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小山貢弘個展「芽吹きの方法」【前編】

この記事は小山貢弘個展「芽吹きの方法」のために事前に行われた、小山貢弘と篠田優によるインタビュー記事【前編】です。

【作家】小山貢弘
【聞き手】篠田優(写真家・Alt_Medium)

〔作家プロフィール〕
小山貢弘 / KOYAMA Mitsuhiro
1980年生まれ
日本大学文理学部ドイツ文学科卒業
東京綜合写真専門学校卒業/同校研究科卒業

〔個展〕
2018 「Winter Gardens」(gallery mestalla / 東京)
2014 「Botanical Gardens」(gallery mestalla / 東京)
2009 「plant」(gallery mestalla / 東京)

〔グループ展〕
2014  AKITEN 八王子市
2013  AKITEN 八王子市
2008 「鼓動する景色」(バンクアート横浜 / 神奈川)

〔Website〕
http://koyamamitsuhiro.com/

また、展覧会の詳細は下記でご覧いただけます。
https://altmedium.jp/post/647973551533604864/

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1.

篠田(以下S):まず小山さんに聞いてみたいのは撮影場所についてです。
今回の出展作は基本的に河原や中洲、川沿いの街といったエリアで撮られたものですよね?

小山(以下K):そうですね、基本河川敷です。ただ河川敷といっても場所によって河川敷の広さがだいぶ違っています。僕が撮っている場所は、 その広さによって撮影の範囲が変わります。川に向かって撮ることもあれば、逆に川岸の側から住宅地を撮るパターンもあります。ですので、中洲だけを撮ると決めているものではありません。

S:広く言えば河川敷、もしくは川に付随する土地ということでしょうか?

K:そうですね、河川の流域です。

S:その場所に惹かれたきっかけはなんですか?

K:そもそも河川敷を撮影し始めた最初のきっかけは、確か夏に車で橋の上を走っていてぱっと下を見たときに、葉がすごく茂っていたことです。今まで外から見ていた場所を中から見たらどうなるのだろう?という冒険心からでした。上から見た時のフォルムとしても面白かったのですが、ちょうどそれくらいの時期だと、河川敷で熱中症になって人が亡くなる事もあり、そんな危険をはらむ場所が身近にあるのかという思いも湧き起こりました。僕がこうした写真を本格的に4×5カメラで撮り始めたのは2006年頃なんですが、実はそれよりもっと前から35ミリフィルムカメラで河原を撮影していました。

S:つまり最初は写真を撮るということよりも、その土地自体に興味があったのですね。僕や小山さんの子供時代である1990年代には河原に死体が遺棄されたことをモチーフとするような漫画がありましたね。また、河原には自らの手で家を建てて独自に生を営んでいる方たちがいます。その意味ではどこか法律の外にある場所のような雰囲気があるほか、都市の中でも例外的に植物が自生している場所でもあります。たとえば公園における自然は刈り込まれて、人の手で整形されているのですが、河原はそういうわけでもなく無秩序的であり、人の意志から逃れ出ているところがあるといえるかもしれません。

K:言い方は悪いけど、打ち捨てられているような。

S:はい、どこか境界的な部分がありますよね。小山さんが撮っているような場所の魅力について、撮り始めた頃と現在では変化がありますか?

K:そうですね、最初は冒険心や形が面白いというところから入ったのですが、撮り続けていくうちに、いろいろな面が見えてくるようになりました。それこそ境界だったり、こちらが意図していないコンセプトが現れてきたり。撮影しているとそう感じます。たとえば昭島だけ取り上げても季節の移ろいによって変化があるというか。夏はさすがに虫が多くて中に入れず撮れないですけど。
また引いた写真だけじゃなくてクローズアップすることで見えてくるものもあって、例えばさっき篠田さんが仰っていたように、あそこに住んでいた方の抜け殻のような跡も撮ったりもしています。そうしてだんだんと作品が複合的になっていくし、そうした発見が面白いと思っています。

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S:ある種、場所は限定されているけれども、そこには多様な関心の層があるのですね。あたかも限定されたフィールドで様々なことを試しているかのような。
それでは次に、現在の作品に至るまでの作風の変遷を聞いていきたいのですが、まずは手始めとして、なぜ写真をはじめたのかを聞かせてください。

K: 僕は日本大学出身なんですが、大学生になった頃、当初は芝居が好きで、映画とか演劇などに興味を持っていました。それで大学1年生のころ、少しだけ演劇サークルに所属していた時期があったんですが、方向性に少し悩んでいたんでしょうね。丁度そんな折、中央大学に通う友人に「中央大学はお前の家からも近いし、カメラも持ってるんなら、ちょっと写真部こない?」と誘われたので、自分の通う大学とは違う写真部に出入りするようになったんです。その写真部でおこなったフィルム現像と、プリント作業にすごく感動したことがきっかけで、写真にどんどん惹かれていきました。

S:よく言いますよね、像が浮き上がる時のマジックに魅了されたというのは。

K:それから、親が写真好きだったので、少なからず影響もあったと思います。

S:そのあと大学を卒業したところで写真の専門学校に行くことを決めたわけですよね。自分のなかで、写真というものに懸けていくぞというか、もっと深くやっていきたいなという気持ちはいつ頃からあったのでしょうか?

K:写真でやっていこうと決めたのは早かったです。大学一年生の終わりくらいにはもう本当に写真が面白いと思っていて、二年生の時にはほとんど大学に通わずに暗室にいました。写真に専念したいという思いが日に日に強くなって、芸術学部に転部するか、東京綜合写真専門学校に行くかと考えた末に、大学を卒業してから東京綜合写真専門学校の夜間部に入学しました。それが2005年です。

S:かなり急激に写真にのめりこんでいったのですね。夜間部だと、どういう制作スケジュールになるのでしょうか?

K:夜間部は21時くらいに授業が終わって、そのあと現像やプリントをしていました。最初は課題テーマがありましたが、のちに自由テーマになっていきました。その頃、僕はまだ35ミリフィルムカメラを使用していて、確か海岸に行って波や、その波が引いたあとに残ったものを撮っていました。まず最初にコンセプチュアルなイメージが自分の中にあって、そのイメージを得るために撮っていく作業をしていたような気がします。

S:自分の中にある程度こういうもの撮りたいというイメージがあったのですか?

K:同じモチーフで撮ったら、どう見えるんだろうかってことに興味があったんです。

S:眼で見たときと写真にしたときの違いみたいなことですか?

K:そうです、そうです。

S:眼で見たものと、それを写真にしたときの姿には違いがありますよね。ゲイリー・ウィノグランドがいっていますよね、写真になったときの姿が見たいから、写真を撮っているんだ、というようなことを。

【後編へ】

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