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ぼくのわたしのドリームハウス

数年で齢80歳を迎えるアラハチの母が、所謂「終活」に本腰をいれた。父が他界し、兄も私も独立してから猫と暮らす毎日は「(お父さんには悪いけど)今が1番幸せ」ということなので、母にはまだまだ人生を楽しんでもらいたいものだが、1人と1匹では広すぎる実家を処分する具体的な算段を始めている。

そんな中で我が家には頭の痛い問題がある。蔵書問題だ。

そこそこ本を読むほうであると自負している私さえ、全くもって敵わないほどの読書家の父と兄の希望により、実家には3畳ほどの書庫がある。ここには生前父が集めた文学全集や、美術全集、触れるとパラパラと崩れそうな古い単行本や文庫本、著者謹呈ものの小説、時代小説、加えて母が買ったミステリー小説に、兄と私の本も置かせてもらっている(誰が買ったのか春画もあった)。今般、実家売却イベントでそれらの蔵書が行き場を失っているのである。

ご存知の方も多いと思うが、この手の本は古書買取に持って行っても二束三文。価値があるものですら「無料なら引き取りますよ」と言われる始末。兄の家にも私の家にも収まらない、そしてこの兄妹がおそらく死ぬまでに読み切れない大量の本を、だがしかし廃棄するには愛着も、ぞんざいには扱われたくないという情もあり、母と兄と顔を合わせれば「今度考えよう」と先延ばしにしてきた。試しに段ボール一箱ほどを選別し自宅に送ってみたものの、自宅ですでに収まる場所を見つけられず肩身の狭い思いをしている本たちの不平不満が聞こえてくる。ような気がする。

こんな未来が来るとも知らずに、昔、私には一つの夢があった。それはドリームハウスとも言える「本のいえ」 を作ることだ。

出資者を募り、土台だけはしっかりとした小さな廃屋を一軒購入。壁という壁に本棚をつくり付け、出資者には蔵書を置く権利と、そこで本を読む権利を付与する。居住、宿泊、入浴は不可、コーヒーを沸かし、本のための空調を管理するための光熱費、その他の維持費を折半し合う。何時間でも座れるリーディングチェアと、丸テーブル。

もしかしたら、現在私が直面しているこの蔵書問題、この夢を実現する時代がとうとう来たのかもしれないと思う一方で、東京近郊でそんな都合のよい物件が購入可能な価格で出ているわけもなく、誰か助けてくれませんかね。

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