここにいる男たちの人数より食事の数が多い、他にもどこかで待機してるやつがいる!」ってことなんだろうなっていうのは何となく分かったんですけど、加えて「知らない奴らのはずなのにチッティに大きい声で話しかけてくる(難聴を知っている)」ところも警戒したポイントだったんですね! 面白い~。

・さて、クマールが襲われてしまう場面…。ここはほぼ台詞がないので翻訳で触れるところはないんですけど、夜、草むら、助けを求める声がチッティに聴こえない、というかなりツラいシーン…! また音が聴こえれば連中が動く音も相当聞き取れるはずなのにそれも出来ない。連中の持つ懐中電灯だけが命綱っていうのが歯痒くて緊迫感がやばい。ようやくクマールを見つけてチッティが飛び込むんですけど、ここの容赦なさも本当にすごいですよね。なんというかカッコいいアクションじゃなくてかなり生々しくて臨場感があるし、何より相手が呼吸をしているかどうか口元に耳を近づけて確認して一人一人しっかり息の根を止めるチッティの執拗さがもう…チッティのこの「可愛いけどピーキーで時に凶暴」ってキャラ造形はチャランさんの演技力だけでなく設定の時点でほんと面白いなって思います。しかも「狂犬」とかともちょっと違うんですよね。耳が遠いせいで状況を把握してキレるタイミングも遅かったりするから「時限爆弾みたい」って表現してる感想を見かけたことがあって、うんうん。

・どうにか難を逃れてお茶屋さん?みたいなところまで逃げてきたチッティとクマール。ここでクマールがチッティに謝って「もう黙ってどこかに行ったりしないよ」と言い、そしてチッティが「そうだよ! 俺に黙ってどこかに行くからこうなるんだよ!」っていうやりとりをしてたんですね…。そしてチッティがターメリックを取りに少し目を離した隙にクマールが倒れている。この一連をワンカット。気付かない間に、ほんの目を離した隙に取り返しのつかないことが起きているという恐怖。本当に恐ろしくて血の気が引くシーンなんですけど、そういう演出がめちゃくちゃ上手い。カメラワークもすごい。
最愛の兄の最期の言葉さえ聞き取れないチッティ。あまりに悲しくてつらい。

・このあとチッティがクマールの亡骸を抱えて帰ってくるところから、画面が全体的に青色で(早朝ゆえの色調でもあるんでしょうが)、クマールについたターメリックとかの黄色がぼやっと強調される色彩になっているんですよね。あんなにカラッとしてて仲の良かったチッティの家にとんでもない悲劇が襲う。真っ青な画面から猛烈な悲しみが伝わってくる。

・チッティがブパティ邸に乗り込むところ。チッティの瞳は悲しみとも怒りともつかない複雑な光が灯っていて、でもその後ろから村のみんなも駆け込んでくる姿にカタルシスがありますね。こんなことを許してはならない、こんなことをされて黙っておけるわけがないという激情があって、村のみんなも表情がそれぞれ違うのが素晴らしい。ランガンマおばさんも何年もこうやって悲しみや怒りをぶつけたかったはずなんですよね。
とっとと逃げてるブパティの狡猾さがまた怒りのやり場がなくて、吠えるチッティがあまりに悲しい。

・葬儀のシーンも本当に悲しいんですけど、映像がすっごく綺麗で、愛する人の死を悼む一連の儀式をこんなにしっかり見せてもらえるのはすごく貴重なことのように感じました。特に日本とは全く違う送り方なので、すごく目を奪われる。クマールの顔が綺麗なだけに本当に胸が痛い。ぐったりとした兄の身体をチッティが抱き寄せるとき、一筋涙が落ちるのが見えるんですよね。でも目は虚ろで、感情いっぱいに嘆き悲しむ両親や村人たちと対照的なのが強く印象に残る。

・結末を知った上で観るとダクシナが花を添えるところ胸糞悪すぎるだろ。しかしここでまた真っ青な画面の中でダクシナの添えた黄色い花と、回想のクマールの首のターメリックが異様に目立つのがなんだか示唆的に感じてしまったり。

・仇討ちのためブパティを探し回る日々の中で、一心不乱なんだけど時折堪えきれず泣いてしまうチッティの姿が差し込まれるのが辛い。クマールのことを思い出すたび、やり切れなくてとにかく探し回ることしか出来ないんだろうな。そして道を尋ねてきた人に補聴器をつけて答えるチッティ。マヘーシュや他の人に代わりに聞いてもらったり、聴こえないことを知られないために適当に返してたのに、もう以前のチッティではなくなったという描写。良いことのはずなのに、こんな形で変わらざるを得なくなったことを思うと…ウッウウッ……。

・ランガンマおばさんが新しい村長に選ばれるっていうのはすごく希望があるなと思った。前半は女性が軽んじられがちな描写が結構あったし、クマールの次の村のことを真剣に考えてたのはやっぱりランガンマおばさんだったと思う。舞台は1980年代らしいけど、「女性のリーダー」が描かれるのは2018年の映画って感じしますよね。

・そのお祭りで歌われている言葉でチッティはクマールの最期の言葉が「スリマンナーラーヤナ」であったことに気付く。そしてダクシナの元へ向かい、事故現場を目撃してしまう…という冒頭の描写に戻る構成。これ何も知らないで観てる場合、チッティがその名前を聞いてどうしてダクシナの元に向かったのか分からないまま、2年経っちゃったよ…?ってかなり前のめりになっちゃう展開ですよね。さあ、ダクシナが目覚めたぞ! 今回のnoteはここまで!

・次のnoteで最後になります(当たり前だ、いい加減にしろ)。クライマックスについてなんですが、字幕の台詞の整理とともに、誇大妄想レベルの超解釈が挟み込まれますので、こじつけ大好きオタクの妄言にお付き合い頂ける方だけ読んで頂けたらなあ、なんて思っています。ここまでだって結局テルグ語音声についてる英語字幕を翻訳にかけて自分の中で意訳してる感じなんで、だいぶ解釈としてはあれだと思うのですが。

・そういえばランガスタラムの神戸上映は満席完売だったそうですね! なんて喜ばしい!! 妙典もまた行ってしまおうかなあ…そしてゆくゆくは日本語字幕版の公開を何卒、何卒〜〜〜〜〜!!!!!!


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