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木川かえるカバン

昔、電車で見かけたおじいさんが忘れられ
ない。

阪急電車神戸線。

おじいさんはベレー帽と眼鏡のスーツ姿。
そして、隣りには上品なツイードのシャネル風スーツを着たおばあさん。
夙川か芦屋川あたりで乗車されたお2人。

とにかくおじいさんが醸し出すのはタダモノナラヌ雰囲気。なぜか一瞬で目が釘づけになった。


おじいさんのカバンを見て驚いた。
上質な皮のトートバッグ。
ほどよく使い込まれ、手入れの行き届いた惚れ惚れするようなツヤ感。
そのカバンには、なぜかカエルのアップリケ!

カエル。意外に大きなカエル。
しかも縦長のカエル。
ピョーーンとジャンプした瞬間のカエル。

なぜカエル?

もう目が離せない。

カエルに目が吸い込まれていく。

おじいさんが電車を降りられるまで、ずっと目が離せなかった。


あの日のかえるカバンのおじいさん。

その後折に触れて思い出し、
随分経ってから「もしかするとこの人?!」と思われる人物が現れた。


木川かえるさん。
ジャズ漫画家。




絶対にこの人だ!


あの日乗った電車には戻れないから、確かめることはできないけれど、なぜか強い自信がある。
木川かえるさんに間違いない。はず。


木川かえる師匠。
ジャズ漫画。
どうしても観たい。
YouTubeにも見当たらない。すごく残念だ。

でも、これだけ長い間私の頭の中に残るあの
かえるカバンには何か意味があるかもしれない。
掘っていくと分かるかもしれない。


またかえる師匠の本を読んでみようと思う。
この2冊を。

『かえるも昭和をふりかえる』
『ぼくは人生のすべてを漫画から学んだ』

人生のすべてを漫画から学ぶ...

ふと長新太さんのエッセイの一部を思い出した。

問:精神分析医は多く人間を分析するが、
分析医自身の分析はだれがやるとお思いですか?

答:漫画家がやる。

『海のビー玉』 長新太より



こうして、どんどん読みたい本や再読したい本が増えていく。


どんどん、どんどん。

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