覚醒脳の作り方

第1部 最高のパフォーマンスを発揮する
知能面でも実績全般の面でもとくに目立った差は見られない。両者はただ最高のパフォーマンススイート・スポットを探せ いざという時に最高のパフォーマンスが発揮できる、最適な神経科学の割合とは
「スイート・スポットを探せ」のポイント
全ては覚醒レベル次第:最高のパフォーマンスを発揮するためには、感情面での覚醒レベル(ストレス)を最適な状態にする必要がある。

楽しむ:私たちが楽しさを感じるとき、脳ではドーパミンが放出される。楽しむことを抜きにして最高のパフォーマンスを発揮するのはほぼ不可能。

自らにチャレンジを課す:最高のパフォーマンスは、退屈を感じているときやパニックに陥っているときではなく、少しだけ負荷を感じているときに生まれる。そのようなとき、のうはちょうどいい量のノルアドレナリンを放出し、自分がベストの力を尽くせる状態にしてくれる。

重要なことにフォーカスする:一度に複数のことをやっているようだと、最高のパフォーマンスは発揮できない。あれこれと気が削がれるようなことがなく、集中した状態で一心に取り組めていてこそ、最適なパフォーマンスが発揮できる。
向き不向きは人それぞれ:ある人によってはやる気が出る状況が、別の人にとっては負担が大きすぎることがあるように、最高のパフォーマンスを発揮しやすい条件は個々人で異なるという点は意識する。

最高のパフォーマンスのタイプには優劣はなく、特徴が違うだけ:パフォーマンス曲線のグラフにおいて、左右のタイプにはを発揮できる条件が異なっているだけ。

性別や年齢がパフォーマンスの特徴に影響する:女性は一般的にパフォーマンス曲線が左側に寄りやすく、男性は平均すると右側に寄りやすい。年齢で見ると、およそ誰もが年を取るにつれてグラフが左に寄っていく。

自分のパフォーマンスの特徴に合うように環境を調整する:もしあなたがリーダーであるなら、社員1人ひとりのパフォーマンスの特性に合わせた働き方ができるような職場環境を作っていく。労働条件にも柔軟性を十分に持たせて、全員がより最高のパフォーマンスを発揮できるようにする。

人生を一変させるためではなく、微調整するためにメンタル・トレーニングを使う:まずは、自分にとってちょうどいい環境を見つけること。そのうえで、メンタル・トレーニングで覚醒レベルを調整するようになると、まさに必要なときに自分の出せるようになる。

どういう状況下で最大限に力を出せるかは、個々人によってかなりの違いがある
脳についての知識と、その知識を使いこなす能力がなければ、チャンスは無駄になり、成果を手にできない
最高のパフォーマンスは、集中力と警戒力が適度に高まる程度の覚醒状態にあるときに発揮される。 「大変だけど、なんとかできるだろう」と感じるくらい
覚醒のレベルが不十分だと、退屈を感じて無関心になってしまう。
過度な覚醒状態にあるときは、集中力が落ち、ストレス過剰になったり、ひどいとパニックに陥ってしまう。

最高のパフォーマンスを生む3つの神経伝達物質
「ドーパミン」「ノルアドレナリン」「アセチルコリン」 最高のパフォーマンスを作るDNA
ドーパミン=興奮、目新しさ、リスクといった要素がついてまわるので、それだけ人の興味や想像をかき立てるものがある。
脳とパフォーマンスの観点で言えば、ドーパミンはとにかく「楽しさ」を司る化学物質

気持ちが急くのはノルアドレナリンのせい
一番の目的は生存を維持すること
注意力や警戒力をコントロールする
ノルアドレナリンの放出量は、「ちょっと負荷がかかっている」と感じるくらいが最適、
「できるだけうまく、早く、少ないリソースでこなしてやろう」と自分を鼓舞するときにも、放出される

アセチルコリンー集中力が研ぎ澄まされる
最高のパフォーマンスを発揮する秘訣を押さえている
どのようにすればアセチルコリンを放出するスイッチをオンにできるのか?
運動すること。何か重要なこと、驚くようなこと、あるいは新しいものに自らをさらすこと。
ドーパミンを脳が放出しやすい状況を作る。

画一的な基準は存在しない
最適な覚醒レベルについての共通基準などは存在しない

自分のポジションを見つける
パフォーマンス曲線の位置を自覚する
最高のパフォーマンスを発揮するためには、自己認識がきちんとできていることが欠かせない。
取り組んでいるタスクの内容に応じて、自分のパフォーマンス曲線のポジションを正確に自覚しているかどうか、その人の成功は大きく成功は大きく左右される。
自分の強みと弱みについて早い段階で自覚し、強みに磨きをかけることが重要
自分の覚醒レベルを把握する

人が成功できるかどうかは、何よりもその人のパフォーマンス特性に合う環境を見つけられるかどうかにかかっている。
自分の気が過度に張り詰めたり、張り合いがなくなったりする真因がどこにあるのかを突き止め、状況の改善に取り組む。

最高のパフォーマンスを発揮することを目標に据えるのはいいが、最も大事なタイミングを狙って、パフォーマンス曲線のピークを持っていくのが肝心。
自分のパフォーマンスを理想に近づける
確実に自分に合っている環境に身を置く
特定のタスクや状況に応じてパフォーマンス曲線のポジションを微調整する、強力なテクニックを使うとき。ただ、そこへ踏み込む前に、今一度自分が正しい場所にいるかどうかを確かめる。

覚醒レベルを上げる
ちょっとした脅威を頭に思い浮かべると、ノルアドレナリンが放出されて、覚醒レベルを上げる効果が得られることがある。退屈で気分が乗らず、モチベーションが上がらないときときや、仕事そのものを面白いと思えないときは、ドーパミンの分泌量が足りないのかもしれない。

覚醒レベルを下げる
落ち着きを取り戻すべく、机の上を整頓したり、不要なメールを削除したり、「自動操縦」モードで何も考えずにできる雑務を片付ける。自分の手綱を握れていない感じがするなら、自分のコントロールが利くプロセスに集中する。
私たちは気分の浮き沈みによって明晰な思考ができなくなることがある
自分の頭の中や外部環境において何か気が散るようなことがあると、本能的に強くそちらに注意を引かれてしまう
最高のパフォーマンスを発揮するためには、感情を制御し集中力を保つ術を身に付けなくてはならない

感情を制御せよ
ポイント
理性と感情:脳の中では2つの重要な領域が対立構造をなしている。前頭葉は理性的に「思考する部分」で、一方の大脳辺緑系は感情の処理センター。この2つの領域が争い始めると、大脳辺緑系のほうが必ず勝つ。

脅威と報酬:大脳辺緑系では、脅威と報酬という原始的な2種類の反応が行われる。脅威反応の状態にあるとき、前頭葉は一時的にシャットダウンする。報酬反応の状態にあるときは、逆に思考力は向上する。

感情のレジリエンス;ストレスがもたらし得る損害への抵抗力をつけるためには、よく食べ、運動し、十分な睡眠を取ることが重要である。

身体を変えて、思考を変える:感情の制御には2つの方法がある。思考のパターンを変えることと、ストレスに対する反応を変えること。

本物になるまで模倣する:脳によって身体は動くが、両者のコミュニケーションは双方向に行われる。自信たっぷりの姿勢や満たされた笑顔を先に作れば、その作られた雰囲気をもとに脳が本物の反応を作り出す。

感謝をするのを忘れない:毎日感謝する時間を取れば、幸せの設定値が25%も上昇すると言われている。

認知の柔術を実践する:ストレスに対処する際は、熟練の武道家が敵をいなすときの動きを見習う。直接ぶつかるのではなく、相手の力の方向を変える。ラベリングやリフレーミングの手法を使って、ストレスのパワーを逆に利用する。

ただ名前をつける:ストレス反応が起きたときは、感情のラベリングをするだけで、大脳辺緑系の過剰反応を一瞬和らげ、その隙に理性的な脳のコントロールを取り戻せる。

レモンからレモネードを作る:脅威は時にワクワクするような挑戦になる。挫折の経験が思いがけないチャンスになることもある。ストレスのかかる状況に対してどういう捉え方をするかによって、脳と身体の反応の仕方は劇的に変わる。

脳の原始的なネットワーク
脅威回路ーとにかく生き延びる
報酬を追い求めるよりも脅威から自分の身を守ろうとする指向が強い
「私たちは敵にあったーそれは私たち自身だった」
脳にとっては報酬よりも脅威のほうがいっそう重要に感じられる

人の脳の大部分は遠い昔の時代の産物
ストレスに対して反応する「道具」のほうの進化は止まっている
闘争・逃走反応は恐れの感情が引き金となって起きるのに対し、報酬回路は満足感と紐づいている。ほかの人に受け入れられたいと思う気持ちも、報酬反応やってくる。
脳が報酬に反応すると、新奇探索性の神経伝達物質で最高のパフォーマンスにも欠かせないドーパミンが放出され、ポジティブな感覚が生まれるが、薬物を摂取したときも報酬回路は同じように反応する。一度ポジティブな体験をしても、時間が経ってまた同じ量のドーパミンを放出しようとしたら、さらにすごい体験が必要になるのは、薬物と同じ。

いがみ合う脳
脳について語ることは、脳の中で起きているある種の紛争について語ることに等しい。
脳の中の原始的な部分がトラブルを引き起こす前に、いかにより良心的な部分によってその暴走を止めるかが肝。
トラブルは2種類ある。
・感情の爆発
・抑制的な反応
後者は理性的な反応のように見えるものの、長い目で見ると身体と脳にダメージを与えやすい。
感情を制御するうえでの鍵は、まずはストレスへの対応力を高めて自分を守ること。
脳の中でも相対的に強い、原始的かつ無意識の部分を賢いやり方で抑え込めるよう、弱いけれどもっと理性のある、意識的な領域を鍛えなくてはならない。

感情のバランスを取って自分を守る方法
運動、食事の質、十分な睡眠
睡眠の重要性
原始的な部分を呼び起こす
睡眠を取っていないと、闘争・逃走反応を引き落とす中脳が活性化し、慎重かつ論理的な思考力を阻害するとともに、気持ちを静める作用にある神経化学物質の放出をも抑制する。
睡眠が足りていない状態では、ほかの人の顔から感情を読み取る能力が低下する。
健康な人でもおかしくなる
睡眠不足、睡眠の質が悪いと気分の落ち込みに対してより強く反応しやすくなり、自殺のリスクまで高くなる。
睡眠不足の人の脳は、普通に睡眠が取れている人の脳と比べると、感情を司る部分が60%以上反応しやすい状態になる
睡眠の利点 睡眠がたっぷりとれていれば、こうしたストレスを和らげるのが可能
人生において、ストレスや腹立たしいことが起きるのは避けられないが、よく眠れている人は、これらをうまくやり過ごせるようになる。
私たちは、過去にストレスを感じた記憶の追体験に、今という時間をいたずらに費やす傾向がある(脅威反応のスイッチが入ってしまいやすい)。

エクササイズの効果
長期的記憶力、論理的思考力、注意力、問題解決力や流動性知性(素早く判断する能力に関係する)が試されるタスクや、抽象的な思考力、新しい問題を解くために過去の学習内容がその場で対応する力まで、運動する人はあらゆる面で勝っている。=脳をよりコントロールできている。
運動は、健康の維持・向上に長期的に役立つだけでなく、短期的にもストレスによる心身へのダメージを改善する強力な効果がある。
普通に運動するだけでもストレスへの十分な防御策になるが、屋外で運動できるとさらによい。何かしら自然に触れていれば、癒しの効果が得られるから。

食事とストレス
感情が不安定になるのを防止する栄養の取り方のポイント
栄養価が高い食べ物から十分なエネルギーを摂取し、脳を機能させるための燃料が必要なときにすぐに取り出せる状態を作ること。
基本的には、栄養豊富な野菜や果物と、適量のタンパク質、オリーブ油やキャノーラ油といった健康によい脂肪酸を摂っていれば問題ない。

脳を鍛える
身体から鍛える
感情が身体に影響を与えるだけでなく、その逆もまた起きうる
例えば、幸せに成功している人に「なりきって」表情を作ったり姿勢を整えたりすると、自分は実際にそういう人なのだと脳が思い込むようになる。

ボトックス効果
幸せな気分だと笑顔になるが、笑顔になることで幸せにもなる。

姿勢の力
人の印象は、役職のランクよりも身体の「姿勢」に大きく左右される。
「大きく見せる」姿勢のほうが、上位の役職にあるのに縮こまった姿勢でいる人よりも、自信や力強さを感じる。

抱擁の効果 心をゆったり落ち着かせる効果
逆に抱きしめられたりすると、「愛情ホルモン」として有名なオキシトシンが大量に放出される
(状況次第では、相手が脅威反応を示す場合がある)

脳はどうしても「ネガティビティ・バイアス」(マイナス情報により注意を引かれやすい傾向)に従うので、見知らぬ人と初めて会うときは相手を友と見なすよりも敵として見てしまいやすく、そうではないことがわかるまでその悪印象を払拭できない。
→握手をする習慣は、歴史的に見ると自分が武器を持っていないことを相手に示す効果があったが、神経科学にもメリットがある。握手をすれば適度にオキシトシンが放出されるので、脅威反応が和らぎ、相手とのつながりをより感じやすくなる。

ストレスのスイッチをオフにする
→深い呼吸、呼吸の質が変わる

「身体を変えれば脳も変わる」そうすると、脳はたいてい後からついてくる。

ボジティブに考える
ポジティブ思考論「物事の見方や向き合い方が変われば人生が変わる」
信じることから始める
健全な自尊心が必要であり、そし自分に対してポジティブなイメージを持てないのなら、まずは心の奥底で信じ込んでしまっている自分自身への思い込みを変えなくてはならない。

毎日が感謝祭
世界の主要な宗教のほとんどが「感謝」に重きを置いているのは、偶然ではない。感謝とは、我慢したり禁止したりすることではない。
感謝とは、物事の捉え方を変える試み

感謝の科学
自分の行動や振る舞いに影響を与え、最終的には自分自身に対する考え方や感じ方も変わる。

感謝のワーク実践法
簡単なものとしては、一日に1回、感謝できることを3~5個ほど書き出す方法がある。

感謝リストに何を書くか?
「感謝」とはどういうものを指すのかを正しく理解するためには、逆にどういうものが該当しないのかを明確にする必要がある。まず、自分と他の人を比較することは、感謝する行為には当たらない。自分の傲慢さを増長させてしまう恐れがある。また、これまで自分が達成してきた成果を数え上げるのも、感謝とは異なる。
感謝とは、自分の外にあるもの、自分が取り巻くものに対して捧げる気持ち
典型的には、自分の世界のなかで、「これがあったおかげで、人生がよりよく、より豊かに、より意味のあるものになった」と感じる人や物事に捧げる思い。

成功体験を積み上げる
ポジティブな姿勢をずっと維持するうえで、確固たる成功体験を積み上げていくことに勝る方法はない
「自分には成功体験がないの蓄積がない」と感じる人はどうしたらいいだろうか?そんな人が、自分の人生や行動に対していつでもポジティブに考えられるようになるために、できることが2つある。1つ目は、何かミスをしたときに、一時的に起きてしまうものだと割り切って、次はもっとうまくやろうと自分に言い聞かせる。楽観的な人は、うまくいかないときもそんな風に考えて乗り越えている。2つ目は、失敗を経験したら、それも人生を通じて見ればある1つの「点」にすぎ、乗り越えられないものではないと思うようにする。
楽観的な人は、何か挫折したとしても、その状態が永遠に続くわけではなく、いつか過ぎ去るはずだと考える。そしてまた、次の行動へと進んでいく。

1.過去の成功を思い出す:過去の成功体験は、現在の困難を乗り越えるバネになる。
2.自分にとって都合のいいように他者と比較する:自分と同じような挑戦をしている人がまわりにいないか探してみる。趣旨としては「あんなやつでもできるなら、自分にできないわけがない」ということ。自信をつけたいからといって、いたずらに他人をはめる必要はない。
3.信頼できる人からサポートしてもらう:自信がつくような的確な後押しを適切な人からもらえると、自分を疑う気持ちを自然と消えるケースは多い。
4.調子がよければ成功できる:目の前の壁の大きさや、それを乗り越えられる確率に対する感じ方は、そのときの気分で大きく変わる。例えば、休息やリラクセーションの時間をずっと取らずにいると、自分の情緒や身体の状態、ストレスのレベルにも影響が及んでしまう。

「インポスター症候群」を克服する
インポスター症候群とは、自分の能力を疑い、不安症やときにうつ病を患ってしまう精神的症例
70%程度もの人が、インポスター症候群の辛さを人生のどこかの時点で経験すると言われている

なぜそうなってしまうのか:まず経験豊富なリーダーたちは最高の決断を行う際、自然とエキスパートとしての自らの勘を頼りにする。ただ、せっかく素晴らしい選択をしているのに、その際の判断プロセスが健在意識にはほとんど記憶されないため、後で再現しようとしてもなかなか思い出せない。そして、思い出せないことへの不安が脳の視床下部を刺激し、それによって冷静かつ論理的に判断する能力が阻害されて、「自分はできない人間だ」という思いが強くなってしまう。
 したがって、自分の成功要因をスマートに説明できないからといって、そのような成功など虚像にすぎないと断じてしまう必要はない。むしろそれは、自分には重要な決断を無意識に下す能力がある証拠かも知れない。

インポスター症候群の人の思考:成果を上げても、それが不安で少しでも和らぐかというとそうではなく、むしろいっそう追い込まれてしまう。成功の規模が大きくなればなるほど、「今度こそ自分がまわりを欺いているのがバレてしまうのでは」という非合理的な不安がますます強くなってしまうから。逆に、自分の業績が正当に評価されなくても、彼らは内心で納得してしまう
完璧主義にとらわれているケースも多い
まわりに助けを求めず、すべてを正しくやり遂げなくてはという考えで頭がいっぱいになっている

利点:モチベーションが湧いてくる場合もある。
大抵の人は自分の能力を過信しやすいところがあるので、自分の能力を疑う姿勢を持つことで、自信過剰になっていないかを省みるきっかけにもなる。

インポスター症候群を克服する:
受け入れる:自己受容、インポスター症候群という心理状態について知り、それが自らの個性の一部を構成していることを認める。
人生の棚卸しをする:自分のよい点ともっと頑張らなくてはならない点の両方を書き出す
実績を思い出し、自分の強みを改めて認識する
比較を止める:主観にすぎず、正確な評価であることはめったにないし、役に立たない
セカンドピニオンをもらう:自分に厳しすぎる場合は、外から自分がどのように評価されているのかを振り返る。フィードバックなどを、自分の実施の能力を測るうえで、自己評価よりも信頼できるものとして受け止める。
1人で抱え込まない:自信が持てず苦しいなら、黙っていてはいけない。信頼できる人にその気持ちを打ち明ける。不安を言葉にしてみたら、案外そのほとんどは考えすぎだったり、何の根拠もなかったりする。
メンターを見つける:頼りになる導き手がいれば、インポスター症候群の呪縛から自分を解放する助けになってもらえる。
メンターになる:後輩と一緒に仕事をしてみると、自分がどれほどのものを積み上げてきたか、いかに価値のある知恵を伝えられるかを実感するきっかけになる。
感謝を伝える:褒めてもらったらありがたく受け取るようにすれば、称賛を与える人と受け取る人の双方にとってプラスになる。
お祝いをする:小さな目標を1つ達成すれば、次の挑戦に進む前に自分を褒めて達成感を味わう。大きい目標を達成したら、特別なお祝いのための時間をしっかりとって、自分にご褒美を与え、成功の喜びをじっくり噛み締める。

「認知の柔術」を使う
ストレスにどのように対応するかが問題。
脳の本能的かつ無意識の部分が素早く反応するタイミングと、もう少しスピードが遅くてより意識的な部分がその反応を解釈するタイミングに時差があるという点がポイント
このほんの少しの時差をうまく利用できるかどうかが、効果的に感情を制御し、ストレスがもたらす害を和らげられるかどうかの肝となる。

相手の強さを無力化したり、逆に相手の力を利用したりする方法を見つけられれば、勝てる可能性は高くなる。

なぜ抑制するとうまくいかないのか?
ある特定のもの(=像)について絶対に考えないようにしようと思えば思うほど、かえってそれが頭から離れなくなってしまうように、ストレスについても同じ。
ストレス抑制しようとするよりも効果的で、効果も高いのが、そのストレスの持つ力の向きを変えることだ。
認知の柔術における2つの秘策が、ラベリングと再評価
ラベリング:ストレスに名前をつけると消えてなくなるわけ
ラベリングとは、自分の感情に名前をつけたり説明をつけたり説明を与えたりすることを言う。(気持ちを言葉にする)
ストレスの原因をラベリングすると、闘争・逃走反応を司っている脳の視床下部の活動レベルが低下する。

再評価:レモンをレモネードする
リフレーミング(物事の捉え方を変えて、別の枠組みで捉え直すこと、認知の再評価)の手法を使って、ストレスを和らげるだけでなく、人生そのものをガラリと変えた人の話は、有名無名を問わず、事例には事欠かない。

フォーカスを研ぎ澄ませ
注意散漫にならずに大切なことに集中するためのコントロール力を身に付ける
ポイント
実行機能:計画を立てたり、粘り強さを発揮したり、研ぎ澄まされた注意力を維持したりする能力は、すべて前頭前皮質に由来する。
注意散漫の誘惑:まわりにあれこれ気が散るものがあると、どうしてもそちらに意識が向いてしまいやすい。仕事の場面でそうなってしまう主な原因は2つある。1つはさまざまな人やもののせいで不意に作業の手を止めざるを得ないケースが多いこと、そしてもう1つは、マルチタスクの弊害。
マルチタスクの神話:マルチタスクは、生産性を下げる方向に作用する。タスクの完了までにかかる時間は50%長くなり、ミスをする確率も50%増しになる。悲惨な事故の事例について、その原因はマルチタスクにあるとする指摘も多くなされている。
マルチタスクは実際に可能か?:現実には、脳が複数のタスク間で意識を高速であちらこちらに切り替えているだけ。これだと集中力の面でも生産性の面でも多大なコストがかかり、極めて非効率なプロセスになっていると言わざるを得ない。
気が散るものを我慢するのだはなく、排除する:注意散漫になる要因の意思の力をもって無視しようとすれば、マルチタスクと同じくらい脳に負担がかかる。うまく集中状態を作るためには、重要なタスクや問題にとりかかる前に、気が散る要因になりそうなものを、頭の中とデスクの上からすっかりなくしてしまうことが肝心。
自分との会議の時間を定期的に作る:集中力を研ぎ澄ませるシンプルな方法として、1人になれる時間を定期的に設けるという手がある。仕事スペースのドアを閉めたら、電子機器が鳴らないようにして、自分のためだけの思考に専念する時間を数時間でも数分でも取るようにする。
マインドフルネスの魔法:マインドフルネスという強力なメンタルトレーニング方法について、その効果を肯定する科学的な証拠は山ほどある。マインドフルネスを実践することで、脳の神経回路が書き換わり、パフォーマンスが向上して集中力もアップする。
究極のパフォーマンスを生む「フロー」:完全なる集中状態と言われるフローは、自分のスキルと、自分が直面している課題のレベルがちょうどいいバランスにあるときに訪れる。高いスキルを有する人が、ほんの少しプレッシャーを感じていると、まさに必要なタイミングでフローに入りやすい。
集中力を維持する方法
気が散る要因に対して、何とかしてそれを意識の外へと締め出そうとするのではなく、その存在そのものを取り除くことに注力する。それとともに、今、目の前の集中するべき活動にこそ一番面白さや楽しさを見出せるようになり、さまざまな工夫を凝らしてみる。

時間を区切って仕事をする
20分ルールを試す
複数のタスクについて短時間であれこれ作業を切り替えるより、20分間はほかのものに一切手を出さず、1つのタスクにだけ専念する。

マインドフルネスを実践することで、脳の中では神経回路を動的に配線し直す動きが促進される。
自分の呼吸のリズムや、足裏に感じる床の感触など、ある特定の感覚に意識を集中する。
毎日繰り返す
マインドフルネスの簡単なやり方ーSTOP瞑想
S=Ttop(止める)
T=Take a breath(呼吸をする)
O=Observe(気づく)
P=Proceed(進める)

沈黙は金
沈黙の時間を、話している時間と同等かそれ以上に設ける。
全ての意見をじっくり咀嚼して、自分自身の感じ方に照らし合わせて考えるための十分な時間を確保できる。
発言数そのものは少なくなる一方で、その場に出てくる意見はより重みと価値のあるものになり、全員が集中しながら傾聴するので、より注意深い検討ができる。
他によくある会議と比べてお互いを尊重しようとする参加者たちの姿勢が感じられる。
いったん立ち止まって黙考する時間があると、感情の制御がよく働いて、口論が発生しにくくなる。

単なる集中からフロー状態へ
フロー 究極かつ最も効果の高い集中状態
自分が何かに没頭していて、ほかのことは一切頭から消えているという主観的な状態を指す。

フロー状態になるために
ゴールが明確に定義されていること、、適度な難易度が設定されていること、そしてわかりやすい手応え(フィードバック)が即座に得られることが必要

明確なゴール設定
ゴールを視覚的に思い浮かべれるかどうかによっても、効果が大きく変わる場合がある。
例えば「2年以内に収益を倍にせよ」と言われれば、一見、やるべきことは明確なようにも思えるが、やるべきことは明確なようにも思えるが、それで仕事に集中できるかというと、まだ難しさが残る。ここで、数字としてのゴールではなく、社長室に「チーム・オブ・イヤー」と銘打たれたチームの写真が飾られている様子を想像してみたら そのときこそ、フローが訪れる。
ゴールがひとたび明確なものになれば、気が散るだけで関係ないものと、目標を達成するのに必要不可欠なものとを区別するのも簡単になる。

第2部 脳を変える
習慣を管理せよ 脳のオートパイロット機能を活用する
ポイント
習慣を変えるのは難しい:脳はできるだけ労力のかからない道を好む。新しい神経回路を開拓するためには、それだけ努力する価値があるという確信が持てなくてはならない。
習慣の変え方:1)ゴール設定とモチベーション、2)始めること、3)継続すること、の3つ
感情を注ぎ込む:理論上は良くなさそうに思えるゴールであっても、それだけでは成功する保証はない。うまくいくためには、そのゴールに自分の感情が宿っていないとだめ。
自分にとってのメリットはあるか?:感情面での利害に関わる要素がなければ、人はなかなか変わろうとしない。何かしら意味のある報酬や脅威の存在が予期されない限り、形だけやっているふりをして、必要な変化を起こすための努力はしようとしないのが人の常である。
最初のステップが最難関:新しい行動を始めるうえでの最大の障壁は、何と言っても先送り癖。変化を嫌う脳の性質の裏をかくために、非常に小さいステップを踏んでいくカイゼンの手法(小さなステップを積み重ねる取り組み)を使う。これを活用すれば、脳の原始的な警報器を鳴らすことなく、徐々に進歩を積み重ねていける。
習慣の継続はきっかけ次第:変化をしっかり定着させたいなら、やる気だけでは不十分。身につけたい新しいルーティンを、きっかけとなる行動と紐付けなくてはならない。このきっかけとルーティンの組み合わせは、専門用語では「実行意図」と言うが、「if -then」プランや「when-then」プランという呼び方で広く知られている。

たいていの習慣は、3つの要素でできている。
「きっかけ」「ルーティン」「報酬」
「きっかけ」特定の刺激や、それらの刺激の組み合わせ。
「ルーティン」習慣そのもの
「報酬」ルーティンを実行する動機や、大脳基底核に記憶しておくための誘因として、習慣が身に付くまでのあいだに機能するのが、報酬への期待である。

習慣を変える
1)ゴール設定とモチベーション、2)始めること、3)継続すること
ゴール設定とモチベーション
よいゴール設定というものはたいてい、2つの性質のを満たしている。
1つ目は、そのモチベーションに感情的な根拠があること。そして、2つ目は、ゴールを設定した人自身が、そのゴールを達成するシーンのみならず、達成までのプロセス(こちらの方が重要)を明確に思い描けること。

ゴールとの感情的なつながりを設定する
ゴールを設定するときは、なるべく具体的に、「自分ならでは」の内容にして、さらにはそれを書き留めておいた方がいい。また、ゴールの達成までのプロセスとしてのアクション・アイテムも決めておく。

カイゼンはどのようにして日本の産業の姿を変えていったのか?
1.小さな問いを立てる:このゴールに近付くために、今すぐできること小さなステップは何か?
2.小さく思考する:先ほどの問いに対する答えが見つかったら、次は実行する段階を思い描く
3.小さな行動を起こす:重要なのは進歩を少しずつ継続していくこと
4.小さな問題から解決する:
5.報酬を与える:習慣にあたる行動のほとんどは、何かしらの報酬への期待をきっかけに始まる。小さな報酬を考える際には、ゴールに照らしてみたときにそれが習慣に対して、適切なものになっている必要がある。
報酬が小さいほうが、ときに大きな報酬よりもよほどモチベーションの源泉として機能する。
6.小さなチャンスを見つける:小さな物事が、ときに大きな違いを生む場合がある。
大きな変化を狙ってもうまくいかないことが多い理由とは?
既存の仕組みを抜本的に改革しようとして、抵抗に遭う。こういうとき、人は強固なまでに防御的になる。ほとんどが単なる直情的な反応にすぎない。
起こそうとしている変化は、彼らの脳では「脅威」としてとらえられてしまう。
報酬が明確で、すぐに手に入るという見込みでもない限り、脳は進化の都合上、ほとんど変化を脅と受け取るように条件付けられている。
人が特定の行動に慣れていくと、そのプロセスは習慣化され、それに要するエネルギーも効率化されていく。

継続する
いったんこうと決めた行動を継続する鍵は、その行動に伴うエネルギー効率を高めること。
続けたいと思っている行動を習慣に変えれば実現できる。
決意した行動を継続するには、それを何も考えず自動的にできるようになるのが一番。そのために必要なのが、潜在意識に特定のルーティンを開始するように伝える分かりやすい信号、つまり「きっかけ」。

自分だけの習慣を作る「if-Then」プラン
実行意図は、「if-then(もし~なら~する)」プランや「with-then(~するときは~する)」プラン
個人の成長目標をSMART法「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「達成可能(Attainable)」「現実的(Realistic)」はゴールを明確に定義できているようにも見えるが不十分
実行意図を活用する。(具体例:上司がペンを意図的にカチッと鳴らすのを、部下が発言するタイミングの合図にした。きっかけを設けたことで、部下のなかに「会議で発言する」というルーティンができた。)

習慣を変える3つのD
「Describe(説明する)」「Distract(気を逸らす)」「Delay(遅らせる)」

潜在意識を解放せよ 顕在意識を直接使わずに、最高の意思決定を最速で行う方法
ポイント
主導権を握るのは潜在意識:顕在意識で判断したと思っているようなことも、その大半は潜在意識によって行われている。

潜在意識を解き放つ:与えられる時間や情報が限定的なものだと、熟練者はかえってより良い判断ができるケースが多い。厳しい制約下に置かれると、脳は専門的知見が蓄積されている大脳基底核にアクセスし、そのパワーとスピードと処理能力を活用せざるを得なくなる。

熟練の間を信頼せよ:大脳基底核の馬力とスピードは顕在意識に勝る。そのため、熟練者が直感的判断をすると、慎重な検討を経てようやく辿り着く合理的な判断よりも結果的に優れていることが多い。

初心者は時間をかけるべし:リーダー自身の経験が浅い場合は、リーダーに専門的知見がある場合とは異なり、判断を下すのにより時間と情報が必要になる。スピードが遅く処理能力も小さい前頭前皮質に頼りながら検討を重ねなくてはならない。

熟練者の判断に説明は不要:熟練者は無意識のうちに最良の判断に至ることが多く、どうやってその判断に辿り着いたかを説明するのが難しい。直感的判断の正当性について事後的な補足を求めてしまうと、本人のなかにもためらいや疑念が生じて、元の判断が揺らぐ事態にもなりかねない。

分析的なアプローチのやり方:合理的な判断をするうえで最適な環境を整えたいなら、部屋の静かな一角を見つけて、注意散漫になる要素を最小限にし、目の前の問題に集中して、1つひとつ論理的に解きほぐしていくのがいい。

ひらめきの瞬間が生まれる条件を整える:創造性が要求されるような課題に取り組むときは、自分の気分や集中の度合い、まわりの雰囲気などあらゆる要素を組み合わせて、創造的洞察のひらめきが生まれやすい環境を作り出す。

笑う門には福来る:ひらめきの瞬間は、その場の雰囲気が明るいものであるほど訪れやすいという研究結果がある。想像力が試される難問に取り掛かる際は、自分の気分や、一緒に問題解決に取り組むチームの雰囲気をいい状態に保つ。

分析まひ
思考活動の多くは脳の顕在意識の領域で行われている。しかし、顕在意識は2つのマイナス要因を抱えていて、それに足を引っ張られると、複雑な評価が必要な活動において満足に役割を果たせないことがある。2つ目のマイナス要因とは、ワーキングメモリの容量の限界と、心理学者たちが「分析まひ」や「決断疲れ」と呼ぶリスク
思考を減らしたほうが、かえって賢明な答えに辿り着ける場合もある。

考えすぎて動けなくなる前に
「考えすぎて動けない」は分析まひの最たる例として挙げられます。
 分析まひのメカニズムは、人が感情のコントロールを失うときのメカニズムとほぼ正反対の動きをします。
初心者の場合は、思考すればするほどいいのに対し、熟練の人にとってはかえって思考が障害になり得る。
新しいスキルを学んで取得するときは、取り入れた情報を意識的に整理・分析して、反芻する必要がある。
「直観に従う」と言うと、一般的に、判断にムラが出やすいとか、そもそも直感頼りになるのはスキルがない証拠だなどと思われている筋もあるようだが、むしろ正反対です。直感的な意思決定は、長年にわたる経験と、何千時間にも及ぶ習練に裏打ちされている。いわば、それまで積み重ねてきた専門性を、最も効果的に体現したものが「直観」。

直観の解剖学
直観的な意思決定には、脳の「大脳基底核」と「鳥」という2つの領域が関わっている。脳には自分がこれまで積み重ねてきた経験に基づく行動パターンやルーティンが蓄積されていて、これを管理しているのが大脳基底核。島(島皮質)のほうは身体の感覚を司っている。ここでは身体に起きるあらゆる変化を敏感に感じ取っていて、たとえば心拍のような生命維持に関わる機能の維持はもちろんのこと、肌で冷たいとか熱いとか感じたときに、満腹になったときなどに反応する。
何か意思決定をしなくてはならないとき、自分でそうとは認識していなくても、じつは脳では潜在意識が真っ先に動き出している。意識的に「こうしよう」と判断を下すときも、その選択肢は脳内で、すでに潜在意識が出した結論と比較がされている。顕在意識と潜在意識の見解が一致すれば、脳は報酬反応を少し示す。両者の見解が一致すれば、脳は報酬反応を少し示す。両者の見解が一致しなければ、脅威反応が起きる。そして、脳がいずれの反応をした場合でも、その内容に従って身体に変化が起きる。

理性に従った意思決定を行うときでさえ、ある一定程度までは感覚による判断がなされている

合理的な意思決定だけに頼ってはいけない理由
既存事業の柱を蝕むのではという懸念から世に打ち出さない事例など

直観的な意思決定のスキルを磨くヒント
1.専門性を培う:最高の直感は、自らの豊富な知見と経験に無意識下でアクセスできたときにやって来る。したがって、特定のテーマについてについてまだ自分が専門性を有していないのであれば、当面は分析力を使ったほうがいい。

2.身体の感覚を高める:「ピンと来る」感覚は、専門的直感における重要な要素。マインドフルネスを実践すると、小さな警戒サインに対する身体的な知覚を司る脳の右前部島皮質の灰白質の厚みが増すことがわかっている。

3.直観を信じるべきとそうでないときを知る:専門的知見の蓄積に支えられた直観的判断は、たいていは有効なものであり、信用できる。一方、深く染みついた先入観や偏見から来る判断はそうではないので注意する。
創造的洞察は、インスピレーションの一瞬のひらめきのなかから湧き上がるものがあって、それはマインドワンダリングの結果として起きる。

創造的洞察のプロセス
「行き詰まり」と「ひらめきの瞬間」「検証」の3つの段階がある。
何か猛烈に集中する能力は、普段であれば強みになるところだが、思考に行き詰まっている場面で発揮されてしまうと、かえって状況が悪化する。なぜなら、その瞬間に何らかの「つながり」を見出して創造的洞察へとつなげていくほうの能力は、極端な集中状態のもとでは阻害されてしまう。
創造的洞察を得たい場面においては、何をもって「この刺激は関係なし」と言えるのか?

ひらめきの瞬間
脳は「点と点をつないでいる」状態
創造的洞察へといたるときの思考の作用は無意識のうちに行われる

検証
なぜそれが正しいと確信できる点か

創造的洞察が生まれる条件
意識的には行えないが、それが生まれやすい環境を整えることはできる。

1.楽しむ:一般的に、笑顔で楽しんでいるときの方が創造的なアイデアは生まれやすい。
2.枠を取り去る:枠にとらわれずに考えるというより、むしろその枠を完全に取り去る。創造性は、たいてい何の制約も縛りもない状況で育まれる。
3.ギアを変える:少し問題に取り組んだら、休息を入れて、まったく別のことをしてみる(楽しめる活動がいい)。その問題にだけ集中していると、ふとした拍子に解決策を出してくれるかもしれない脳の他の領域を遮断してしまうので、創造性も妨げられやすい。
4.自分の内なる声を聞く:自分の気持ちや、内なる感覚に耳を澄ませる。目を閉じてもいい。ひらめきの瞬間は、自分個人の脳の中にしかやってこない。ほかの人のやっていることに気を取られていては、アイデアは浮かんでこない。
5.黙る:誰かと話したくなったら、ちょっと立ち止まってみる。お喋りは、分析的な問題解決の際にもとくに何の効果ももたらさないが、こと洞察問題に取り組むうえでは直観の妨げにならない。洞察問題に取り組んでもらう際、沈黙していたグループが正解に辿り着く割合は60%以上なのに対し、お喋りしていたグループだと30%少しに止まっている。

「そういえば…」の発想で想像力が開花する
想像力が発揮できるかどうかは、顕在意識の働きと同じくらい潜在意識の働きにも依存しており、だからこそ顕在意識を敢えて休ませる時間をとるのが大切
自分が取り組んでいることに対して、敢えて意識を注ぐのをやめる。
要は、目の前のタスクから意識を逸らして、顕在意識に邪魔されずに潜在意識が働きかけるようにする。
取り組んでいる問題や課題が創造力を必要とするものである場合、集中するのは避けるべき。
なぜなら、「集中する」とは、最も関連性のある情報以外を一切排除することを意味するのに対し、「創造力を発揮する」うえでは、一見無関係に思える情報からユニークなつながりを見出すこととが肝になるから。

学習をアップデートせよ 「老犬に新しい芸は教えられない」かもしれないがいくつになっても人は学べる
ポイント
学習に限界はない:脳を鍛えて変化させる余地がある。学習の仕方を知ればいいだけ。
学習とは感情的なプロセスである:ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、何かしらの感情がともなっていてこそ人は学習する。感情的な関連性がないと、新しな情報を長期的に憶えておける見込みはかなり低下してしまう。
海馬のテストを突破せよ:脳の海馬では、報酬反応が脅威反応のどちらかを引き起こす情報や経験だけが保持する価値があるもの。
眠っているあいだに起きること:睡眠は学習には欠かせない。なぜなら、通常は眠っているときに、記憶する価値があると判断された情報が、海馬から長期記憶へと送られるから。
最初が肝心:最も強く記憶に残りやすいのは、いい悪いにかかわらず、えてして一番初めの印象である。だからこそ最初の教え方が肝心なのであり、ここには時間やお金を投資したほうがよい。
嫌悪学習をうまく使う:最も強烈な学習効果は、ネガティブな体験によって育まれる。しかし、このような嫌悪学習は、ポジティブな行動を促すときにはあまり効果がない。望ましくない行動を禁止するときのみ、嫌悪学習の仕組みを利用する。
社員皆でともに学ぶ:人はそもそもが社会的な生き物なので、ほかの人から学びを得たり、ほかの人と一緒に学んだりすると、学習効果はいっそう高くなる。物語の力が大きいのも、よきロールモデルであることが重要なのもこのため。

古い習慣は消えていくかもしれないが、古いスキルはどんどん忘れていく
古いスキルは忘れているだけであって消えてしまうわけではない。したがって、ゼロからはじめなくていい。

頭ではなく心で学習する
学習とは本来的に感情に関わるプロセスである。

リーダー層の人々が心に留めておくべき。自分が伝える情報に対して、メンバーに興味を持ってもらいたいなら、あくまでもコアのメッセージを際立たせるように伝え方に工夫を凝らす。
学習の基本原則は、進化の観点で大切な「危険を最小化し、報酬を最大化する」という方針に基づいている。
記憶への定着の優先度を上げていく方法
過去の情報のまとめから始めない:教師や、プレゼンテーションの発表者や、リーダーたちが、悪気なく揃って犯しやすいミスがある。それは、情報発信する際に、それまでの内容の振り返りから始めてしまうこと。振り返りで話される内容は、所詮古い情報にすぎない。脳内で極小化されたり、無視されたりするような類の情報。逆に、私たちをハッとさせ、注意を引きつけるのは、新奇性のある情報。したがって、大勢の前でプレゼンテーションするときも、自分独りで学ぶときも、まずは何かワクワクして、ちょっと驚きもあるようなトピックで取り上げるところから始める。参加者たちの関心をとらえたと思ったところで、その前に話していた話題に立ち返る
テーマそのものを変えられないなら、環境を変える:部屋や場所のほかにパソコンや文字を入力するときのフォントを変える。

構造化しすぎない:物事を学習することは、学習においてある程度は役に立たない野田が、やりすぎるとかえって害にもなる。学習すべき対象と接するなかで、そこにひそむルールを見出せたとき、脳内では学習効果がアップする。
何かを記憶するにあたっては、その対象が隅から隅まできちんと構造化されていないほうがいい。曖昧な部分や辻褄が合わない箇所があったり、大事な情報が抜け落ちていたりして、その対象から何とか意味を見出そうという努力を介在させると、かえってその情報を憶えておきやすい。
少し曖昧さがあるほうが、物事は記憶に引っかかりやすい。

仲間とともに学ぶ
扱いやすい単位で学ぶ
何かを学ぶときには、膨大な学習対象を小さく扱いやすい単位に区切り、頻繁に休憩を取って、それまで学んできた内容を記憶に定着させるように心がける。無数の情報を憶えなくてはならないときも、詳細部分にとらわれてお手上げ状態になってしまえば、やはり脅威反応の警報が作動してしまうので、文脈(それらの情報を統合したときの全体観)でとらえるように意識すると、記憶しやすくなる。

複数の要素を駆使して学ぶ
新しく学習するとき、さまざまな脳の領域を使えば使うほど、その記憶を思い出しやすくなる。
脳のあらゆる部位を使えば、それだけ記憶にも残りやすい。

学ぶ側から教える側へ
自分と相手との聞き手とのあいだに双方向のつながりを築けるかどうかにかかっている。自分よりもあまりわかっていない人に教えるという行為を通じて、その対象に対する自分の理解がさらに深まっていく。

ストーリーで語れ
感情的なつながりを作るのに最も効果的な方法の1つが、物語を共有すること。

第3部 ドリーム・チームを作る
多様性を開花せよ スキルや個性の違いをうまく活かせば、ビジネスにポジティブな効果が生まれる
ポイント
人はそれぞれ違う:性格上の違いのほとんどは、大元のところで遺伝的な性質による影響を受けている。そう考えると、職場に求めるものは人によってさまざまであることも当然想像がつく。個々のニーズを尊重し、できる限り柔軟にそれらを取り入れれば、メンバーはいっそう精力的に、幸せに働ける。
ファンタスティック・フォー:4つの神経化学物質の織りなすバランス次第で、「冒険型」「建設型」「指導型」「交渉型」と呼ぶ性格タイプが決まる。
冒険型と建設型:冒険型の人は、新奇性に惹かれやすいドーパミン受容体遺伝子を持っているため、刺激を求める。彼らは楽観的で、創造力がとくに豊か。一方、建設型の人は、その誠実さ、安定性と信頼性の高さに定評がある。セロトニン系の神経回路の影響を受けており、落ち着いていて健全な印象を与えるのが特徴。
指導型と交渉型:テストステロン系が活発な人は指導型。戦略を実行に移す力があり、決断力が高く論理的。一方、エストロゲン優位な人は交渉型。直観に優れ、共感力が高く、言語による表現もうまい。さらに、社交スキルが高いことも多い。
国連のようなチームに多様性があるとは限らない:見た目にはバラエティに富んでいるチームが、その考え方にも多様性があるかと言うと、果たしてどうなのか。さまざまな外見やバックグラウンドの人を集めればうまくいくとういわけでなく、メンバーが持っているスキルや気質に多様性があることが重要。
クラス最高レベル:全員をオールラウンダーにしようとするより、チームが求めているスキルを高いレベルで1つでも有している人を採用する。そして、すでに優れている領域をさらに伸ばして、「クラス最高レベル」になれるようにサポートする。
よいところを伸ばす:チームメンバーの弱みに関しては、「許容できないレベル」に該当するものを「許容できるレベル」にまで底上げできたら、そこで終わりにする。残りの時間はすでに持っている強みに磨きをかけ、1つか2つの領域で「クラス最高レベル」に到達できるように支援する。
エキスパート人材を特定する:チームがとくに必要としているスキルをリストアップし、それに従って全員のスキルをランク付けする。この作業がひとたび完了すれば、「なぜ自分はこのチームにいるのか?」という決定的な問いに対し、チームの誰もが明確に自信をもって答えを見出せるようになる。
豚に飛ぶことを求めず、鳥を雇え:弱みを強みまで鍛え上げようという不毛な戦略はとらず、チームが欲するスキルを自然な気質としてすでに備えている、新たな人材を迎え入れる。
すべてにおいて万能な人などいない:「誰もがすべてにおいて優れている」必要はない。だが、「誰もが何かしらに優れている」状態はぜひとも作るようにする。1人ひとりに固有の強みをベースにして、メンバーの成長を促す。

人はそれぞれ違うと言うが…多様性とは何か
同じような人ばかりが集まった集団は、脳がすっかり安心して自己満足に陥る。

パフォーマンスの高いチーム
冒険型:冒険型の人は、飽きっぽいところがある。彼らにとって、ストレスがかかる状況であるほど、最高のパフォーマンスを発揮しやすい。常に新たな挑戦を求めている性分であるため、ありふれた仕事をさせられるとやる気を無くしてしまう。逆に、創造力に富み頭の回転が早いので、そういう類の能力が要求される仕事をどんどん任せる。
交渉型:交渉型の人は共感力が高く、全体を見渡す視野の広さがある。上司や同僚と親しい関係を築きたいタイプで、周囲から感謝を寄せられると喜びを感じる。わだかまりや確執などには敏感なため、心理的安全性と思いやりに満ちたチーム作りを心がけないと、彼らのパフォーマンスは低下してしまう。そんな交渉型は、人とうまくコミュニケーションを取る・言葉で丁寧に説明する・一見関係がなさそうに見える物事のあいだに関連性を見出す…といったことに強みがある。
指導型:指導型の人は意志力が強く、分析的思考に長けている。したがって、問題解決や構造化の高いスキルが要求される。厳しい競争にさらされる環境において力を発揮する。テストステロンが優位なため、コミュニケーションの際には伝え方がぶっきらぼうになったり、気が利かなかったりする場合もある。上下の関係性がはっきりしているとうまくやれるのだが、そうでなければ軋轢を生みやすい。自らが周囲を率いて仕事を成功させることに意欲を燃やすタイプなので、ぜひリーダー役を任せるといい。
建設型:建設型は、タスクを完遂し、責任を果たすという点においては、非常に頼りになる。計画性があり、誠実で、先見性もあるが、スケジュールや合意事項に予期せぬ変更が発生すると動揺しやすい。建設型の人は自分の思う通りに予定を組み、静かに落ち着ける自宅のように、混沌としていない環境で仕事をすることを求めている。裏方に徹してくれている場合も多いので、彼らの仕事への誠実さや、チームにもたらしてくれる価値を評価する。
チーム内の最適なマッチングを考え、メンバーの性格タイプに合わせたコミュニケーションの方法を知る
それぞれの性格タイプの生物学的な性向や積極的にやった方がいいこととそうでないことについて、きちんと押さえておく努力が欠かせない。

ある程度の限度はあるが、一定の水準を満たせないのであれば何らかの手を打つ。
5段階や10段階で評価するのではなく、スキルが以下の4つのいずれに該当するかを見極める。
1.許容できないレベル
2.許容できるレベル
3.専門的なレベル
4.クラス最高レベル
理由はどうあれそのスキルは、性格や資質に合わないこともある。
スキルを「許容できないレベル」の穴ではなく、もう少し地盤の整った「許容できるレベル」にまで引き上げる。
残りの時間は強みをさらに磨くことに集中する。

チームビルディングの基本
1.チームにとっての成功を定義するKPI(重要業績評価指標)をリストアップする。
2.メンバーそれぞれのタイプに合わせた評価を行う。
3.「許容できないレベル」のスキルを特定し、「許容できるレベル」にまで底上げする。だが、それ以上は手をかけない。
4.最終的に「クラス最高レベル」まで到達するつもりで個々人の強みを伸ばし、チーム内で自負心を育む。
5.チーム全体での最高値が「許容できるレベル」にとどまっている領域があれば、「クラス最高レベル」のスキルがある人を探してチームに招き入れる。
全員が1人で何でもかんでもできる必要はない。それぞれが異なる領域に強みを有する、多種多様な人材を募る。そして、特定のスキルについてある程度の専門性があるか、それ以上の卓越したレベルにあるメンバーを探す。

信頼関係を育てよ 成功するチームの団結力の源は、モチベーションやお金よりも信頼である
ポイント
鏡よ、鏡:人が自ら特定の行動をしたときと、同じ行動を別の誰かがやっているのを見たとき、いずれにおいても発火する「ミラーニューロン」という神経ネットワークが発見されている。
率先垂範する:ミラーニューロンの発見から導かれる示唆は明らか。すなわち、あなたがリーダーであれば、まわりの人はおそらくあなたの振る舞いを見て、それを真似る。
報酬がパフォーマンスを決める:報酬状態にあるとき、人はよいパフォーマンスをする。何かしら喜ばしいと感じられる報酬への期待があると、接近行動が引き起こされる。逆に、面倒や不快に感じられるものに直面すれば、接近行動の対極にあたる回避行動につながりやすい。

SCARFの素材:接近行動と回避行動という人間の性質を踏まえて、脅威を最小化しつつ報酬を最大化する狙いのもと考案されたのが、SCARFモデル。SCARFの5文字はそれぞれStatus(ステータス)、Certainty(確実性)、Autonomy(自律性)、Relatedness(つながり)、Fairness(公平性)、を指している。
Status(ステータス):ステータスとは、人があなたと接した後にどんな気持ちになるのかの問題。リーダーとして、チームのメンバーを尊重していることが伝わるように接すれば、「自分はチームにとって重要な存在なのだ」と1人ひとりにも感じてもらえる。
Certainty(確実性):私たちの脳は、常に未来を予測しようとしている。不確実性は人を不安な気持ちにさせ、脅威反応が生まれる。リーダーとしては、実際問題として不確実なものを確定的にすればメンバーも安心できる。
Autonomy(自律性):人は「自分の運命の鍵は自分が握っている」と思えると、気分が上昇し、ストレスレベルが低下する。これと定めたゴールを達成する意欲と見込みがチームのメンバーにある限り、1人ひとりスタイルに合った働き方の自由をリーダーが認めることで、チーム内に自律性の高い雰囲気が生まれやすい。
Relatedness(つながり):つながりを感じられるとき、人はよいパフォーマンスをする。グループのメンバーとのつながりを強めるために、思いやりと一体感に溢れた環境作りに心がけ、彼らとよい関係を築くための時間を投資する。
Fairness(公平性):金銭的な利益の拡大ではなく、よりよい関係性と公平性の拡大を追求する。まわりの人が公平に扱われているのを見ると、脳では報酬反応が起きやすい。逆に不当な仕打ちを受け入れていると感じれば、脅威反応のアラームが作動してしまう。リーダーとして公平な雰囲気作りに心を配れば、メンバー全員に対してはもちろん、会社の最終利益も含めたあらゆる方面にいい影響が及ぶ。
公平性を語るうえでは、「感じ方」が大きな問題になる。
SCARFモデルを職場に取り入れる:SCARFモデルの5つの要素を、自分の職場環境にうまく適用させると、社員の基本的なニーズを満たし、同僚同士のコミュニケーションを促進し、揉め事が起きそうであれば未然に防いだり解決したりして、変革を促すマネジメントの気運を高める。

未来のチームを作れ
チームを立ち上げ、全員の幸福度を高め、最高のパフォーマンスを生み出す脳科学ベースのフレームワークとは
ポイント
「Team(チーム)」と「Talent(才能)」の「T」:高いパフォーマンスが発揮できるチームを作るためには、とにかく優秀な人材を採用し、その才能を伸ばさなければならない。真の才能を見極めることは、リーダーの最も重要な役割の1つ。もし稀有な才能を持つ人材を見つけたら、迷わずその手をつかむ。
才能を伸ばす正しい努力をする:社員全員に画一的なトレーニングを施すなんて、貴重な時間とお金を無駄にするような真似は禁物。トレーニングは、すでに才能を持っている人にこそ絶大な効果を発揮する。メンバーの弱みを改善しようと頑張るよりも、既存の才能を伸ばす方が、より大きな成果につながる。
脳が喜ぶ職場環境を整える:いくら優秀な人材を揃えたところで、彼らの出社意欲を喚起し、その成功を後押しするような環境を整えてやらなくては意味がない。運動と栄養と睡眠は、ストレスに対する抵抗策の3本柱であるからこそ、これらが実践しやすい雰囲気を車内に作ることが肝要。
有意義なインセンティブを与える:脳が喜ぶ職場であれば、社員は出社しようと思う。そこに適切なインセンティブも提供されれば、彼らはいっそうチームに留まりたいと考えるはず。有意義なインセンティブを与えるうえでは、脳の特性にも鑑みて、「公平性」と「新奇性」という2つの原則に留意する。
個人に対する報酬は集団にも影響を与える:好むと好まざるとにかかわらず、どんな報酬も社会的な色合いを帯びているもの。社員にとっては、同僚に比べて自分が公平な報酬を与えられているかどうかが、報酬の金額そのものよりも大きな意味を持つ。公平性はオキシトシンを活性化し、そのオキシトシンがコラボレーションを促す。
嬉しいサプライズを嫌がる人はいない:インセンティブの内容が事前にわかっているよりも、予期せぬ報酬を与えられたほうが、脳は強く反応する。鍵を握っているのは、新奇性指向型の神経伝達物質であるドーパミンで、これがモチベーションを強烈に喚起する。この原則を押さえておいて、メンバーに不定期のボーナスを支給するべく、予算をちょっと確保する。
「社会的なフロー」はフローの強化版:個人に最高のパフォーマンスをもたらすフローは、チームの文脈にも広げることができる。この「社会的フロー」についてとくに調査している心理学者らによると、その発生確率を高める要素は「フォーカス」「柔軟性」「コラボレーション」「コスト」の4つ。
フォーカス:社会的なフローは、注意散漫な雰囲気のもとでは生まれない。「明確なゴール」と「完全な集中状態」、そして「注意深く耳を傾け合う意識」という条件が揃っていれば、チーム全体でフロー状態に入るために必要なフォーカスが生まれるはず。
柔軟性:個々人が必要以上に頑固になってしまうと、フロー状態は阻害される。ほかの人のアイデアに真っ向から反対するのではなく、それを活かす方法を考える。そして、自分のエゴを押し通したくなる気持ちをこらえて、グループで1つのアイデンティティを実現するという目的を遂行することが大切。
コラボレーション:グループでうまく協働できると、それだけ社会的フローも体験しやすい。コラボレーションが最適なレベルで達成されるためには、いくつかの条件がある。まず、メンバー同士がそれぞれのやり方やアプローチを基本的に把握しており、かといって無関心になってしまうほど慣れ合ってはいないこと。また、全員の参加レベルが平等であること。そして、チーム全体のコミュニケーションが効果的に行われていることが必要。
コスト:社会的なフローは、何かを賭けるものがない場合にはめったに生まれない。重大なリスクが差し迫っているのを感じると、脳ではノルアドレナリンが放出され、それによってメンバー各自のフォーカスが研ぎ澄まされる。フォーカスが絞られていることは、個人にとってもチームにとっても、満足度の高いフロー状態を生み出すのに必須の前提条件。

才能は変わらない
変えられるものと変えられないもの、その本質的な違いを生んでいるものこそ、才能である。
働きかけで変えられるものと、変えられないものが混在している。

練習によってパフォーマンスが変わる割合は12%程度。
専門的職業の領域では1%に満たない。
トレーニングの限界
トレーニングというものは、もともと才能がある人が、さらにそれに磨くをかけるために行うのが一番効果的。
トレーニングによって可能なのは、すでに備わっている才能を解放しいて、それを伸ばすことだけ。

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