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JRの車椅子乗車トラブル

2021年4月の伊是名夏子さんのブログで明らかになったJRでの乗車トラブルの件で伊是名さんがものすごいバッシングにあったのですが、その理由の一つが「助けられた」のに「感謝」がないのはけしからんというものでした。

ブログを読めばわかるけど、これは問題提起をしているので問題点を際立たせるには書く必要のないこともあるわけで、その「感謝」の気持ちもその一つだと思う。

「そもそも」この状況を作り出した人は誰なのか。

伊是名さんは80キロほどの重さの車椅子に乗っていた。しかし目的の駅には階段しかなく、しかも無人駅だったので手前の駅の駅員に一つ前の駅で降りてあとはご自身でタクシーなり使って目的の駅まで行くよう言われました。当然、伊是名さんはそれは困ると交渉し、結果的に目的の駅に職員を集めてもらい、4人がかりで階段を下ろしてもらった。

「車椅子というハンディがあるのに事前連絡を怠って駅員に多大な迷惑をかけたうえに危険な作業を強いて助けてもらった」のに「感謝の気持ちがない」として伊是名さんは激しい非難を浴びた。

しかし目的の駅にエレベーターがあればこのトラブルは起こっていないわけで、駅の設備の問題と言える。ただJRも営利目的の企業であり採算を度外視した設備投資や人員配置が難しい駅もあるだろう。

であれば別途、目的の駅に階段から車椅子を下す設備を用意しておくか、手前の駅で降りてもらうなら目的の駅までの移動手段を用意しておくべきだった。こういった対応が「そもそも」公共交通機関であるJRには努力義務として求められているんです。そう「そもそも」。

その根拠が「障害者差別解消法」で、ここに書かれている「合理的配慮」という考え方。「努力義務だから義務じゃねーだろが」と胸を張ってはいけないんです。この法が制定されてもう8年近く経つんですよ。8年も経ってるのに代替手段すら提案できないっていうのは怠慢と言われても仕方ないのではと思います。

そう、「そもそも」この状況はJRがつくってしまったと言えるのです。

私を含む多くの車椅子ユーザーは事前にがっつり調べて必要なら連絡もとり、万全の予定を組んで出かけるでしょう。それはこのようなトラブルを回避するためですが、言い方を変えれば、綿密な準備をしないと対応してくれずトラブルになる可能性が極めて高いと知っているからです。

JRはこういう車椅子ユーザーたちの自己防衛のための行動をいいことに今まで対策を怠ってきたのではないか、「車椅子ユーザーはスムーズな移動のために必ず連絡してくるわけだからその対応だけをしっかりすればよい」そのように考えていたのではないかと勘繰ってしまう。対応だけ見ればそう思わざるを得ない。

いや、設備も代替手段もほんとに無理な場合もあるでしょうよ。でも無理だという答えは真剣に検討せず出すべきでないし、真剣に検討しないとなぜ無理なのかも説明できないでしょう。今回のことだって説明できないから結果的に危険な階段を下すことになったのではないですか。

今回非難を浴びた伊是名さんは周到な事前準備が必要な現状、つまり車椅子だからという理由で制約を受けていることに対して、また合理的配慮が真剣に検討されていない現状について「このままではダメですよね」とダメ出しと言える問題提起をしたんだと私は受け止めました。

これを機に真剣な議論と具体的な対策が進展することを願います。

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