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桜の季節がおわり、ハナミズキが満開になった。
世間はGWというのに新型ウイルスのために閑散としている。
わたしも他とはもれずテレワークというしろもので食いつなぐことができる業種で在宅勤務をしていたが、そうもこうも行かない状況が時には発生するもので、交代勤務て1日2人ずつくらい出勤するにとになっている。
もちろん2人といえど、部署違いな方だからあまり接点はない。
午前中だけみんなの在宅ワークの潤滑性をたかめるための雑用なので、終わったら帰ってい仕組みになっている。昼からは比較的自由といえるかもしれない。

仕事は億劫だけど久々の出勤ですこし清々しい気分になり、明るめのパステルカラーで少しロングなワンピースをチョイスした。派手かもしれないけど、このご時世、攻めてやる。

行きの電車もがらーんとしていた。
ワンピースにマスク姿ってアンバランス……
手縫いの可愛い柄マスクでも作れたら良かったかしら。

電車より増して会社はさらに人気もなく部分的な照明で暗さや不気味さすらあった。
ポスティングされた資料の仕分けや各部署への連絡事項メール。中々の仕事量だが午前中には終わるだろう。

同じ階の他部署の人が出勤してきた。
仕事を始めていたので失礼にならない程度に目線をあわせ、軽く挨拶をかわした。

「あれ? かえで先輩?」

顔をあげてみる。
どこかで見たことある顔だとおもうのはあたりまえだ、他部署とはいえ同じフロアで仕事してるのだから。
でも下の名前で呼ばれるのには会社では由々しき事態。だれだろ。

「大学のゼミで実習があった時にご一緒した、しょうです。」

「あっ……」

何故今まで気づかなかったんだろ。大学の2個したの後輩だった。
そのゼミでしか一緒ではなかったけども、なかなか内容の濃いゼミで色々覚えている。

「えー、お互い今気づいたって、おかしー。久しぶり?って言えばいいの?なんなのー」

2人、お腹を抱えて笑った。

お互い午前中には仕事を終え、テイクアウトランチで一緒することにした。
LINEの交換をして、この感染症が終息したらどこか遊びに行こうと約束をした。
こんな感じの奴だったのか?しばらくの時間が彼の成長を促したのだろう。あどけなさはもうどこにもないけども、あの時の好奇心旺盛な快活さは健在だ。
あまり蜜を続ける訳にもいかず、お互い食べ終わると家路べとつく。
駅までは一緒だが沿線が違う。
「会社の楽しみが1つふえたわ。今日はお疲れ様でした。」
「こちらこそ、今までの気づかないですいません」
2人見合わせて大きな笑いを押し殺した。
「じゃ!」
「また、会社が再開したら!」

踵をかえし、改札に向かう。

「かえで先輩!」

振り向いた時に背後から風が強く吹いた。
慌て手広がるスカートを抑えた。

「事態が落ち着いたら、本当にどこか遊びに行きましょうね!デートしましょう!」

少しドキッとした。わたしは精一杯の平静を装った。

「わかったー、それまでコロナにかかるなよー」

改札を抜け、胸の高鳴りを感じながら電車に飛び乗った。
車窓から見える空はいつもよりも青が濃くみえた。

#新型コロナ
#短編小説
#自作小説


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