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青春18きっぷの移り変わり

はじめに

 一時は発表の遅れから発売が懸念されていた、今期の「青春18きっぷ」も無事先日から発売が開始され、7月20日より利用も可能となった。
 この「青春18きっぷ」、前身は1982年3月1日から発売が開始された、「青春18のびのびきっぷ」である。当時は1日券3枚と2日券1枚の4枚組みで価格は¥8,000-となっており、延べ5日間利用できることや2日券以外は当日限り有効のルールは現在と変わらない。但し4枚組みの券片が切り離し可能となっていたことから、同伴者が同一行程を共にする必要がなかった分融通が利いていたと言える。
 既に42年のロングセラーを誇る「青春18きっぷ」であるが、大まかなルールは変わっていないが、細かい点で改変が行われている。今回はその沿革を辿ってみたい。

1.名称・価格などの変化

 まずは一番身近な販売価格の上昇や名称の変更およびきっぷの規格の変化について見てみる。
・1982年春 青春18のびのびきっぷ   ¥8,000- 4枚券片   発売当初
・1982年夏 〃          ¥10,000- 〃    値上げ
・1983年春 青春18きっぷ     ¥10,000- 〃    名称変更
・1984年夏 〃           ¥10,000- 5枚券片  1日券5枚
・1986年冬 〃          ¥11,000- 〃    値上げ
・1989年夏 〃          ¥11,300- 〃    消費税3%
・1996年春 〃           ¥11,300- 1枚券片   一葉化券
・1997年夏 〃          ¥11,500- 〃    消費税5%
・2014年夏 〃          ¥11,850- 〃    消費税8%
・2019年冬 〃          ¥12,050- 〃    消費税10%
 以上となる。太字が変更が行われた点である。特に価格についてはこれまで6回値上げが行われており、1989年からは消費税率のアップのみの価格体系の変更に留まっており、1986年からの38年間実質価格据え置きとなっているのがご理解いただけるであろう。

2.特例区間などの変化について

 青春18きっぷは、普通・快速列車の自由席乗車が基本であるが、特例として普通列車のグリーン席快速列車の指定席、および特急列車の普通車自由席に乗車できる特例区間がある。
・1982年春 石勝線      新夕張~新得間
・1996年夏 宮崎空港線    宮崎~宮崎空港間
・2002年冬 津軽海峡線    蟹田~木古内間
・2004年冬 普通列車グリーン席利用可(グリーン券別途購入要)
・2012年夏 奥羽本線     新青森~青森間
・2016年春 北海道新幹線   奥津軽いまべつ~木古内~五稜郭間(※)
・2016年夏 快速リゾートしらかみの新青森~青森間指定席利用可
・2018年春 佐世保線     早岐~佐世保間
・2024年春 室蘭線      東室蘭~室蘭間
 上記太字は、特急列車の普通車自由席(室蘭線と石勝線は2024年3月16日から普通車指定席)利用が現在でも可能な区間である。
 2016年3月26日に北海道新幹線が開業すると、蟹田~木古内間を走行する白鳥やスーパー白鳥が廃止され青春18きっぷによる本州⇔北海道間の移動が出来なくなった。これを救済するため別売りの「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」(現在片道¥2,490-)が設定され、北海道新幹線と道南いさりび鉄道(※)を介して往来が継続されることとなった。

3.第三セクター鉄道乗車特例区間の変遷

 整備新幹線区間での新幹線開業によって、並行する在来線が第三セクター鉄道に転換されたため、JR路線が他のJR線と接続しない飛び地路線が誕生した。この飛び地路線間の往来を救済するため、途中下車しない条件で第三セクター鉄道の通過利用が認められた。
・2010年冬 12月4日東北新幹線八戸~新青森間開業により、八戸線八戸~久慈間および大湊線野辺地~大湊間が飛び地となったため、青い森鉄道青森~野辺地~八戸間で通過利用が可能となった
・2015年春 3月14日北陸新幹線長野~金沢間開業により、氷見線高岡~氷見間、城端線高岡~城端間が飛び地となったため、あいの風とやま鉄道富山~高岡間で通過利用が可能となった。また七尾線津幡~和倉温泉間も飛び地となったため、IRいしかわ鉄道金沢~津幡間で通過利用が可能となった。
・2024年春 3月16日北陸新幹線金沢~敦賀間開業により、越美北線越前花堂~九頭竜湖間が飛び地となったため、ハピラインふくい敦賀~越前花堂間で通過利用が可能となった。このため青春18きっぷによる越前花堂~福井間の利用が出来なくなり、福井への到達が不可能となった。一方、七尾線についてはあいの風とやま鉄道およびIRいしかわ鉄道高岡~倶利伽羅(下車不可)~津幡間通過利用に変更となった。これにより青春18きっぷによる金沢~津幡間の利用が出来なくなり、金沢への到達が不可能となった。

おわりに

 以上のような変遷を辿り、現在の青春18きっぷの制度となっているのだが、時を重ねるごとに特例制度が増えるもののそれ以上に乗車可能であったJR線が第三セクター化され利用出来なくなったり、加えて普通列車も削減されるなどして18きっぱーにとっては厳しい状況となっている。
 特に宮崎県や鹿児島県にあっては、佐伯~延岡間の普通列車の少なさや、肥薩線の不通区間により近県にあっても1日だけでの到達が困難であり、また前述のオプション券をしないと渡れなくなった北海道にあっては、もはや道内完結旅行でしか青春18きっぷ利用のメリットがない。更に飛び地路線に到達するまでには大きくJR線を迂回乗車しなければならない。
 そういった意味でも38年間価格据え置きの政策は妥当であろう。

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