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Life Scienceアセットとは?【Non-Traditional不動産アセットタイプ①】

1.Non-Traditional アセットタイプとは?

J-REITのポータルサイトのJ-REIT.COMでJ-REITのすべての銘柄の基本的な情報を見ることができるが、アセットタイプ特化型REITの類型は、主に事務所、住宅、商業、物流、ホテルの5類型である(1つだけヘルスケアがあるが)。

海外でもこれらは"Traditional"な不動産タイプの5類型とされているが、それに対して海外では"Non-Traditional"なアセットタイプが脚光を浴びている。

例えば米国でNCREIF(National Council of Real Estate Investment Fiduciaries )という団体が、NFI-ODCEという、オープンエンドファンドの不動産ファンドのインデックスを作っている。
各オープンエンドファンドはこのインデックスの超過を運用目標とするわけだが、近年のトレンドとしてはIndustrial(物流)・Multifamily(賃貸住宅)をオーバーウエイト、Officeをアンダーウエイトするとともに、Non-Traditionalアセットをオーバーウエイトすることが、安定的にインデックスをオーバーパフォームする鍵のひとつとなっている。

Non-Traditionalアセットの具体例としては、ライフサイエンス、メディカルオフィス、シニアハウジング、セルフストレージ、学生寮、データセンターなどである。
データセンターは日本でもだいぶメジャーになってきているが、その他のアセットタイプについてはまだ馴染みがないため、ここでまとめてみることにした。それぞれについて論点が多そうなので、何回かに分けて述べる。

2 Life Scienceアセット

日本で"ライフサイエンス"といっても馴染みがないだろうが、米国ではNon-Traditionalタイプのアセットとしてはメジャーになりつつある。

"ライフサイエンスアセット"は、バイオテクノロジー、医薬品、バイオメディカル技術、ライフシステム技術、栄養補助食品、バイオメディカルデバイスの製造等を行う企業に、ラボスペースを賃貸することで、賃料収入を得られるアセットタイプであり、立地のみならずライフサイエンス事業への高度な知見を必要とされることからホテル同様"オペレーショナルアセット"の一種と言える。

伝統的アセットは金利感応度が高く2021年の金融相場により高パフォーマンスを得られた反面、2022年のインフレを背景とした金利上昇局面ではパフォーマンスがやや軟調になる見込みであり、ややボラティリティが高い
一方このアセットタイプは、賃料を支払う企業の産業の勢いに依拠するオペレーショナル性が高く、金利への感応度が伝統的アセットに比して低くボラティリティが低いことから、伝統的アセットに対するリスクヘッジ的観点からポートフォリオに組み入れようというインセンティブが働く。

なお、「ラボスペースがオフィスやレジのような普通の不動産アセットのように場所に依存するのか?」という疑問がわくが、ラボスペースは関連産業との位置関係、優秀な科学者を引きつけるための魅力といった変数が重要なことから集積の経済が働き、クラスターと呼ばれる特定立地を形成し、特にBoston, San Francisco, San Diegoがメジャーなマーケットとなっている(参考 : 年収は「住むところ」で決まる)。

CBRE Life Sciences Trends 2021, 従業員数
CBRE Life Sciences Trends 2021,供給床数

近年米国ではこのライフサイエンス産業の成長が著しく、Boston, San Francisco, San Diegoのメジャーマーケット以外にも、Raleigh-Durham, Philadelphia, Washington, D.C.が急速に成長しており、またDallas, Atlanta, Phoenixなど生産人口増加の著しいサンベルトエリアがエマージング・マーケットとして注目を集めている。

3.まとめ

ひとまずNon-Traditional Assetの一つである"ライフサイエンス"を紹介した。近年は「オペレーショナルアセット化」がよく言われており、つまり場所がすべてではなく、テナント事業に対する深い知識が必要とされるアセットタイプがメジャーになりつつある。

例えばデータセンターなど正直"コレは不動産というよりは一種のインフラ事業では?"という気がしないでもないが、今後のキャリアの展望を考える上で、"コレは不動産なので守備範囲"、"コレは不動産ではないので守備範囲外"といったように自分の枠を規定するのは望ましくないと思うので、柔軟に知見のカバレッジを広げていきたいものである。

参考
・JLL, 2021 Life Sciences Lab Real Estate Outlook, 
https://www.us.jll.com/en/trends-and-insights/research/life-sciences-real-estate-outlook

・CBRE, U.S. Life Sciences Trends 2021, https://www.cbre.com/insights/figures/us-life-sciences-trends-2021

・MILLIONACRES, What Is Life Science in Real Estate? A Guide for Potential Investors, https://www.millionacres.com/real-estate-investing/what-life-science-real-estate-guide-potential-investors/


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